セレンディピティ ダイアリー

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アトミック・ブロンド

2017年10月31日 | 映画

冷戦末期のベルリンを舞台に、シャーリーズ・セロンがMI6のスパイを演じるアクションスリラー。グラフィックノベルの「The Coldest City」をデヴィッド・リーチ監督が映画化。

アトミック・ブロンド (Atomic Blonde)

ベルリンの壁崩壊直前の1989年のベルリン。MI6の諜報員が殺され、彼が持っていた腕時計が奪われます。その中には各国の諜報部員の全氏名が記されたリストが入っていました。リストがソ連の手に渡ることを恐れたMI6は、諜報員のロレーン(シャーローズ・セロン)を直ちにベルリンに派遣します。

ロレーンはMI6ベルリン支局のデヴィッド(ジェームズ・マカヴォイ)と協力し、リストを取り戻し、ソ連に情報を渡そうとした二重スパイを突き止めるべく奔走しますが...。

女神の見えざる手」(Miss Sloane)に続いて、かっこいい女性の登場です。シャーリーズ・セロンがMI6のスパイを演じているので、公開前に女性版007との声も聞こえていましたが、本作は冷戦時代のベルリンが舞台とあって、全体的にダークで殺伐とした雰囲気。でもクールでスタイリッシュな映像にしびれました。

本作には、MI6、KGB、CIA、さらに東ドイツのシュタージやフランスのスパイまで登場します。演じているのは英米の俳優さんたちですが、国際色豊かで、当時の各国間の熾烈な駆け引きが、この小さな都市の中で繰り広げられていたことを想像しました。そんな生き馬の目を抜く世界で、体を張って戦うシャーリーズが、痛々しく心に突き刺さりました。

「女神~」は主にことばによる応酬でしたが、本作では過酷な銃撃戦、肉弾戦、カーアクションがこれでもかと繰り広げられます。容赦なく痛めつけられ、血まみれ、傷だらけ、あざだらけになっても、ひるまず立ち向かっていくシャーリーズ。過激なシーンもあり、いつものことながらプロ根性に圧倒されました。

ストーリーは、だましだまされ組織のミッションと個人の思惑がめまぐるしく交錯し、Aと思ったらB、と思ったら実はCといった具合。最後は一応ハッピーエンディングですが、やられた方としてはこのまま黙ってはいられないでしょうね。スパイは味方にとっては”知りすぎた存在”、相手にとっては裏切り者。一生平穏ではいられない残酷な職業だと思います。

80年代の退廃的なロックと、シャーリーズのパンクだけれどエレガントなファッションが、荒涼とした世界にクールにマッチしてかっこよかったです。

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かぼちゃとメイプルシロップのカップケーキ

2017年10月30日 | 料理

ハロウィーンにあわせて、かぼちゃとメイプルシロップのカップケーキを作りました。

かぼちゃのマッシュとメイプルシロップがたっぷり入った、こっくりとした甘さのカップケーキです。上から粉砂糖をふるって仕上げました。

かぼちゃはいつもはレンジでチンしていましたが、今回は小さな蒸籠で蒸してみました。手間は全然変わらないのに、この方がずっとほくほくと仕上がります。ボウルに移してフォークでつぶし、メイプルシロップを混ぜてペースト状にします。

 

卵は共立て(卵白と卵黄を分けずに泡立てる)にしました。グラニュー糖に三温糖も混ぜて素朴な風合いに仕上げます。

卵を泡立てる時にボウルがぐらつかないよう、いつもはタオルを敷いていましたが、今回シリコンの鍋敷きを使ってみたらこれがぴったり!グリップが効いてボウルをしっかりホールドしてくれます。先日おみやげにもらったものですが、イラストもかわいくて気に入っています。

黒とオレンジのハロウィーンカラーでセッティング。黒いペーパーカップはゴシックデザインが大人っぽくて気に入っています。

***

先日家族がニューヨークで撮ってきてくれた写真から。マンハッタンのあるお家だそうですが、センスのあるハロウィーンディスプレイがすてきですね。何やら人だかりがしていると思ったら...

