昨日(1月9日)の米国株は好調で3市場とも高値を更新した。市場全体をカバーするS&P500は年初来6日間続投で、これは1964年以来のことだとWSJは報じている。
何十年ぶりについては、最近何十年ぶりの豪雨だとか寒波だとかあまりありがたくない話が多いが、このような話は歓迎である。もっとも余り早く走り過ぎると息切れするので、オーバーペースも困りそうだが。
走るペースについて世界経済を見ると、ほぼ現在のペースは能力一杯一杯のところに近づいてきた。
世銀はGlobal Ecomomic Prospects レポートで「今年は2008年のリーマンショック以降初めて、世界的な需給ギャップが埋まる年になるだろう」と述べている。
世界的に見ると資源輸出国では依然として需給ギャップはマイナスだが、先進国の一部では既に持続的な生産能力を上回る勢いの需要が発生し始めている。
生産能力が需要を上回っている時は物価上昇圧力がほとんど発生しないから、デフレ・ギャップという。逆に需要が生産能力を上回る状況が続くと物価上昇圧力が高まるので、インフレ・ギャップという。この言葉も10年ぶりに現役復帰する日が近そうだ。
需給ギャップを改善してきたのは世界の経済成長率の改善だ。世界銀行は、世界経済の成長率は2016年の2.4%から昨年の3%へ改善し、来年の成長率は3.1%と予想している。
一方走るペースに体力がついて行っていないリスクも高まっている。それは各国で進む高齢化であり、先進技術や技術習得に対する投資不足であり、財政赤字の拡大である。日本の場合は「日銀のETF購入」という強力なペースメーカーの存在もリスクの一つだ。
インフレの足音が聞こえると中央銀行は金融政策の引き締め転換速度を速める。これは株式市場の強気相場の幕引きとなるだろう。
とはいうものの当面目立った悪材料はなさそうだから、株価はしばらく高値を追いかけそうだ。
北朝鮮問題は懸念材料の一つだったが「南北対話」が北朝鮮のピョンチャン・オリンピック参加の方向で動いているから3月頃までは軍事的緊張が高まるリスクは低そうだ。
だがオリンピック・パラリンピックが終わった後、北朝鮮は時間稼ぎの「良いとこどり」をしただけということが明らかになり、米国と北朝鮮の緊張が再び高まるのではないかと私は感じている。
以上のようなことを考えると物価リスクと地政学的なリスクが顕在化しそうな3月上旬頃に相場に大きな動きがでるかもしれない。そしてもし多くの人がそう感じてリスクヘッジの動きをとると、転換点は前倒しになるとも私は感じている。
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