労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

そろそろ転機かも?

2006-12-14 02:11:44 | 経済
 いやな円安が続いている。
 
 円はユーロに対してほぼ一方的に下落しており、日々ユーロに対して最安値を更新している。
 
 このユーロ高=円安をもたらしているものは、65兆円と空前の規模に膨れあがった投資信託の残高、とユーロ債券人気である。
 
 日本の小金持ち(といってもほとんどがサラリーマンか年金生活者だが)にとってユーロ債券やユーロ債券を組み込んだ投資信託が人気なのは、これらの金融証券が日本に比べての高金利と為替差益という二重のメリットがあるからだ。
 
 つまり、傾向的に円がユーロに対して下落している状態では、円で表示されるユーロ債の見かけ上の価格が日々上昇しているように現象する。そこでユーロ債を買い求めようとする個人投資家やユーロ債を組み込んだ投資信託が人気を呼び、円通貨を売ってユーロ通貨を買い求めようとする取引が増加し、これがユーロ高=円安をさらに加速させるという循環ができている。
 
 事態を悲劇的にしているのは、これらの投機家たちが自分たちが非常に危険な投機行為を行っているにもかかわらず、自分たちは投機家であるという自覚すらないことである。
 
 そして安倍晋三政権はこのような国をあげてのユーロ投機の後押しをしているからである。
 
 もちろん政権自体がユーロ債を買えなどということはありえないことであるが、政府自民党をあげて金利を上げようとしている日銀に圧力をかけ続けているのであるから同じことであろう。
 
 今月の7日にECB(欧州中央銀行)が利上げを発表し、FRB(アメリカ連邦準備理事会)が金利の据え置きを決めたことで、すでに日本の低金利は突出したものになっており、この低金利を利用して日本の遊休貨幣資本が大量に流出しはじめている。
 
 このように日本が世界の流動性(遊休貨幣資本)の供給源になっていることが、すでに世界経済の正常な循環を狂わせはじめている。つまり、欧米各国は世界的な規模で進行しはじめているインフレを沈静化させるために金利を上げ景気を沈静化しようとしているが、逆に日本はインフレを加速させるために大量の流動性(遊休貨幣資本)を世界にたれ流しているのであり、たとえて言えば世界の中央銀行はインフレの火を消すために水をまきはじめたのに、日本だけはいまだにガソリンをまいているのである。
 
 このような状態は現状では、一見すると日本に有利に見える。大量の資本流出による円売りは円の継続的な下落をもたらし、この持続する円安が対外投資を有利にさせているとともに、輸出物価を押し下げて輸出を有利にしている。
 
 これこそが安倍自民党政権のねらいであるが、これが世界経済におよぼす影響も見なければならない。日本のように世界の流動性(遊休貨幣資本)の供給源になっている国が存在するということは、世界各国の中央銀行がとっている高金利政策(インフレ沈静化政策)が無効になっているということであり、欧米各国はインフレ懸念がいつまでたっても払拭されないために高金利政策をとり続けなければならず、この高金利政策が実体経済に影響を及ぼしはじめており、世界経済はじわじわと停滞に向かっている。
 
 だから円安で輸出物価は低下し、日本の国際競争力は増しているにもかかわらず、輸出数量が伸びないという事態になっている。
 
 そればかりではなく、円の独歩安は現在の世界経済の真の危険要因であるドルの脆弱性を再び浮かび上がらせようとしている。
 
 現在、アメリカの貿易収支の赤字は8000億ドルに達しており、アメリカはこの事態に真剣に立ち向かう必要があるが、ドルは円安につられて高止まっている。つまり日本からの流動性(遊休貨幣資本)の流入によってアメリカの貿易収支の赤字は穴埋めされ見かけ上の均衡が保たれているが、これはドルの実力が高く見せかけられているのであり、ドル通貨の実力はすでにその実勢から乖離したものになっている。
 
 だから一部の国の中央銀行では準備高をドルからドル以外の通貨に切り替えようとしている。
 
 IMF(国際通貨基金)によれば世界の中央銀行の準備高の総計は4兆6000億ドルでその三分の二がドル通貨によってしめられているが、今年に入ってロシア、スイス、アラブ首長国連邦、中国の中央銀行がドル通貨以外の通貨に分散する意向を示している。
 
 これらの国の世界経済における地位を考えるとその影響は決して小さくはないし、こういった動きがさらに広がるとドルの暴落という最悪のシナリオも見えてくる。