セレンディピティ ダイアリー

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クレマチスの丘(1)

2017年05月31日 | +静岡・愛知

お天気に恵まれた週末、以前から憧れていた「クレマチスの丘」を訪れました。富士山のふもとにあり、東名・新東名を利用して都内から車で2時間弱。JR三島駅からシャトルも出ています。クレマチスガーデンのほか、4つの美術館、4つのレストランを擁する広大な施設です。

四季を通じて花々やアート、自然が楽しめますが、特にこの季節はクレマチスとバラの競演がすばらしい。美しく手入れされたみごとな庭園を散策しながら、夢のような時間をすごしました。400枚近く写真を撮ったので、その中から厳選して2回に分けてお送りします。

エントランスへのアプローチにも、美しいクレマチスがお出迎え。

薄紫色のハグレー・ハイブリッドと、濃ピンクのバルバラ。

青色のユーリと、薄青色のエミリア・プラター。

チューリップのようなつぼみが愛らしいハッピーダイアナ。

クレマチスは、白やブルー、パープルの花が多いですが、花びらの形や大きさ、花心の色がさまざまで、その種類の多さと表情の豊かさに驚きました。数種類をセンスよく組み合わせて植えられていましたが、微妙なトーンの違いが生み出すグラデーションの美しさにうっとりしました。

そして緑の芝生のなんと美しいこと。ガーデンにはところどころに屋外彫刻があり、目を楽しませてくれました。左奥に見えているのはヴァンジ彫刻庭園美術館。イタリアの現代彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジ氏の常設作品のほか、開館15周年記念「生命の樹」展と「日高理恵子 空と樹と」展を鑑賞しました。

クレマチスガーデンに続いてローズガーデン、白い花を集めたホワイトガーデンがありました。

アプリコット色の愛らしいバラ。

可憐な白い一重のバラ。

青みがかったピンクのバラは、シャーベットのよう。

虫さんのお食事中にパチリ。ガーデンは木々に囲まれ、小鳥のさえずりが聞こえてきて楽園のようでした。

【関連記事】クレマチスの丘(2) (2017-06-01)

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シェフズ・スペシャル @ムーンライト

2017年05月29日 | +映画のひとさら

映画「ムーンライト」のラスト近く。大人になったシャロンが、ケヴィンから”会いたい”という電話を受けて、アトランタからはるばる会いに行きます。ケヴィンはマイアミのダイナーで、シェフとして働いていました。彼は閉店後のダイナーにシャロンを招き入れ、お店の名物”シェフズ・スペシャル”(Chef's Special)を作ってもてなします。

ケヴィンの作る”シェフズ・スペシャル”は、白いごはんにブラックビーンズ、鶏肉のグリルを添えたワンプレートのキューバ料理。映画を見た時から作りたくてうずうずしていましたが、同じことを考えたシェフの方が動画をアップされていたので、参考にして作ってみました。

Binging with Babish: Pollo a la Plancha from Moonlight

チキンの鉄板焼き(Pollo a la Plancha):
マリネした鶏むね肉を、鉄板のかわりにフライパンで焼いて作りました。カイエンヌペッパーは家になかったので省略。

ブラックビーンズ(Frijoles Negros):
たまねぎ、ピーマン、にんにくを炒める時、家にあったクミンシードとコリアンダーシードを少々入れましたが、これが大正解。一気にカリビアンな味になりました。ブラックビーンズの缶詰は、カルディで見つけました。

缶詰にもともと味がついていたので少々不安でしたが、料理の味を邪魔しない薄い味付けでちょうどよかったです。動画と同じく炒めたベーコンを加えましたが、これはお好みで入れなくてもいいかも。

白いごはん(Arroz Branco):
動画ではオリーブ油とにんにく、塩、ベイリーフを入れて炊いていますが、私はふつうに炊飯器で炊きました。最後にシラントロ(cilantro =コリアンダーリーフ、香菜)を散らしてできあがり。ライムをしぼっていただきます。

初夏を感じる今の季節にびったりの味で、おいしかった! ブラックビーンズはメキシコ料理のチリ(chili)に似ていますが、あっさりとしていて、白いごはんにかけていくらでも食べられそう。キューバの代表的な家庭料理ですが、日本でいえば五目豆か、ひじきの煮ものみたいな感覚かもしれません。

