見聞知・録 福井県議会議員 西本正俊  

琵琶湖・若狭湾快速鉄道 実現!

嶺南と嶺北の地域間格差 是正!

ドイツ ライプツィヒ メガソーラーパーク視察 9月8日(月)

2008年09月08日 | 見聞知・録
キューセルズ社視察後、ライプツィヒ郊外にあるレスペンハイの「メガソーラーフィールド」を視察した。

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ここは、褐炭の露天掘り炭田跡で、それを埋め立てた敷地面積15ヘクタールの土地に、5万平方メートルのソーラーパネルが設置されていた。東西に長く南向きに建設されたパネル群はほぼ45度に傾けてあり、それを木造の骨組みが支えている。運営しているのは民間企業で、30人の出資者から30億円を集めて建設したとのことである。

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やはり、国の再生可能エネルギー買い取り政策が契機となったのは言うまでもなく、国の20年間買い取り保証期間の中で、10年目で投資額を回収できるらしく、設備には保険も掛けてあり、想定されるリスクは無いと案内してくれたコッホ氏は断言していた。このような大規模な太陽光発電所が随所に生まれており、午前中に聞いた、キューセルズ社の「太陽光発電は近い将来必ず従来の発電方式より安くつくれるようになるとの見通しで、20年から30年後には人類のメインエネルギーになる」という自信を裏付けているような現場であった。

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以上、三つの環境先進国の環境政策やその現場の視察を振り返り思うことは、地理地形、気象条件、産業背景、国民性、政治風土、国家形成経緯など、それぞれの違いはあるが、いずれも国民の環境意識が非常に高く、それを政治家が敏感にかつ確実に受け止め、環境の重大テーマについて国民投票を実施するほど問題の整理と判断を大胆に行い、長期計画を立案して国家挙げて取り組んでおり、国家としての環境に対する位置づけが相当高く、政策においても、環境諸法、税制、補助制度などを組み合わせて国民や自治体が化石燃料や原子力への依存からの脱却志向を必然的にとるようにシステム化されており、さらには電力会社や化石燃料依存業界などの抵抗勢力に対しても政治が断固とした指導力で国民意志に従わせるなど、国民の支持を受けた政治がフルに機能しており、それが例え政権や行政担当者が変わろうとも国家として首尾一貫した環境政策を堅持し続けているところに「環境政策成功の秘訣」と「政治のあり方」を見出せたことが有意義であった。

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ドイツ ライプツィヒ キューセルズ視察  9月8日(月)

2008年09月08日 | 見聞知・録

同じドイツ国内ながら、旧西ドイツのフライブルグから旧東ドイツのライプツィヒまでドイツの新幹線である「ICE」に乗り移動した。

ここには太陽光発電セルの世界トップメーカーである「Q.CELLS(キューセルズ)」を視察した。広報担当のステファン・デートリッヒ氏から説明を受けた。

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キューセルズは2001年からスタートした会社だが数年で急成長し、2007年にはシャープを抜いて、太陽電池セルメーカーとして世界一のシェアを獲得した。シャープや京セラとの違いは、セルという部品に専念している点で、狭く深く研究することで競争力を維持している。そして何より日本のメーカーと違う点は、母国の再生可能エネルギー買い取り保証政策の有無で、それが日本から奪う主因になった。現在では、スペイン、イタリア、韓国も買い取りせいさくを始めたとのこと。ステファン・デートリッヒ氏の話によれば太陽光発電は近い将来必ず従来の発電方式より安くつくれるようになるとの見通しで、20年から30年後には人類のメインエネルギーになるとの自信を覗かせていた。

ケイ砂をアメリカや日本から輸入し、これを結晶化するところから始まる。インゴット(塊、延べ棒)にして、これでシリコンを作り、加工して太陽光セルを作る。ただし、多くの子会社で技術開発をしており、たとえば薄い層のシリコンを作る方法として、膜にガラスを使う「薄膜リボン型」という方法であれば、材料が少なくてすむのでコストを落とせる。ただし、この方法で作ったセルは効率が良くないとのこと。

