コペンハーゲンのあるシュラン島のエネルギー源は、石炭52%、石油・天然ガス18%、バイオガス10%、スウェーデンからの輸入(水力、原子力)10%、風力8%、ゴミ焼却熱2%である。このうち特に石炭を減らしてバイオガスを増やしていきたい。
デンマークでは、風力発電が200年の歴史を持ち、現在は国の発電量の20%を担っていること、組合の出資者は4000人以上おり、毎年10%を越える配当を実現いること、発電した電気は電力会社が全て買い取ることを法律で義務付けていること、それはデンマーク国民の「原子力は絶対に使わない」という意志の反映された環境エネルギー政策である。【その国民の強い意志は約20km離れた対岸に建設されたスウェーデンの原発2基を運転停止に追い込んだ例は、その民意を政治家がしっかり受け止め環境政策および外交成果として実績を上げている様は、民主主義の原則である「主権在民」の典型を目の当たりにしたようであった】
1800年代に電気化されたときに、120の小型発電所が造られ、そのほとんどが風力発電であった。しかし、風が吹かないと発電できない一方で、蒸気を用いた発電は安定しているため消滅に向かった。第二次世界大戦のとき、蒸気発電の原料確保に行き詰まったため、臨時に170の中型風力発電所が建てられるが、戦争終了とともに消滅した。戦後1957年、政府が資金を出して200kWの世界最大規模の風力発電所を建設した。石油ショックを受けて、アメリカがデンマーク製の風力発電所を設置したが、これは航空会社が開発したものでコストがかかりすぎて頓挫した。他方、デンマークでは個人が開発したため、コストの問題が生じなかった。現在は世界の風力発電機の1/3がデンマーク製である。
前述のように、電力会社は風力での電気を買うことが義務付けられている。また、ケーブル設置の経費も電力会社が負担するため、国民に風力発電機を建てるインセンティブが与えられている。また、国民の7割がさらに風力に力を入れるよう促している。
コペンハーゲンの洋上風力発電所が間近に見える海岸の風力発電機に赴き、すぐ側で発生音を聞いたり、風圧を肌で感じたり、実際に風力発電機の中に入ってメカニズムの説明をいただいた。現在、陸地に5200基の風力発電機が設置されていて、すでに飽和状態となっているため、洋上に順次、設置されており、現在は6地域、さらに2地域に洋上発電所を設置する予定とのことである。1基が概ね2000kWで80期建設されており、トータルで160MWの発電量を誇る。
建設の手法は確立されており、8ヶ月で建設できるのが強みである一方、建設場所の確保と2億7千万ユーロと過大な建設費が課題となっている。
コペンハーゲン近海の20基については、そのうち10基が電力会社所有、10基は個人が株の形で所有する形式となっている。まず、出資する意向のあった8万人から前金を譲り受け、宣伝費を賄う。つぎに3年間で公募を行い、一株あたり570ユーロで4万5千株を発行した。ちなみに、一人当たり平均5株(5株以上持つと税金がかかる)を所有し、8527人となった。これで10基購入することができた。
設置に当たっては、環境アセスメント(ビジュアルインパクト、騒音対策、海流対策、野鳥対策、影対策など)を実施した。20基を一直線に置くという意見もあったが反対も多く、180m間隔で海岸線の曲線にあわせカーブを描くように設置することになった。コペンハーゲンという観光地の近くということへの配慮であり、特に人気観光スポットの「人魚姫」に配慮した。【わが国や本県との相違点として、安定した風を確保できる気象条件とデンマークの風力発電200年の歴史から来る技術とノウハウの蓄積量の差を実感した】
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