キューバ料理といえば昔、歌手のグロリア・エステファンが経営するレストランで食べたことがあります。フロリダはキューバから近いこともあり、キューバ系の人が多く住み、お料理や音楽など、独特の文化圏を形成しています。

Bongos Cuban Cafe(ダウンタウンディズニーのキューバ料理)(2007-12-04)

ごはんや豆、シーフードなどもあり、味付けはまったく違うものの、日本人にもどことなく親しみを感じるキューバ料理。モヒート片手にいろいろ作ってみたくなりました。

【関連記事】ムーンライト (2017-04-04)

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szechwan restaurant 陳

2017年05月27日 | グルメ

渋谷のセルリアンタワーに入っている中華料理レストラン「szechwan restaurant 陳」(スーツァン・レストラン・チン)でお昼をいただきました。日本を代表する中国・四川料理のシェフ、陳建一さんのレストランです。黒と赤を生かした、モダンな空間でした。

以前はランチのセットがいろいろあったように思いますが、この日はグランドメニューの中から好みのものをそれぞれ選んでいただきました。

【関連記事】「szechwan restaurant 陳」で飲茶ランチ (2011-02-21)

食事といっしょに「八宝茶」をいただきました。菊の花をはじめ、クコの実、サンザシ、ナツメ、リュウガンなど、いろいろな花やスパイスなど入っていてカラフルで華やかなお茶です。ガラスのポットに入っていましたが、最初に写真を撮らなかったので、美しさがうまくお伝えできなくて残念。氷砂糖も入ってほのかな甘みがあり、フルーティでおいしかったです。

陳建一さんの名前を冠した担々麺。ねりごまがたっぷり入った濃厚なお味でした。

私はスーラータンメン(酸辣湯麺)をいただきました。この日は初夏の陽気だったので、こういう辛すっぱいものが食べたかったのです。唐辛子をはじめ、さまざまなスパイスが作り出す複雑な味わいがあって、おいしかったです。

陳建一さんといったらこれ!という麻婆豆腐。麻婆豆腐を日本に初めて紹介し、広めたのは、陳建一さんのお父様の陳健民さんで、陳家の家宝とおっしゃるお料理です。土鍋に入ったあつあつの状態で運ばれてきて、ごはんに合うお味でした。

海老かにレタス炒飯。あっさりとしたお味。

これから暑くなってくると、ピリ辛の四川料理がおいしくなりますね。

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ミッドナイト・スペシャル

2017年05月26日 | 映画

ラビング 愛という名前のふたり」(Loving・2016) がとてもすてきな作品だったので、ジェフ・ニコルズ監督を追いかけて、「テイク・シェルター」(Take Shelter・2011)、「MUD -マッド-」(Mud・2012) と過去作品を見てみました。

決して派手ではないですが、キャンベルのスープの匂いがしてきそうなリアルなアメリカが描かれていて、ニコルズ監督の作品、どれも好きです。登場するのが、ジェシカ・チャステイン、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーンなど、私の好みにどんぴしゃりの渋い実力派の俳優たち、というのもくすぐられます。

そしてすべての作品に出演しているのがマイケル・シャノン。どうやらニコルズ監督の世界を体現する、お気に入りの俳優さんのようです。今回取り上げたいのはアメリカでは2016年に公開された「ミッドナイト・スペシャル」。日本では劇場未公開作品ですが、先月DVDレンタルが始まったので早速借りてきました。

ミッドナイト・スペシャル (Midnight Special)

ほとんど予備知識なく見始めましたが、なんとも不思議な作品でした。サスペンス?スピリチュアル?と思いながら、流れに身を任せていくと、どうやらSFらしいということがわかってきます。一方、未知なる何かに導かれるようにして、我が子に与えられた使命を全うさせようと奮闘する、父親の物語でもあるのです。

舞台はテキサス。ロイ(マイケル・シャノン)と友人(ジョエル・エドガートン)が少年を誘拐し、車で逃亡するところから物語は始まります。実はロイは、この少年アルトンの父親。アルトンには不思議な力が宿っていて、その特殊能力に目をつけたカルト集団もアルトンを追っています。

