昨日(3月29日)のFTは、中国の国家年金基金である「全国社会保障基金」の戴相竜(Dai Xianglong)理事長が欧米への投資を拡大すると述べたことを報じていた。色々な情報を持っている大きな機関投資家の動きをフォローするのも一つの投資手法とすると、全国社会保障基金の理事長の意見は参考になる。
全国社会保障基金の規模は7,770億人民元(約10兆円)だから、日本の公的年金(GIPF:年金積立管理運用独立行政法人)の資産規模(122兆円)の約10分の1だ。だが社会保障基金は拠出額を増やし、向こう5年間で倍以上の2兆元まで拡大する予定だ。
戴相竜理事長は米国の経済見通しに強気の見方を示し、「5年で輸出を倍にするという目標を達成できるだろうし、時間はかかるが米国経済は金融危機から回復を続けるだろう」と述べている。また欧州については「国の債務の問題は悪くはならないが、欧州の社会保障システムは多くの国にとって経済の重荷となり成長の足かせになるだろう」と述べた。
戴相竜理事長はまたインドや他の高度成長国にも投資機会を求めたい、特に直接投資やグローバルなプライベート・エクイティに興味があると述べている。
昨年末の社会保障基金の海外投資比率は約6.7%だが、これを20%まで引き上げるマンデートがあるという(因みにGIPFの海外資産比率は19%程度)。中国は人口のピークに達し、向こう数十年間で急速な高齢化が進むので、社会保障基金は国民年金のラストリゾートになるので、しっかり投資収益を稼ぐ必要がある訳だ。因みに同基金は2008年には6.8%のマイナスになったものの、09年度は16.1%のリターンを上げている。
なお元人民銀行総裁であった戴相竜理事長は「米ドルがリザーブ・カレンシーの立場にとどまることを期待している。人民元は長期的には上昇するだろうが短期的には安定している。株価が上下することは当たり前のことだが、2010年は難しい年かもしれない」と述べている。
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極めて個人的な意見だけれども、中国の全国社会保障基金のような投資家には、相当脂っこい情報も集まっていると思っている。
中国はインサイダー情報の国である。一例を上げると中国で大きな成果を上げているプライベート・エクイティ・ファンドにNew Horizon Capitalというファンドがある(ドイチェバンク、JPモルガン、シンガポールのTemasekなども参加)。このファンドには温家宝首相の息子Winston Wen氏が参加している(いわゆる太子党)。機微情報の入手や規制の裏をくぐる上で極めて有効であることは想像に難くない。当然海外の機微情報なども有力な投資銀行等から流入していると考えて良いだろう。
私は社会保障基金が米国に楽観的なビューを持っているということは注視しておいて良いと考えている。
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