上と下の違いがわかりますか?^^

リスさんが飾りにしていたとうもろこしを夢中で食べていたそうです。

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女神の見えざる手

2017年10月29日 | 映画

ジェシカ・チャステイン主演、政治の世界を影で動かすロビイストの知られざる実態を描いた社会派サスペンスです。監督は「ペイド・バック」(The Debt・2010)「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のジョン・マッデン。

女神の見えざる手 (Miss Sloane)

エリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、ワシントンD.C.の大手ロビー会社に所属する凄腕ロビイスト。しかし、銃規制法案を廃案に仕向ける仕事を依頼されたため、自らの信条に合わないと断って、部下を引き連れ、銃規制賛成派の小さなロビー会社に移籍してしまいます。

圧倒的な資金力と、各界に強力なパイプを持つ巨大ロビーカンパニーを相手に、スローンは手段を選ばない大胆な戦略を展開し、法案実現に向けて果敢に挑んでいきますが...。

ジェシカ・チャステインが大好きなので楽しみにしていた本作。実際より大げさに脚色されてはいるでしょうが、アメリカのロビー活動の、正義も倫理もかなぐり捨てたすさまじい駆け引きに圧倒されるとともに、しびれるような興奮を覚えました。

あっと驚く結末は、よくよく考えてみたらなるほどと納得するものでしたが、全編にわたるセリフの洪水と丁々発止のやりとり、優勢・劣勢がめまぐるしく変わる展開に、見る者に考える隙を与えなかったのだ、と思い当りました。

同監督の「マリーゴールド・ホテル~」のまったりした作風とは真逆の雰囲気ですが、マッデン監督はチャステインとはモサドのスパイを描いた「ペイド・バック」で組んだことがあり、今回彼女をヒロインに起用したことを深く納得しました。

スローンが黒を基調にしたハイファッションに身を包み、論理と機転と瞬時の判断で相手を徹底的に打ちのめそうと戦う姿はまるでサイボーグのよう。目的のためには手段を択ばず、身内の心の傷さえ利用する姿を見ると、彼女にとっては正義は二の次で、ただ勝利の味に酔いたいだけなのでは、と思うこともありました。

それでも周囲が彼女に惚れ込み、支えようとするのは、自らをとことん追い詰める厳しさ、そして信念の前に自分も泥をかぶる覚悟があるとわかっているからだと思います。彼女の生い立ちや私生活には全く触れられていませんが、へたに浪花節にせず、最後までタフでクールなヒロインとして描いていたのがよかったです。

映画の中でロビイストたちがやっていることは完全に違法行為ですが、証拠不十分でうまく言い逃れができればセーフということなのでしょう。決してきれいな世界ではありませんが、それでもテレビで正々堂々と議論を戦わせている場面を見ると、民主主義が根幹にあることを実感しました。

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ゴーヤを使って & 京のおばんざい

2017年10月26日 | 料理

今年は家族が育てたゴーヤが大豊作でした。2階まで延びたゴーヤがジャングルのように生い茂っていましたが、先日の台風21号で葉っぱが全部飛び散ってしまいました。我が家のゴーヤの夏が突然終わりを迎えました。

時々、右のようにつるんとしたゴーヤができることがあります。でこぼこの畝が何かのはずみで干渉しあうとこんな形になるのでしょうか。味はふつうのと特に変わりはありません。このほか、熟して黄色くはじけたゴーヤも初めて見ました。いずれもお店で見ることはまずないので、家庭菜園ならではの貴重な体験でした。

ゴーヤといえば、これまでチャンプルーくらいしか思いつきませんでしたが、今年はずいぶんメニューも開発しました。いくつかご紹介させていただきますね。

ゴーヤと厚揚げの麻婆蒸し。これは家ではよく白菜で作るお料理ですが、ゴーヤで作ってもおいしかった。ピリ辛味のひき肉がゴーヤによく合い、ごはんが進みました。

薄切りにしたゴーヤを塩もみにして、サラダにもよく使いました。この日はキャベツ、水菜といっしょに、粒マスタードを効かせたドレッシングで和えました。ゴーヤの苦味がアクセントになって、病みつきになります。