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世界40カ国に輸出しており、アジアでは香港に拠点を設けている。東京にもセールス専門の部署(中国系のMSKと提携)があるが、日本ではシャープや京セラに押されてシェアは小さい。現在、マレーシアに工場を作っており、将来はメキシコにも作る予定である。こうして世界的な太陽光電池セル企業として成長したいと考えている。

 現在もっとも重要な市場はドイツである。ドイツでの売り上げが全体の30%を占め、残りが輸出となっている。ドイツでは電力の買取保証制度が出来てから市場が拡大している。さきほども述べたように、スペインやイタリア、フランス、韓国なども同様の制度を設けてきているので、今後大きく伸びる市場と見ている。

 会社としては今後、成長することとコストを下げることの2点を追求していく。コストを下げるためには、原料のシリコンが高価であるため、セルを薄くすることがひとつの方法となる。現在、半分ほどの薄さになっているが、今後5年間でさらに半分の薄さにしたいと考えている。ふたつ目の方法が効率を上げることである。2年後くらいには太陽光発電が従来の発電よりコストが低くなるよう努力している。

 会社が発展した要因は、大きな資本が入ったこと、セルを作ることに集中したこと、そして場所が良かったことがあげられる。2000人の労働者を確保しているが、旧東ドイツだったため失業者が多く労働力を確保しやすかった。

 その後、工場でセルを作る工程を視察した。

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第1段階として、シリコンのウエハーを液で洗浄する。その際、傷のついたものは除去する。第2段階として、オーブンで焼いて表面に層を作る。プラスとマイナスの加工をして、電気が通るようにする。第3段階として、層が反射しないように、またオーブンで加工する。シリコントップという塗料を塗って、表面が青くなる。電子が表面に当たって、うまく取り込めるようにする。第4段階は、金属をして表面につける。表を加工したあと、裏も加工する。第5段階では、さらに表面をプレスする。電極が出来て、電気が流れるようになる。

 第6段階は、裏に銀とアルミニュウムをプレスする。第7段階では、もう一度アルミニュウムの加工をして、光が反射して逃げないようにする。第8段階として、もう一度オーブンで焼く。第9段階として、レーザーで角を加工する。いわゆる面取りである。第10段階として、できたものを分類する。試験的に太陽光を出して、電気を起こす数値すなわち品質によって分類することになる。

 現在、1日に5000万枚のセルを生産している。マレーシアの工場ができればさらに多くなる。【他国の勢いある企業を見て、焦燥感の混じった複雑な思いを持ったが、政府の政策により日本企業にも是非挽回してほしいものだ】




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ドイツ フライブルク 池田憲昭氏レクチャー 9月6日(土)

2008年09月06日 | 見聞知・録

フライアムト村から戻り、夜は本日のガイド通訳を務めていただいた池田憲昭から「ドイツの再生可能なエネルギー政策」と題して2時間レクチャーを受けた。

 池田氏は2003年から、環境関連の日独コンサルタント業をされている。
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つぎにレクチャーの内容を記す

 ポスト化石燃料時代の担い手として、再生可能エネルギーと原子力エネルギーが注目されている。これらの一方を選択するか、それとも両方を選択するのか、道は3通りあるといえよう。ドイツは現在、前者が5.6%、後者が12.5%であるが、2002年に脱原発宣言を出した。これは、石炭・褐炭の多くが国内自給できるため、原子力を切りやすかったという事情もある。

 1991年、キリスト教民主同盟の手によって「電力供給法」が制定され、再生可能エネルギーは、その地域の電力会社が買い取らなければならないとする制度が出来上がった。さらに、2000年には社会民主党の手によって法律が改正され「再生可能エネルギー法」となる。太陽光なら50セント、風力なら10セントといったように、価格が設定されている。これは15年くらいで回収できる金額とされており、太陽光はコストが高いため価格設定も高くなっている。また、再生可能エネルギーの買い取り価格を20年間保証する大胆な政策を打ち出して、保守的な農家が投資しだし、銀行もそれを後押して大きな成果を上げた。

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省エネもまた、重要なCO2削減の手段である。ドイツでは暖房が80%を占め、一世帯あたり月々3~4万円、年間50万円にも上る。日本では1980~90年代に省エネを進めたので、産業部門の省エネは世界トップレベルとなっている。しかし、民生部門が劣悪であるため、ドイツの省エネが参考になると思われる。

