夕焼け金魚 

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街の匂い

2013-12-04 | 創作
昔の街には臭いがあった。どぶ板通りのドブ臭い臭いとか、乾物屋が多い通りは、乾物臭いというか匂いがあった。
お屋敷町には庭木の匂いがして、杏や柿の木がなぜか多い町だった。金木犀という匂いを覚えたのも、ある家の庭先に植えられていたからだった。一時期トイレの匂いが金木犀の匂いばかりになって、その匂いを嗅ぐともよおすような気がしたりして。夕食の時になるとサンマの焼く匂いとか、揚げ物の匂いとかその家の夕食が想像できたものでした。
先日、通りを歩いていると久しぶりに良い匂いがしてきた。この匂いは記憶が正しければ、ずっと前、ずっとずっと前に食べたことがある松茸の匂い。炭火か何かで焼いている匂いが漂ってきて、匂いにつられて行ってみると庭でバーベキューをしている人達がいた。
あまり大きな庭でなく、五・六人が立って金網で松茸を焼いて、砂糖醤油に付けて頬張っているところに出くわした。
夕暮れ時でもう寒くなっているのに、みんなシャツとかの薄着でいて、肉やウインナーを焼いていた。
バーベキューの炎で、熱くなっているのだろう。
油の強い匂いの中でも、松茸の匂いはひときわ異彩を放っていて、ひとときのかぐわしい匂いを堪能させて頂いた。
かぐわしい匂いを嗅いでいたら、昔の落語話を思い出しました。
ウナギ屋の前で、ウナギの焼く匂いを嗅いでいた人に、ウナギ屋が「匂いの嗅ぎ賃よこせ」と言われて、匂いを嗅いだ男は懐からガマ口を出して思い切り振ったのです。
「何のまねだ」とウナギ屋が怒ると「ウナギの匂い代だ、どれだけでもお金の音を聞け」と答えたという話。
多少違っているかも知れませんが、こんな話しだったと思います。
私も匂い代だけは払わなければと思ったけど、最近のお金は紙幣が多く匂い代も払いにくくなってしまいました。
仕方なく百円玉をパチンパチンと鳴らして歩きましたが、あの人達には分かったでしょうか ?
昔は街に匂いがあったのです。ドブの匂いとか、便所の匂いとか、あまり良い匂いはなかったけど町特有の匂いがあったのでした。

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