リーマン・ブラザースの破綻から1年たった。正確にいうと9月15日が一周忌だ。その日私が長野から新幹線に乗った時「リーマン・ブラザースが連邦破産法申請、バンクオブアメリカがメリル・リンチを買収」というテロップが流れたことを思い出す。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」という諺があるが、サブプライム・バブルの苦さがたっぷり残っているのに、もう次のバブルが話題に上っている。
ニューヨーク・タイムズにThis bubble is differentという記事が出ていた。一つのバブルが一段落すると、人々は新しい収益チャンスを求め「今回のバブルは違う」と主張するという意味だ。まだ読んではいないけれどハーバード大学の経済学教授ケネス・ロゴフ氏が新しい著書(This bubble is different)の中で「国債バブル」に警鐘を鳴らしている。
金融危機回避と恐慌回避のために政府により投下された多額の資金が今より高いリターンを求めて市場を騒がせている・・・というのが最近の金・原油あるいは国債高の原因だろう。
ロゴフ教授は「巨大な政府の借金は主要国を持続不可能な財政政策に導いている。今のところ中国などの貯蓄で債務国はファイナンスを受けているが、もし投資家の自信が揺らぐとすると極めて大きな長期金利の上昇に面するだろう」と警告を発している。
タイムズはロゴフ教授の言葉を紹介している。「カリフォルニア州を見なさい。カリフォルニアは信じがたいほどリッチだけれど、彼らは税金を払うことなく多くのサービスを望んでいる。信じられないほど豊かだが、なお破産することがありうるという訳だ」
24日から始まるG20では、次なるバブルの発生を防ぐべく、色々な議論がなされるだろう。しかし新しいルールを導入しても人間の欲望を打ち負かすことは難しいだろうと経済学者達は述べている。何故ならバブルで成功すると簡単にお金持ちになれるからだ。
「短期間のパフォーマンスをベースにした報酬体系を改めないかぎり、過度のリスクテイクをする風潮は改められない」と主張する人は多い。特にフランス・ドイツはこの考え方だ。一方英米はルールを厳しくすれば報酬にまでくちばしを入れることはないだろうという考え方が強い。
住宅指数で有名になったシラー教授は「つまるところバブルは人間的な現象である。人々は少々頭が狂っている」とややさじを投げたコメントを出している。