鶏肉と夏野菜の揚げびたし。煮るとゴーヤの苦味がまったく気にならないので、苦手な人でもおいしくいただけます。

薄切りにしてソテーし、肉料理の付け合わせにもずいぶんと活躍しました。写真は豚肉のトマト煮込みにあわせたものです。ゴーヤを使うと彩りがきれいですし、季節感が出ます。

このほか、定番のゴーヤチャンプルーはもちろんのこと、夏野菜のカレーに入れたり、かき揚げにしたり。ゴーヤというとクセがあって使いづらいと思っていましたが、和洋中となんにでも合うことがわかりました。

【関連記事】
ゴーヤを使って(2) (2018-08-19)
ゴーヤを使って(3) (2019-08-29)

***

京都でいただいたおばんざいを我が家でもまねして作ってみました。

焼万願寺唐辛子。万願寺唐辛子をグリルで焼いて、焦げ目がついたらはさみでチョキチョキ。おしょうゆをさっとかけて、かつおぶしをぱらりとかけました。

茄子と鶏肉の揚げ出し。お店では賀茂なすを使っていましたが、手に入らなかったので太めの長なすで作りました。鶏肉に衣をつけて揚げることで、わずかにとろんとした仕上がりになります。おだしも京都風に薄味にしました。九条ねぎも忘れずに。

丸なすは東京でも手に入りますが、賀茂なすとどう違うの?と思ったら、賀茂なすは丸なすのうちのひとつの種類なのだそうです。最近は京野菜が手に入りやすくなったので、そのうちふつうに買えるようになるかもしれません。

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トラットリア アルポルト

2017年10月25日 | グルメ

お買い物のついでに、トラットリア アルポルトさんでお昼をいただきました。

 (HPよりお借りしました)

イオン碑文谷7階にあり、片岡護さんのイタリアン「アルポルト」のお味がリーズナブルにいただけます。スーパーの中とは思えないほど、明るく静かで落ち着いた雰囲気です。お天気がいい日は窓から富士山が見えるそうです。この日は、パスタに前菜のつくランチのセットをいただきました。

白いんげん豆とツナのマリネ、キャロットラペ、安納芋とりんごのマッシュなど。イタリアのお惣菜といった感じですが、どれもひとひねりしてあって、プロのアイデアが生きています。家で参考にしたくなるヒントがいろいろ見つかりました。

きのこと栗と豚肉のラグーパスタ。秋らしいこっくりとした味わい。

こちらは秋刀魚と秋野菜のパスタ。オリーブオイルと秋刀魚の脂が合わさって、そのままいいおだしになっていました。どちらもオイル系のパスタなので、見た目は似ていますが、お味は全然違ってそれぞれ個性的でした。秋の味覚を楽しみました。

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この日は、家族が海外に単身赴任している友人のところにお世話になるので、レトルトカレーやインスタントラーメンなど、おみやげにインスタント食品をいろいろ買い込みました。

ところが、その人が結構お料理が好きで、夕食を作ってくれた日もあったそうです。インスタント食品ばかり用意して、かえって失礼だったかも...^^; でも何かの役に立ったらうれしいです。

帰りにおみやげをたくさん買ってきてくれました。その中から雑誌を2冊、Country Home と bon appetite です。どちらもオンライン版をよくチェックしている好きな雑誌なのでとてもうれしい。よく私の好みがわかったな~と感心しました。

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オットー・ネーベル展

2017年10月24日 | アート

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催している「オットー・ネーベル展 シャガール、カンディンスキー、クレーの時代」(~12月17日まで)を見に行きました。

6月にBunkamuraに「ソール・ライター展」を見に行った時に、予告のポスターに惹かれ、楽しみにしていた展覧会です。パッチワークのような色彩と構成。オットー・ネーベルという名は知りませんでしたが、幾何学的な作風に、ピンとくるものを感じました。

オットー・ネーベル(1892-1973)はベルリン生まれ。建築と演劇を学び、スイスとドイツで画家として活動しました。日本初の回顧展となる本展では、同時代に活躍し、ネーベルに影響を与えたシャガール、カンディンスキー、クレーの作品とともに、彼の画業を紹介しています。