そして、アルトンは特殊能力を使って国家の機密事項にもアクセスし、そのためにNSA(アメリカ国家安全管理局)からも追われる身となるのです。

お話はいってみれば、現代版かぐや姫といったところ。しかし、アルトンが何者か?どこから何のために来たのか?どうしてロイの妻(キルステン・ダンスト)から生まれたのか?そうした説明は一切ありません。でも私は、シミュレーション仮説を思い出して、なんとなく納得がいきました。

地球は「宇宙人がつくる動物園」であり、世界はシミュレーションなのかもしれない (WIRED 2016-07-02)

将来、地球外知的生命体からのコンタクトがあるとして、私たちになす術はあるのか。願わくは、”いい宇宙人”であることを祈るばかりです。

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美女と野獣(アニメ版・フランス版)

2017年05月24日 | 映画

公開中の「美女と野獣」に関連して、1991年のディズニーアニメ版、2014年のフランス実写版を見ました。

美女と野獣 (Beauty and the Beast・1991)

実写版とはほぼ同じロマンティックなファンタジーですが、今回見て一番驚いたのは、女性が本を読むとロクなことはないという価値観や、ガストンが女性をモノとしか見ていない言動が平然と描かれていたこと。1991年はこうした考えがごくふつうに受け入れられていたのですね。

2017年版はストーリーやキャラクターはそのままに、細かいセリフなどにおいてジェンダーへの配慮がかなりなされていると感じました。(ベルが読書好き、ガストンが横暴というキャラクターはそのままですが、性別と関連づけていない)今回の映画化は、単なる実写化という以上に、ディズニーにとって必要なリメイクだったのだと理解しました。

2017年版は「見た目はどうあれ、おばかで戦争好きのガストンより、知的で心の痛みを知っている野獣の方がずっと魅力的」とごく自然に受け止められましたが、これは私たち自身の意識の変化でもあるのでしょうね。

それから、”ベルが、自由な生き方を求めて歌いながら丘の上へと駆け上がっていく”シーンは1991年にもありましたが、2017年の実写版では映像の広がりがすばらしく、自由への渇望がよりみごとに表現されていると感じました。大好きな「サウンド・オブ・ミュージック」の冒頭の場面を思い出しました。

美女と野獣 (La Belle et la Bete / Beauty and the Beast・2014)

1740年に書かれたヴィルヌーヴ夫人による物語をフランスで実写映画化。ベルをレア・セドゥ、野獣をヴァンサン・カッセルが演じています。

ディズニー版ととても同じ原作とは思えないダークなファンタジーですが、きっとこちらの方が原作に近いのでしょうね。映画では子どもに読み聞かせしていましたが、恐ろしくて夜中にうなされそう...。ベルと野獣が間近で見つめ合うシーンなど、ただそれだけで官能的で、びりびりとした緊張感が伝わってきました。

映像では特に水を使った表現が印象的でした。ベルが泉に浮かぶシーンは「オフィーリア」を思い出しましたし、鹿が水辺にたたずむ風景は、その後に続く悲劇と相まって心に残りました。ストーリーでは、王子が野獣に変えられた経緯や、お城が襲われた理由など、より人間くさいドラマになっていると感じました。

私の好みからいうと断然ディズニーなのですが、ここまで違うともはや別物で、本家のフランス人たちは複雑な思いを抱いているかもしれませんね。

【関連記事】美女と野獣 (2017-05-07)

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メッセージ

2017年05月22日 | 映画

エイミー・アダムス主演、地球にやってきた異星人とのコンタクトを描いたSFドラマ。テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を「ボーダーライン」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。ジェレミー・レナ―、フォレスト・ウィテカーが共演しています。

メッセージ(Arrival)

ある日突然、地球の各地に正体不明の飛行物体が現れます。地球外からやってきた知的生命体の目的は何か。異星人との意思疎通を図るため、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)が抜擢されますが...。

SF映画が苦手なので、本作も見るのを躊躇していましたが、Rotten Tomatoesでの高評価に期待して鑑賞。注目のヴィルヌーヴ監督作品でもあり楽しみにしていましたが、結論からいうと、少々もの足りなかった...映像や展開もやや単調で、時々うとうとしてしまいました。