 特に寒冷なドイツでは暖房費が日本の4倍かかるが、これも再生可能エネルギーで大幅に節減でき、この政策が国民生活にも大きなメリットをもたらすことを知らしめた。

 また、再生可能エネルギーは、大企業の独占を打破し、地方におけるエネルギーの地産地消を実現するもので、なおかつ、省エネリフォーム市場や派生する複合ビジネスを創出し、新たな雇用も地方で生み出した。

 さらに注目すべきは、将来のエネルギー計画では、日本やフランスがエネルギー需要を右肩上がりに予測しているのに比べ、ドイツは右肩下がりでエネルギーの節約を明確にしている。

 EUでもかつて、電力を自由化したことがあった。たしかに一時期、電力の価格が下がったものの、電力会社が淘汰されることによって大企業4社の寡占状態となり、競争が働かなくなって電力価格は上昇している。

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ドイツ フライアムト バイオガスと風力発電視察 9月6日(土)

2008年09月06日 | 見聞知・録

ソーラー住宅などを視察後、午後からフライブルグ市近郊にあるフライアムト村を訪問した。ここは人口4300人の小さな村だが、この村の村長は大変有能な女性で、再生可能エネルギーで税収を上げて村を発展させている。フライアムトととは「自由自治」の意味で、現在もその精神を受け継いでおり、「石油産出国の言いなりにならずエネルギーの自立を目指す」方針を掲げている。この村は村で使う電気の140%の電気を自ら作っている。

 まず、4基の風力発電機があり、これらは住民の投資で作られている。また、150軒の屋根に太陽光パネルがある。バイオガス発電をする施設が3基、小型水力発電機が4基、木質チップを利用したコージェネレーション施設が70軒、牛乳をしぼったあと冷却するときの熱を使って暖房する農家が10軒ある。

 ここでは農家のラインボルトさんからお話をお聞きした。かつては牛100頭と豚を飼っており、肥料としてとうもろこしや牧草を作っていたが、狂牛病が発生してから経営が不安定になったため、牛や豚はやめてすべてバイオガスの生産に使うようになった。

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まず、トウモロコシを茎ごと収穫し、これを漬物のように漬けたあと、動物の糞尿を混ぜて45日間50℃くらいで発酵させ、さらに45日間発酵させてガスを得る。これを燃焼させて電力を作り、電力会社に売ることになる。バイオガスは1990年から作られていたが、法律が変わって買い取り保証が出来てから状況が変わった。法律では1kWあたり10セントで買い取ることになっている。これは10~15年ほどで投資が回収できる価格として設定されているもので、糞尿を混ぜない農作物だけのバイオガス発電であれば16セントとなっている。

 また、余熱で水を温め、近隣の14軒の農家と学校に有料で供給もしている。そのための700mのパイプラインは自分で投資した。さらに、残りかすも近隣農家に肥料として分けている。この発電設備一式への投資額は9000万円、国に保証された売電売り上げは20年間で3億2千万円である。いまでは酪農をやめられ完全な発電業に転換されている。

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つぎに、住民の投資で作られた風力発電基地を訪れた。先述のエアハルト・シュルツ氏も投資家のひとりとなっており、シュルツ氏からお話をお聞きした。

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風力発電施設のうち2基は、2002年に142人の投資家が集まって420万ユーロ(約6億円)をかけて作った。この2基で昨年620kWの電力を生産し、これは2000世帯分の電気にあたる。

 1kWを9セントで買い取ってもらえるため、2基で57万ユーロの収入となる。20年間経てば投資額の350%が収入として入ることが予定されている。

 4基すべてをみると、全部で4年間で6000万kWの電気を作っていることになる。風がやんだり施設が故障すると止まるが、これまで98%の稼働率であった。雷が年間で50回程度落ちるのであるが、壊れることはほとんどない。一度だけ電気関係の修理が必要であった。

 欧州議会では2020年に全電力の13%を。2030には23%を風力発電で賄うよう目標を立てているが、ドイツではすでに14%を風力発電で賄っている。

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ドイツ フライブルク ソーラー住宅視察  9月6日(土)

