毎月一回地域金融機関向けの雑誌に小文を書いている。締め切りは月末なのだが、今までは余裕を見て20日頃には寄稿していた。しかし今月は金融市場が落ち着くか落ち着かないか見極めが難しく中々筆を取る気にならない。月刊誌に寄稿する難しさは「食べ頃読み頃の記事を届ける」ことにあるのだろう。今起きていることを書くのではなく、今起きていることが1,2ヶ月先にどの様な影響を与えているかを想像して書くということは楽しいが、一方乏しい予見能力を絞るという苦しみがある。
実際この雑誌の4月号には「バブルの予兆はあるのか?」という題の投稿をしてバブル発生の可能性を述べたが、現在起きている現象を総て的確に予測し得た訳ではない。予見ということは難しいと思う次第だ。
今の瞬間、私にとって予測し難いことは「連銀の窓口貸付強化政策が短期金融市場の混乱を抑えられるか?」ということである。先週末連銀は公定歩合を0.5%引下げるとともに、銀行に対する有担保貸付期間をオーバーナイトから30日に延長した。これは概ね好感されていると思うのだが、投資家の安全指向が勝っている様にも見える。この綱引きを見極めるにはもう少し日数が必要だ。
投資家の短期国債へのシフトは凄まじく、昨日(月曜日)3ヶ月国債は66bp、1ヶ月国債は62bp利回りが低下した。その前にそれぞれ利回りが125bp、175bp低下しているがこれは1987年のブラックマンディ以上の瞬間的な金利低下である。この国債金利の急速な低下は2兆7千億ドルという巨額の資金を抱えるマネー・マーケット・ファンドがABCPを敬遠して国債に逃避したことによる。
欧州では月曜日にABCPの8割がリファイナンスに失敗した。ただ事情通の話ではドイチェバンクが、連銀の新しい貸付条件を利用して資金調達をしたということだ。ドイチェバンクの狙いは何だろうか?連銀に協力姿勢を示すことだけではあるまい。そこに収益チャンスを見出したのではないだろうか?
ここは実は邦銀にとって、10年か15年に一度の大きな儲けのチャンスなのである。もし資産担保証券の本当の価値を見極める力がある邦銀が「投売りされている資産担保証券」を買い漁ると相当儲けることができる。
しかし邦銀にその勇気があるかどうかまで判断することは容易でない。従って今将来のことを予見する記事を書くことは中々難しいのである。
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