異星人とのコンタクトに言語学者が抜擢されますが、そもそも言語というコミュニケーションが可能なのか、疑問を感じました。というのも、私自身は異星人との最初の知的コミュニケーションはおそらく数学(=論理)になるのでは、と信じているから。

ピエール・ブールの「猿の惑星」でも、猿が支配する惑星に不時着した人間が、自分が知的生物であることを証明するために、数学理論を絵に描いて見せていたことを思い出します。本作の序盤でも「フィボナッチ数列が通じたか?」というようなセリフがあったので、にやにやしながら見ていたのですが...。

ところが本作に登場する生物の言語は、まさかの墨絵。どうしてまた?と思いましたが、原作者が中国系アメリカ人と知って、なるほどと納得しました。どこか書の世界に通じるものがあり、アートとしても美しかった。でも地球人の言語、それも英語に意味を当てはめるというのは少々無理があるように感じました。

異星人の造形が、何十年も使い古されてきた姿だったのもがっかりでした。地球まで来れるということは、かなりの知能をもつ生命体であるはず。「宇宙戦争」のようにすぐに攻撃してきてもおかしくないのに、粘り強く地球人との話し合いに応じるものわかりのよさも、不自然に感じました。

とはいえ、すべてが円という閉じた図形であることや、12がキーナンバーになっていることは興味深い。そういえば、ストーンサークルの謎にも通じるものがあるような気がします。地球とは違う時間の流れ方があるということが、謎を解くヒントになるかも??

ところで本作の宇宙船が、おせんべいの「ばかうけ」に似ているというのが公開前から話題になっていました。たしかにシルエットだけ見ると”ばかうけ”ですが、実際に映像を見ると、私はポテトウェッジ(potato wedge)を思い出しました。(どうでもいい^^;)

 

他にそう思った人はいないかと探したら、約1名(イギリス人)しか見つからなくて残念。でもほかに、Terry's Chocolate Orangeに似ているという声や、バナナとのコラ画像などもあっておもしろかったです。

 

5 Movie Posters more threatening (and delicious) than ARRIVAL (Film Obsession)

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根岸子規庵と、恐れ入谷の鬼子母神

2017年05月21日 | おでかけ

レストラン香味屋さんで食事をした後は、以前から訪れたいと思っていた根岸の子規庵に足を運んでみました。香味屋さんから下町情緒あふれる住宅街を通って歩いて10分ほどのところにあります。

ここは、明治の俳人・正岡子規が、上京してから住んでいた場所です。もとは旧前田候の下屋敷の御家人用二軒長屋で、子規はのちに故郷松山から母と妹も呼び寄せました。子規はここで句会歌会を開き、高浜虚子や夏目漱石をはじめ、多くの友人、師弟が訪れました。

子規が結核で亡くなった後は、家族や師弟たちがこの家を守っていましたが、昭和20年の空襲で焼失し、のちに門下生たちによって復元されました。周囲の様子はすっかり変わってしまいましたが、ここだけは子規がいた頃の明治の面影がそのまま残っています。

以前、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」がきっかけで、子規の人生を追いかけていた時期がありました。ドラマ(のセット)で見る子規庵は、弟子たちがずらりと勢揃いする広いお座敷だったので、思ったよりこじんまりとしていて驚きました。

でも四季折々の花が咲く風流なお庭は想像した通り。好奇心旺盛で海外にも興味があった子規ですが、病に伏してからはここから見る風景が子規にとっての全世界でした。そして病に苦しみながらも亡くなる直前まで創作意欲が衰えることなく、情熱をもって作品を作り続けました。

これは子規が愛用していた座机の復元です。根岸の指物師に作らせたもので、曲がって伸びなくなった左足のために、立膝を入れられるくぼみがついています。

【関連記事】
坂の上の雲 (2012-03-10)
坂の上の雲ミュージアム (2012-04-02)
横須賀美術館「正岡子規と美術」展 (2012-04-15)
伊集院静「ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石」(2014-06-26)