アスコーナ・ロンコ 1927年

初期の作品から。兵役中にフランツ・マルクの作品に出合い、画家になることを決意したネーベルは、ナチスの弾圧を逃れ、他の芸術家たちとともにスイスに移住します。この作品はスイスのアスコナで描かれましたが、当時憧れていたシャガールの影響が見て取れます。

また妻がバウハウス(ドイツの芸術・建築学校)でアシスタントとして働いていたことが縁で、バウハウスで教鞭をとっていたクレーやカンディンスキーとも交友を深め、彼らから多大な影響を受けました。

聖母の月とともに 1931年 

建築を学んでいたネーベルは、都市の景観を、単純化した形と色彩のコントラストで構成しました。私はこの都市の建築シリーズが特に気に入りました。大聖堂のステンドグラスや石積みの様子を幾何学的にとらえた一連の作品もすてきでした。

「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」より ナポリ 1931年

「イタリアのカラーアトラス(色彩地図帳)」より ポンペイ 1931年

ネーベルは1931年にイタリアを旅し、景観を自身の視覚感覚によって色や形で表現した色彩の実験帳を作ります。ネーベルにとって、ナポリは黄色、ポンペイはグレーの街なのですね。会場ではスケッチブックの各ページが液晶ディスプレイに表示され、めくるようにして見ることができたのが楽しかったです。

地中海から(南国) 1935年

イタリアの風景から。この頃のネーベルの作品はクレーの作風に似ていますが、よく見ると、方向をそろえた短い線や細かい点で何層にも重ねて描かれていて、織物のような風合いを感じました。

ムサルターヤの街 IV:景観B 1937年

近東の風景でしょうか。土を感じさせる、赤みがかった色彩の構成が美しい。

輝く黄色の出来事 1937年

後半生、スイスに移住してからは、敬愛するカンディンスキーと同じように、抽象絵画に取り組むようになります。自らを指揮者に例え、音楽の世界を絵画で表現したり、ルーン文字(ゲルマン諸語の古い文字体系)や近東のイメージを取り入れたり。ネーベルの関心が内なる世界へと向いていったことが、作品の変化から感じ取れました。

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猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

2017年10月21日 | 映画

「猿の惑星」シリーズ最新作。ピエール・ブール原作のオリジナル「猿の惑星」(1968)へとつながる、プリクエル3部作の第3弾。監督は前作と同じマット・リーヴス。前2作と同様、猿のシーザーをアンディ・サーキスが主演し、敵対する人間のリーダーをウディ・ハレルソンが演じています。

猿の惑星:聖戦記 (War for the Planet of the Apes)

前作で人間との共生という道を絶たれたシーザー(アンディ・サーキス)をリーダーとする猿たちは、森の奥深くに砦を築き、人間が襲ってきた時に対処できるよう武装化していました。しかしある時、人間たちからの奇襲を受け、シーザーの妻と長男の命が奪われてしまいます。

冷酷非道な人間のリーダー、大佐(ウディ・ハレルソン)への復讐を誓ったシーザーは、仲間たちを安全な場所へと移動させ、自らは数人の仲間とともに、大佐のいる人間たちの基地へと向かいますが...。

「猿の惑星」(1968)の”地球はなぜ猿の惑星になったのか”という謎を解き明かす3部作の最終作。もともとピエール・ブールの原作が好きというのもありますが、本シリーズは猿と人間の深いヒューマンドラマが描かれていて、見るたびに心を揺さぶられます。それを支えているのが、パフォーマンス・キャプチャーという最新技術。

猿がもはや猿ではない! 猿たちの哀しみ、怒り、仲間を思いやる気持ちが表情豊かに伝わってきて、いつの間にか猿のひとりとして共感している自分がいます。今回も、シーザーを見るたびに猿を束ねるリーダーとしての苦悩が心に響き、何度も涙してしまいました。

カリスマ的リーダーであるシーザーですが、本作では個人的な恨みから復讐を企てるという、これまでにない行動に出ます。それではコパと同じだ、と彼の右腕であるモーリスに諫められますが、シーザーのそうした人間的な弱さも愛おしく感じられました。コパはすなわちもうひとりの私たちであり、単なる悪者として描かれていないことに、作り手の愛を感じました。

