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引っ越しのたびに蔵書の山に悩む主婦…
最近は二匹の猫の話題ばかりです

『波間に眠る伝説』

2006年11月27日 | 

『波間に眠る伝説』アイリス・ジョハンセン ソニーマガジンズ 2006

海洋生物学者のメリスは、カリブ海の小島で、二頭のイルカと共にひっそり暮らしていた。過去に受けた心の傷はいまだに癒しきれず、孤独を好んでいたが、養父ロンタナを乗せたヨットが目の前で爆破された事件を契機に、非情な暴力と陰謀の影が彼女を追い詰めていく。ロンタナと同じく、伝説の“マリンス”を探していた富豪の探検家ケルビーは、その鍵を握るメリスに協力を求めて、謎に挑もうとするが…。

<以下、少しのネタバレも×という方は読まないで下さい>

アイリス・ジョハンセンの現代物は、結構好きだったりします。
実のところ、数冊読めばパターンは見えてしまうのですが…
(またヒロインの周辺でバタバタ人が殺される、とか、
この辺で裏切り者の正体が分かるぞ、とか
波乱万丈な(ホントに大風呂敷!)展開が、
ハリウッド映画のような力強さでラストまで興味を惹きつけます。

そう、設定は大胆だけど、やがて悪者は退治され、
ヒロインとヒーローは無事に結ばれる、という…
ある意味時代劇のように予定調和の世界なので、
柔道の達人に一本背負いをしてもらえる時のように、
安全保障付きのドキドキが味わえるのです。

また、作中世界が微妙につながっているらしく、
脇役がいつか別の小説の主役になって登場したり、
ヒロインたちのその後がさりげなく窺えたり…といった、
同作者の作品を読み続ける楽しさもあって、
わたしの本棚には文庫本がぞろぞろ並んでいます。

今回は『風のペガサス』(上下巻・二見書房)と、
『その夜、彼女は獲物になった』(ソニーマガジンズ)にも
登場した、メリスが主人公。
トラウマを持つ美貌のヒロインというのは、
ジョハンセンの定番なのだけれど…。
『そしてさよならを告げよう』(ソニーマガジンズ)と
同じくらい悲惨な体験すぎて、
呑気に読み飛ばすことが出来ませんでした。
メリスが克服しかけていても、読者の側で胸が痛くなるよ。
(この話、男性恐怖症気味の方にはおすすめしません)

ヒーローは元米海軍特殊部隊員、ケルビー。
統計を取ったことはないけれど、
ハーレクイン風サスペンスに登場するヒーロー像には、
なんとなーく偏りがあるような気がします。
何故か①王族かお金持ち②元軍人か刑事③インテリ、
といった人たちが多い感じ。(もしくはこのうち2つか3つ兼ねる)
ケルビーは考えてみたら全部当てはまる。
さすがハーレクイン作家出身、王道を外さない(笑)。
まあ、強くて賢くてどえらい資産もあったら、
強敵に追われるヒロインを充分支えられるから、
当然といえば当然かもしれないですね。

しかしジョハンセンのヒロインはしんが強く、
ヒーローを愛しても腕の中でただ守られてはいません。
自ら前面で戦うことを選ぶような女性ばかりです。
なよなよしてなくて格好いいのだけど、
復讐は我が手で…という所はやや米国的な印象。
(真相にたどり着いたら、さあ警察や司法に任せよう、
という発想ではないらしい。やむを得ない状況とはいえ、
大概悪者を自ら裁いてますね。
自分の身は自分で守る、という感覚なのかも)

今作で一つ腑に落ちないのは、メリスの危機なのに、
あのケマルの扱いが小さすぎること。
それはないよー、と呟いてしまいましたが。

わたし的にまとめれば、
サディスティックな脅迫者に憤りながらも、大海原に恋がはじけて、
イルカも元気(?)というお話でした。
大好き、イルカ!

・:*:・゜’★,。・:*:・゜’☆・:*:・゜’★,。・:*:・゜’☆・:

ジョハンセンの作品で一番注目しているのは、
複顔彫刻家イヴ・ダンカン・シリーズ。
『失われた顔』『顔のない狩人』(二見書房)
『嘘はよみがえる』(講談社)の他に、
現在未訳が2作あるらしいです。
早く読みたいな…と期待を募らせているのですが、
どの出版社からいつ邦訳が出るのか、全く予測できません。
他にも楽しみにしているシリーズものの続編があるために、
毎月各出版社HPの新刊・近刊予定をチェックするわたし。
…新刊文庫情報自動配信サービスって、ないものか。
(いや、「ダ・ヴィンチ」を購読しろって話か




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2 コメント

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まとめにウケました! (アンニカ)
2006-11-30 10:40:41
大好き、イルカ!がツボでしたよ~

予定調和の安全なドキドキ、分かります!
愛の言葉を残してヒーローが死んじゃったりすると「反則!!」ですよね。
ヒーローもたいてい桜雪さんの考えたカテゴリーの人々ですよね
そして、肩幅が広い・日焼け由来のシワあり(ヒロインにはある時から魅力的に見えてくる)って人が多い気が…
返信する
とりあえずイルカ! (桜雪)
2006-12-01 11:36:02
人間たちの騒ぎはともかく、イルカが可愛かったという印象です(笑)。

ハーレクイン風のお話は、ハッピーエンドじゃないとがっかりしますよね!
いろいろあって陰謀に巻き込まれたおかげで、周囲の人が大変な目にあっても、ヒーローとヒロインだけは無事に結ばれるのがお約束。だから安心して、物語に没頭できるのでしょう。
心の準備が必要なので、サスペンスの味を前面に出すなら、予測不可能とか驚愕のラストなどと、帯に書いておいて欲しいくらい。

そうそう~!ヒーローはわりとマッチョ系の外見が多いですよね!ヒロインは最初反発するけど、すぐに惹かれるんだ。
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