***

ところで、江戸言葉の「恐れいりやした(=恐れ入りました)」をよく「恐れ入谷の鬼子母神」といいますが、鬼子母神といえば雑司ヶ谷なので、どうして入谷の鬼子母神というのか不思議に思っていました。行きの電車の中でふとググってみたところ、入谷にも鬼子母神があり、それが語源となっていると知りました。(Wiktionary)

子規庵のあと、入谷駅にもどりがてら入谷鬼子母神(真源寺)によってみました。途中、お豆腐懐石で有名な「笹乃雪」さんの前を通ります。

見たところ新しいお寺ですが、創建1659年と歴史があり、安産・子育の守り神として知られています。下谷七福神のひとつで、毎年7月にはここで入谷朝顔市が開かれるそうです。

入谷駅近くから正面にスカイツリーが見えました。この道をまっすぐ行くと浅草です。

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レストラン香味屋

2017年05月18日 | グルメ

台東区・根岸にある洋食屋さん、レストラン香味屋(かみや)さんにお昼を食べに行きました。日比谷線・入谷駅から歩いて10分。洋食好きの家族が前から行きたかったお店だそうです。

創業大正14年。香味屋という屋号は、もとは香水を扱う輸入雑貨店だったことからきています。珈琲豆を扱っていたことから、周辺の花柳界の芸者衆の要望で軽食を出すようになり、のちに洋食屋さんとなりました。2代目が完成させた「ビーフシチュー」、3代目が完成させた「メンチカツ」が看板メニューとなっています。

オムライスやグラタンなど、洋食屋さんらしい魅力的なお料理がいろいろありますが、私たちはちょっと贅沢なコースのお料理をいただきました。白いテーブルクロスの上にとんとんとカトラリーがセットされ、わくわく期待が高まります。

王道のコンソメスープをいただいたのは久しぶりのような気がします。フォンからていねいに作られた、誠実さのこもったお味。左向うに見えるパン(バターロールと三日月パン)は、手作りの温かさを感じました。

お魚料理は、スズキのポワレでした。お魚の下には揚げなす、上にのっているのはキャベツとトマトだったかな...? 下に敷いてあるのはおそらくベアルネーズソース。

メインディッシュは、ビーフシチューとメンチカツというお店の黄金コンビでした。ビーフシチューは黒毛和牛をデミグラスソースで煮込んだ濃厚で深みのあるお味。ほろりと柔らかいお肉が絶品でした。

そしてナイフを入れたとたんに肉汁がじゅわっとあふれるメンチカツも最高。ビーフシチューのデミグラスソースをからめながらいただきますが、からしをちょんとつけるとこれまたおいしい。ポテトグラタン、にんじんのグラッセ、ブロッコリーという王道のつけ合わせも、どことなく懐かしい雰囲気があります。

メインディッシュといっしょに運ばれてきたミモザサラダ。お料理はおいしかったけれど、最後は苦しくなってきたので、メインのお料理は食べるのを少し手伝ってもらいました。

別腹のデザートはオレンジのムースとガトーショコラ。コーヒーといっしょにおいしくいただきました。

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アルビノーニのアダージョ @マンチェスター・バイ・ザ・シー

2017年05月17日 | +映画のよもやま

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は物語を彩る音楽もすばらしく、心に残りました。

Manchester by the Sea Soundtrack (Warner Music)

メサイアなどのバロック音楽が多かったですが、物語の舞台となる小さな海辺の町の、どことなく寂しげな詩情あふれる風景、そして贖罪や鎮魂といった物語のテーマにもふさわしいと感じました。

特にクライマックスの場面で最初から最後までたっぷりと聴かせてくれる「アルビノーニのアダージョ」は圧巻のひとこと。映画のシーンと相まって、胸がしめつけられるような衝撃と感動を味わいました。

Albinoni: Adagio in G minor

(映画のシーンは含まれていません)

オルガンと弦楽器で演奏されるこの曲。ピアノ用に編曲された楽譜が欲しくなってヤマハのサイトをのぞいたのですが、アレンジが今ひとつ気に入らなくて今回はやめにしました。やはりこれはクラシックでしょう、と全音のピアノピースも当たってみたのですが、なんとこの曲が廃版になっていたのです...残念。