2008年09月06日 | 見聞知・録
フライブルグの旧市街地視察のあと郊外を訪れ、ドイツ環境自然保護連盟の設立者の1人でもあり、30年来ソーラーエネルギーにたずさわっておられるエアハルト・シュルツさんの説明を受けながらソーラーパネルを利用した家、集合住宅、駐車場などを歩いて視察した。

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1976年、フライブルグでは、ヨーロッパで最初のソーラーメッセを行った。この地には1992年までフランス軍が駐留しており、その跡地を市が買い取って宅地開発している。その中には、30家族分の電気を作るソーラーガレージや、自分たちが使う以上の電気を発電しているプラスエネルギーハウスがある。全国的なディスカウントストアである「アルディ」も、この地域の空間とあわせるために太陽光パネルを設置した。

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ソーラー住宅は、ローフ・ディッシュというソーラー建築家が個人でファンドを組んで作ったものである。屋根一面に太陽光パネルを設置するのはもちろん、ひさしを長くして夏には窓に太陽光が入らないように、冬には太陽が低いため光が入るように設計してある。北側の窓は小さく、断熱材も分厚くするなど、細かい配慮が見受けられた。

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国の法律により54セント(=80円)の20年間買い取り保障がなされている。電気の購入価格は22セントであるので、年間3000~6000ユーロの安定的な収入が得られる仕組みになっている。さらに、購入価格は石油・天然ガスの高騰によって20年後には40~50セントになるとも予測されるため、将来的にはソーラー発電は割安になると思われる。

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ドイツ フライブルク都市政策視察  9月6日(土)

2008年09月06日 | 見聞知・録
ドイツは、ヨーロッパ中部にある連邦制の共和国である。人口8200万人。環境都市として世界的に有名な町のひとつであるフライブルグを歩いて視察した。

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ガイド通訳は、当地で再生可能エネルギーや「黒い森」の林業行政を学んでいる池田憲昭氏で、まず氏からこのまちが空襲で唯一残った大聖堂を中心に中世の街並みを再建する英断を激論の末下した当時の市議会の業績を聞かされ、同じ政治家として深く感銘を受けた。廃墟のまちを近代的に改造するか、それともまちが誕生した900年前の姿に再生させるかの議論で、後者が僅差で勝利して現在の繁栄があるとのことであった。

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また、高度成長の後、商店街の反対を説得して経済一辺倒から環境思考へとの大変換を実施はしたのも議会であった。その結果、フライブルグ市の環境交通政策は旧市街地を面として歩行者専用となり、市民は路面電車か自転車で街中にアクセスするため、結果滞在時間や立ち寄り軒数が増えて商店街の売り上げが伸びたそうで、私たちはこの事例を見て議員として議会が負う後世への責任を改めて痛感したのである。

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また、空き家ばかりで「廃墟通り」と呼ばれた裏通りを再生するために、市がいったんこれを買収して、一階は店舗・二階は住居という条件付で民間に売る方式で見事に再生させた現場も目の当たりにした。

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ストックホルム 環境情報センター視察  9月4日(木)

2008年09月04日 | 見聞知・録

エスキルステューナ市視察後、ストックホルム市に戻り、ハンマビー臨海都市の環境情報センターを訪れ、マーレーナ・カールソン女史からお話を聞いた。<o:p></o:p>

 ここは、かつてストックホルム市が夏のオリンピックを招致するにあたり、環境面での先進性をアピールする目的で企画、建設され、世界で最初のモデルになって他の町を誘導しようという試みであった。オリンピック誘致には失敗したものの、その意思は生き続け、環境に配慮したまちづくりの手本として今日に至っている。人口は現在1万6千人、これを2万5千人にまで拡張する予定である。

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 各家庭から出たゴミは可燃ゴミ、生ゴミ、資源ゴミなどの分別シューターに投入され、それをセンサーで感知し、地下パイプで吸引・収集して、可燃ゴミは燃料としてコージェネ発電所に、生ゴミは下水処理へ運ばれて下水汚泥とともに発酵させて自動車燃料となるバイオガスに、資源ゴミはリサイクル工場にと自動的に循環していく仕組みとなっている。また、下水浄化水は地域暖房施設に送られ各家庭の暖房に、その過程で熱を奪われた冷水はスーパーマーケットの冷蔵・冷凍庫に利用されている。

