労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

株式市場は地上最後の楽園

2006-09-28 17:32:51 | Weblog
 世界経済はもう数ヶ月前からなだらかな下降局面を迎えている。
 
 それを特徴的に表しているのが、原油をはじめとする、第一次産品の顕著な下落である。CRB(国際商品指数)はすでに300を下回っており、すでに商品先物ブームは峠を越えている。
 
 そしてつい先日には、ヘッジ・ファンドのアマランス・アドバイザーズが天然ガスの先物投資に失敗して、50億ドル超の損失を出している。
 
 以来、先物市場は一次産品(原油や金、銅、アルミ)の買い建てと債券の売り建てを反対売買に切り替え、一次産品の先物売りと債券の先物買いに切り替えたので、アメリカなどの先進諸国の長期金利は低下し、商品から債券への投機資金の逃避活動が加速したが、一方では、世界的なインフレ傾向がおさまっていないため、長期金利の低下のいっそうの下落は期待できないため、その多くが債券市場から株式市場へと転出し始めている。
 
 またアメリカの長期金利の低下は、住宅ローンが伸び悩んでおり、だぶついた資金がモーゲージ(住宅抵当)証券に流れ込んでいるために、債券相場が上昇(長期金利の利率の低下)しているという要因もあり、それ自体がアメリカ経済の停滞の表現でありうる。
 
 これはアメリカの実体経済でも、8月の鉱工業生産が7ヶ月ぶりに前月比でマイナスになったことや、設備稼働率の頭打ち状態が続いていることや、8月の耐久財受注額が前月比0.5%減と市場予想(0.5%増)に反して減少したことや民間設備投資の先行指数とされる国防および航空機を除く資本財受注も0.3%減となったこと等に現れており、あきらかに、アメリカの鉱工業生産は高原状態から下降へと向きを転換しているのである。
 
 このアメリカ経済の元気のなさは4-6月期の資本収支にも現れている。この間のアメリカの対外資産純増(資本流出)は前期比40.4%減の2123億ドル、外国の対米資産の純増(資本流入)は前期比30.5%減の3663億ドルと資本流出、流入とも大幅に減少しているが、とくに資本流出の減少は著しく、中国、ロシア、ブラジル、インドなどの新興諸国への資本投下はすでに峠を越えている。
 
 これは中国経済でも同様で、1-6月期にはビルや工場などへの建設投資が29.8%と爆発的な拡大をとげていた建設ラッシュは、主に中国の銀行の融資に頼っていたが、この中国の銀行に出資していたのが欧米の金融機関であった。
 
 この中国でも金融の引き締めは一定の効果を生み出しており、中国の建設投資は顕著に下落しており、最近の上海当局の汚職摘発により、“上海バブル”に代表される中国沿岸部の急速な資本主義化は一つの転機を迎えようとしている。
 
 かくして世界中の投機資金は行き場を失って、彼ら本来の故郷であるウォール街の株式市場に帰還しつつある。ウォール街はかつて世界を駆けめぐって数々の“伝説の勝利”を打ち立てた歴戦の勇士たち、資本主義の英雄、投機の戦士たちの帰還を両手をあげて歓迎している。
 
 しかし、極東の“敗戦国”の労働者から一言言わせてもらえば、株が上がるのは、買う人がいるからであり、買うから上がり、上がるから買うという好循環は、当然のことながら、株式市場に間断なく資金が流入しているということを前提とした話である。もしこの資金流入が途絶しないでも減少でもすれば、たちまち、下がるから売る、売るから下がるという正反対の循環に転化するということをお忘れなく。