***

映画やテレビでもおなじみで、誰もが一度は耳にしたことがある名曲ですが、以前NHKの「ららら♪クラシック」という番組で、おもしろいエピソードをやっていました。

偽作?傑作?誰の策? ~アルビノーニのアダージョ~ (2016/10/01放送)

アルビノーニは、バッハと同時代に活躍したバロック音楽の作曲家。この曲は、イタリアの音楽学者レーモ・ジャゾットが、第2次世界大戦で破壊されたドイツ・ドレスデンの図書館でアルビノーニの自筆譜の断片を発見し、それをもとに編曲したとされていました。

楽譜が出版されたのは1958年。当時のバロック音楽ブームと相まって話題をよび、大人気曲となりました。しかしその後の研究によって、今ではこの曲が、アルビノーニではなくジャゾット自身が作曲した作品であることが判明しています。

批判も浴びたジャゾットですが、この曲が名曲であることには変わりありません。これまでにも、オーソン・ウェルズ監督の「審判」(1962)、メル・ギブソン主演の「誓い」(1981)など、さまざまな映画音楽として使われています。

 
【関連記事】マンチェスター・バイ・ザ・シー (2017-05-16)
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マンチェスター・バイ・ザ・シー

2017年05月16日 | 映画

ケイシー・アフレック主演、ボストン近郊の小さな海辺の町を舞台にしたヒューマンドラマ。「ギャング・オブ・ニューヨーク」の脚本を手掛けたケネス・ロナーガンが監督・脚本を務め、マット・デイモンが製作に名を連ねています。

マンチェスター・バイ・ザ・シー(Manchester by the Sea)

ボストンでアパートの便利屋として働いているリー(ケイシー・アフレック)は、兄が持病の心臓病で亡くなったとの知らせを受け、故郷の海辺の町マンチェスターに駆け付けます。遺族としての務めに奔走する彼は、弁護士に会い、自分が兄の残したひとり息子パトリック(ルーカス・ヘッジス)の後見人に指定されていることを知ります。

いきなり16歳の少年の父親代わりを任せられ、困惑するリー。ボストンの自分の元に引き取ろうとするも、学校生活を満喫していて青春まっただ中のパトリックは、故郷を離れるつもりはなく、リーがここにきて一緒に住むべきだと主張します。しかしリーにはどうしてもこの町にもどれない理由があったのでした...。

きっと重苦しい映画だろうなと思う一方で、きっと私好みの作品に違いないという直感がありました。それに久しぶりに、ニューイングランドの灰色の海の風景も見たかった。マンチェスター・バイ・ザ・シーというのはマサチューセッツ州の北東部、ボストンから車で1時間半のところにある海辺の町です。

そういえば「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」も町の名前だったと、ふと思い出しました。この映画はテイストとしては「君が生きた証」(Rudderless・2014)に似ている...つまり、取返しのつかない過去と向き合う一人の男の物語。現在と過去を行きつ戻りつしながら明らかになる、事実の重さに打ちのめされました。

全編を通して死が色濃く支配している作品ですが、物語の本質を失わないほどのさりげないユーモアがそこここに散りばめられていて、そのたびに何度も救われました。特にパトリックの存在は生きる希望そのもの。2人の彼女とのドタバタやバンドの練習風景など、彼のはじける若さと明るさがまぶしかった。

笑顔の下に最愛の父を失った悲しみを秘めながら、叔父であるリーを気遣うパトリック。そして、パトリックにとってどうすることが一番いいか、自問し、苦しみ悶え、考え抜いて最後にひとつの結論を出すリー。そんな彼らを気にかけながらそっと見守る、まわりの心優しい人たち。

登場人物たちの心の動きや、小さなエピソードをひとつひとつていねいにすくいとりながら、まるで水彩画のように描かれていく繊細な物語に心を動かされました。

ケイシー・アフレックの出演している映画はこれまでにもいくつか見ていますが、失礼ながらベン・アフレックの弟さんというだけで今ひとつ印象が薄かったので、こんなに繊細で骨太の演技のできる役者さんだったんだ、ということに正直驚きました。ベンやマットと同じくボストン近郊で生まれ育った彼だから、この役どころもすごく自然に感じられました。

【関連記事】アルビノーニのアダージョ @マンチェスター・バイ・ザ・シー (2017-05-17)

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