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エネルギーを効率よく使い、地区で使うエネルギーの50%はその地区で自給することを目標にしており、まさに「エネルギーの地産地消」を実現していた。ちなみに、ストックホルム市の燃料の80%はバイオマスで作られており、スウェーデン全体では70%になる。【エネルギーの地産地消で世界的なモデルになりたいと話されていたカールソン女史の眼は強い意志と誇りを感じさせた】

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ストックホルム コージェネ等視察  9月4日(木)  

2008年09月04日 | 見聞知・録

スウェーデンは、北ヨーロッパのスカンディナヴィア半島にある。人口900万人。今回は首都ストックホルム市の北西150kmに位置するエスキルステューナ市のエネルギー環境会社(市が株式の100%を保有する株式会社)を訪問した。はじめに、地域暖房担当役員のアンダッシュ・ビオルクルンド氏から公社の概要説明があり、スウェーデンの環境政策、市の方針、公社の沿革などについてお話を聞いた。

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同社はエスキルステューナ市が100%株を保有する企業である。電気、暖房、冷房、上下水、ブロードバンド、ゴミ処理など生活全般を扱っており、これらが効率よく環境に配慮されて運営するよう尽力している。従業員400人で売り上げ200億円、そのうち暖房に携わる職員が60人、売り上げは100億円である。

 スウェーデンは気候が寒冷のため、地域暖房を行っているところが多い。同社では3700軒の民家と1300軒のアパート、それから店舗や工場にも暖房を供給している。まず600mmのパイプラインで80℃のお湯を送り出し、民家やアパートには15mmのパイプラインで供給する。たとえば、外気がマイナス20℃だと、70℃くらいのお湯が入っていくようにする。民家やアパートの暖房に使われたあと、45℃の水が同社に帰ってくるという循環システムになっている。石油税(税率45%)が高く設定されているので、概して石油や電気暖房と比べて半分の価格となっている。

 ほかにも、下水汚泥を原料としてバイオガスを作っており、20台の市バスや3~4台のゴミ収集車がバイオガスで運営されている。ガソリンが1ℓ当たり13クローナするのにたいし、バイオガスでは1ℓ当たり8クローナと割安になっている。

 1981年ころまでは、暖房の原料はすべて石油だったが、原子力発電による電気やヒートポンプに置き換わり、近年ではコージェネレーションやバイオガスなどが主流となっている。

バイオ燃料の74%はチップ、18%が樹皮、6%がおがくずなどから作られている。

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 【石油には3つの税金、すなわち炭素税、エネルギー税、消費税がかけられており、石油を使わないような社会へと政策で誘導されている。

 1980年、原子力発電についての国民投票があり、賛成派、反対派、反対だが今は廃止しない派に分かれて議論が行われた。その結果、1997年までに廃止すると結論付けられたものの、コペンハーゲンに近い2基を廃止したにとどまっている。化石燃料をゼロにするためには原子力廃止することは非現実的で、特にスウェーデンは原子力の技術が高いため活用する方向になったと思われる。

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 スウェーデンは将来のエネルギー源をつぎのように考えている。原子力60tW、水力60tW、再生可能エネルギー20tW、合計で140tW。原子力と再生可能エネルギーを共存させる方向と見られる。化石燃料を使用することがいかに「環境悪」なのか。しかも化石燃料を使用して二酸化炭素を排出する火力発電所などがいかに時代錯誤的な二重の環境悪なのかを認識させられた。スウェーデンでは、国も市町も「脱化石燃料」「脱火力」を目指しており、そのため化石燃料使用には重税が課せられており、政治が見事に環境政策をコントロールしている。その基本には、国の環境ビジョンに国民がコンセンサスを寄せて一丸となって長期的スパンで熱心に取り組んでいる強い理念と計画性があった。わが県の環境政策を振り返るとき、県民をひとつにする共有哲学と長期計画の欠如をあらためて認識させられる視察であった】 