ストーリーは「出エジプト記」を想起させるものでしたが、大佐が君臨する人間たちの基地は「シンドラーのリスト」で描かれるナチの強制収容所を思い出しました。大佐は、レイフ・ファインズが演じたサディスティックな収容所長にそっくりだし、人間が猿を絶滅させようとする思想にも通じるものがあります。

猿たちが脱走するところは「大脱走」を思い出しました。全体的に重いストーリーが進行する中、ここだけはスリリングでコミカルで、ほんの少し救われる場面でもありました。コミカルといえば、かつて動物園にいたというバッド・エイプがいい味を出していました。人間の手先となっていたドンキーが、最後にとった行動には泣けました...。

人間がことばを失うという展開も衝撃的でした。映画では人間が開発したウィルスの副作用という設定でしたが、こうして戦争ばかりしていたら、子どもたちは学ぶ機会がないし、いつかは知的に退化していくことになるだろうな...と想像して怖ろしくなりました。

シーザーの生き残るもうひとりの息子の名はコーネリア。旅の途中で出会う人間の少女ノヴァも登場し、うまく「猿の惑星」へとつながっていました。

【関連記事】
猿の惑星:創世記(ジェネシス) (2011-10-18)
猿の惑星:新世紀(ライジング) (2014-10-06)
ピエール・ブール「猿の惑星」 (2011-11-18)

渋谷の地下道にて。映画のプロモーションで、なぜか名画の中にシーザーが登場。ストーリーとは関係ないですが力作ですね。

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川床を楽しむ &高山寺

2017年10月17日 | +京都

せっかく夏の京都に行くので、今回は川床での食事を楽しみたいと思っていました。直前のことであまり選択肢はなかったのですが、高雄のもみぢ家さんの予約を取ることができました。最初は鴨川か貴船と思っていましたが、高雄は行ったことのない場所だったので、観光も兼ねて行けてちょうどよかったです。

高雄は市街の西北、車で30分ほどの山の中にあります。路線バスも通っていますが、私たちはもみぢ家さんの送迎を利用しました。

車を降りて、緑の木立の中、川音に誘われるように吊り橋を渡ると、到着にあわせて鮎を焼いてくださっていて、香ばしい匂いとともに、煙がもうもうと立ち上っていました。やがて煙の間から、川沿いにずらりとお座敷が並ぶ様子が見えてきました。

お店に着くと、仲居さんが早速お席に案内してくださいました。高雄は市街より気温が3~5℃低いとのことですが、さわやかな緑と川のせせらぎが目に耳に心地よく、汗がす~っと引くのを感じました。お席から見える川の眺めも趣があり、清涼感たっぷり。生き返ります。

焼きたての鮎と、おそうめん、お重に入った季節のお料理など。日常を離れ、ゆったりとした時間がすごせました。

***

食事のあとは、栂尾(とがのお)にある高山寺まで散策しました。もみぢ家さんからは清滝川沿いをぶらぶら歩いて、片道20分ほどの距離です。

高山寺の創建は奈良時代と伝えられますが、正式には鎌倉時代、明恵上人によって開祖されたとされています。山奥にひっそりと佇む寺院ですが、ここにかつて「鳥獣人物戯画絵巻」をはじめ、数多くの国宝、文化財が収蔵されていました。現在ではその大部分が、京都および東京の国立博物館に寄託されています。

鳥獣人物戯画絵巻は、甲・乙・丙・丁の4巻で構成され、原本は甲・丙が東京国立博物館、乙・丁が京都国立博物館に寄託保管されています。明恵上人の住居跡である石水院に、模本が展示されていました。石水院は、国宝で世界文化遺産でもありますが、それを感じさせない楚にして凛とした建物でした。

鬱蒼とした森に囲まれた境内を歩いてまわりました。写真の金堂は室町時代に焼失した後、江戸時代に仁和寺から移築されたものだそうです。

このほか、日本最古の茶園があり、びっくりしました。明恵上人が、中国に留学した栄西から贈られた茶種を栽培したのが始まりで、かつては栂尾のお茶を本茶、それ以外は非茶とよばれたそうです。宇治茶は栂尾の苗木を移植して、栽培されたと伝わっています。

