夕焼け金魚 

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あの頃のバス通りで

2013-12-05 | 創作
一昔前というか、もっとずっと前には、街中のあのくねくねした裏通りまでバスが、入り込んでいたのでした。どうしてこんな狭い道にと思うような道にまで入ってきていた。
ややこしい道筋をバス路線にして、家の軒先をかすめるようにして走り抜けていくのです。
もちろん、曲がりくねった狭い道では、運転手の名人芸のような運転技術でも通り抜けられない道もあり、車掌がバスから降りて「オーライ、オーライ」と指導してバックすることもありました。
その車掌さんが女の人だったりすると、その車掌が下りてくるのを目当てにバスを待っている男もいて。
そんなバスを町の住人は咎めるわけでもなく、道端で世間話をしている町のおばちゃんにしても、ひょいと体勢を変えて、バスをやり過ごすのです。
狭い道で自転車のあんちゃんとすれ違うとき、電柱の陰に自転車がかくれてやり過ごしてくれると、バスの運転手も小さく警笛を鳴らして敬意を表したり、女の車掌さんがニコッと笑ってくれたり。
自転車ともすれ違う時にそんなことをしなければならないような狭い道を、ヨタヨタと走る乗り合いバスが、突然ジワッと街角から現れるのです。
バスぐるみ、町ぐるみ、人ぐるみ、その全部が心和む裏町の風景だったのです。
ひょっとして、この街のどこかにそういうバスがヨタヨタ走っていて、夕暮れの雑踏の中からヌゥーとバスが走ってきたりして。

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