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コペンハーゲン洋上風力発電視察  9月3日(水)

2008年09月03日 | 見聞知・録
世界最大規模で名高いコペンハーゲン沖の洋上風力発電所を見学した。デンマークは、バルト海と北海に挟まれたユトランド半島とその周辺の多くの島々からなる北欧諸国のひとつである。人口540万人。今回は首都コペンハーゲン市の発電所を運営する民間で組織された組合(NGOから発生)を訪問し、組合のニルスローン氏からレクチャーを受けた。
 
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コペンハーゲンのあるシュラン島のエネルギー源は、石炭52%、石油・天然ガス18%、バイオガス10%、スウェーデンからの輸入(水力、原子力)10%、風力8%、ゴミ焼却熱2%である。このうち特に石炭を減らしてバイオガスを増やしていきたい。

デンマークでは、風力発電が200年の歴史を持ち、現在は国の発電量の20%を担っていること、組合の出資者は4000人以上おり、毎年10%を越える配当を実現いること、発電した電気は電力会社が全て買い取ることを法律で義務付けていること、それはデンマーク国民の「原子力は絶対に使わない」という意志の反映された環境エネルギー政策である。【その国民の強い意志は約20km離れた対岸に建設されたスウェーデンの原発2基を運転停止に追い込んだ例は、その民意を政治家がしっかり受け止め環境政策および外交成果として実績を上げている様は、民主主義の原則である「主権在民」の典型を目の当たりにしたようであった】

1800年代に電気化されたときに、120の小型発電所が造られ、そのほとんどが風力発電であった。しかし、風が吹かないと発電できない一方で、蒸気を用いた発電は安定しているため消滅に向かった。第二次世界大戦のとき、蒸気発電の原料確保に行き詰まったため、臨時に170の中型風力発電所が建てられるが、戦争終了とともに消滅した。戦後1957年、政府が資金を出して200kWの世界最大規模の風力発電所を建設した。石油ショックを受けて、アメリカがデンマーク製の風力発電所を設置したが、これは航空会社が開発したものでコストがかかりすぎて頓挫した。他方、デンマークでは個人が開発したため、コストの問題が生じなかった。現在は世界の風力発電機の1/3がデンマーク製である。

前述のように、電力会社は風力での電気を買うことが義務付けられている。また、ケーブル設置の経費も電力会社が負担するため、国民に風力発電機を建てるインセンティブが与えられている。また、国民の7割がさらに風力に力を入れるよう促している。

コペンハーゲンの洋上風力発電所が間近に見える海岸の風力発電機に赴き、すぐ側で発生音を聞いたり、風圧を肌で感じたり、実際に風力発電機の中に入ってメカニズムの説明をいただいた。
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現在、陸地に5200基の風力発電機が設置されていて、すでに飽和状態となっているため、洋上に順次、設置されており、現在は6地域、さらに2地域に洋上発電所を設置する予定とのことである。1基が概ね2000kWで80期建設されており、トータルで160MWの発電量を誇る。

建設の手法は確立されており、8ヶ月で建設できるのが強みである一方、建設場所の確保と2億7千万ユーロと過大な建設費が課題となっている。

コペンハーゲン近海の20基については、そのうち10基が電力会社所有、10基は個人が株の形で所有する形式となっている。まず、出資する意向のあった8万人から前金を譲り受け、宣伝費を賄う。つぎに3年間で公募を行い、一株あたり570ユーロで4万5千株を発行した。ちなみに、一人当たり平均5株(5株以上持つと税金がかかる)を所有し、8527人となった。これで10基購入することができた。

設置に当たっては、環境アセスメント(ビジュアルインパクト、騒音対策、海流対策、野鳥対策、影対策など)を実施した。20基を一直線に置くという意見もあったが反対も多く、180m間隔で海岸線の曲線にあわせカーブを描くように設置することになった。コペンハーゲンという観光地の近くということへの配慮であり、特に人気観光スポットの「人魚姫」に配慮した。【わが国や本県との相違点として、安定した風を確保できる気象条件とデンマークの風力発電200年の歴史から来る技術とノウハウの蓄積量の差を実感した】
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