しんと静まり返った境内を歩いていると、世界が遠くに感じられました。

兵庫・京都旅行記はこれで終わります。おつきあいくださり、ありがとうございました。

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イノダコーヒ本店の朝食

2017年10月15日 | +京都

翌朝は、ホテルをチェックアウトしてから地下鉄に乗って、イノダコーヒ本店まで朝食を食べに行きました。烏丸御池駅から歩いて5分ほどの静かな街中にあります。

入口は、右側ののれんがかかった伝統的な町家の建物にありますが、左側の白い建物が創業のお店となっています。左の旧館は満席だったので、私たちは待たずに右の新館の席に案内していただきました。最近、京都では観光用のレンタサイクルが増えていて、この日もお店の前にはたくさん自転車が停まっていました。

新館は2階までの吹き抜けとなっていて天井が高く、クラシックで落ち着いた雰囲気でした。天井まであるガラスの外にはテラス席があり、和風のお庭が続いています。通路をはさんで隣の旧館は、外から見たところ、アメリカンカントリーといった感じのかわいらしい雰囲気でした。

モーニングセットの「京の朝食」です。コーヒーとオレンジジュース、クロワッサン、スクランブルドエッグとハム、サラダ。見たところ、特に”京都ならでは”というわけではない王道の朝食ですが、素材のひとつひとつにお店の吟味が感じられました。

私はフレンチトーストにしましたが、想像とまったく違うものが運ばれてきてびっくりしました。厚切りトーストの上にお砂糖がたっぷりまぶしてあり、食べてみると正真正銘、昔懐かしい揚げパンのお味です。なんとも個性的なフレンチトーストですが、それゆえに大満足しました。コーヒーにもよく合いましたよ。

このエリアには古い町家がそこここに残っています。老舗らしいお店が並ぶ中、町家の建物をうまく生かした新しいお店もありました。写真の足袋屋さんのお隣は、チョコレートのベルアメールです。

れんが造りの重厚な建物もいくつかありました。写真は京都文化博物館で、(東京駅と同じ)辰野金吾さんの設計です。ちょうど(ロバート・キャパなどが所属した)マグナム・フォトの展覧会をやっていたので、時間があったら見てみたかったです。

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京のおばんざいを楽しむ

2017年10月14日 | +京都

夕方ホテルにもどると、相方がひと足先にチェックインして、プールで泳いでいました。もどるのを待って、しばしくつろいでから夕食を食べに行きました。特に当てがなかったので、駅前の地下街にでも行こうか~と話していましたが、ホテルの目の前に”京のおばんざい”という看板を見つけ、吸い寄せられるように入りました。

麺どころ 晃庵」さんというこちらのお店は、本来うどん屋さんのようですが、夜は地酒や京都ならではのお料理がいただけます。ちょうど京都の家庭料理があれこれ食べたいところだったので、願ったりかなったりでした。お客さんは結構入っていましたが、席が広く、静かでくつろげました。

まずは、夏の京都といったら鱧(はも)でしょう!ということで、鱧のおとし(湯引き)をいただきました。梅と、黄色い方は酢味噌だったかな?2種類のソースでいただきました。

焼万願寺唐辛子。最近は東京でも買えるようになった、京野菜の万願寺唐辛子。私はピーマンと同じように種を取ってましたが、このまま食べられるんだ~と知りました。おいしかったので、最近は家でもよくまねして作っています。

京のおばんざい盛合せ。手前から湯葉、ふきの煮物、紅白なます、だし巻き卵。紅白なますって関東ではお正月以外あまりいただかない気がします。関東の卵焼きはしっかりと甘みがあるので、だし巻き卵をいただくと京のお味だな~と実感します。ふんわり優しいお味でした。

賀茂茄子と鶏の揚げ出し。おだしがしみじみとおいしかったです。大阪、京都で九条ねぎのおいしさに目覚めて、最近は家でも常備しています。

鴨も京都らしいお味。2種類のねぎをたっぷり添えていただきました。

〆に、刻みきつねと九条ねぎのおうどんをいただきました。京都のおうどんは、讃岐うどんより少し細めなのですね。おだしの効いたおうどんは、おなかに優しく、さっぱりといただけました。

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