金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

Take for granted (イディオム・シリーズ)

2009年09月03日 | 英語

時々私のブログの読者から「イディオム・シリーズなんて読む人いるのですか?」という質問を受けることがある。楽しみにして読んでいる人がいるかどうかは知らないが、検索エンジンから入ってくる人もいるようだから、多少は役に立っているのではないか?と私は考えている。さてTake for grantedだがこれは「当然のことと思う」という意味とそれから発展して「当然のこととしておろそかにする」という意味がある。

ニューヨーク・タイムズに次の文章が出ていた。In recent years, many Japanese have thought the United States took the relationship for granted, paying more attention to China. 「最近多くの日本人は米国は日米関係を当然のことと考えおろそかにして中国により大きな注意を払っていると考えている」

この一文は政権を取ることになった民主党が日米関係の見直しを示唆したことに対する日本エキスパートの分析の中に出てくるものだ。日本人がこのように考えた理由の一つに新しい駐日米国大使に知日派として著名で政府高官を務めたジョセフ・ナイ氏ではなく、大統領選に多額の献金をしたジョン・ルース氏を選んだことがあるとタイムズは説明している。

日本の民主党が日米関係でどのよな出方をするか?ということは、イラン、アフガン、北朝鮮などで頭に痛い問題を抱えているオバマ政権に頭痛の種を増やすものだが、タイムズは日本エキスパートのマイケル・グリーン氏や日本の外交評論家・岡本行夫氏の意見を紹介しながら「まあ、そう心配しなさんな」と説明を行っている。そして言外にアメリカはこれまで何でも言うことを聞く日本を当たり前のように思ってきたけれど、これからは日本も少し変わるだろうから、慎重な対応が必要だと述べている訳だ。

それにしても米国の識者を相当苛立たせたのは、鳩山代表が日本の雑誌に書いた米国流市場原理主義主義に対する批判がニューヨーク・タイムズに紹介されたことだ。ただこれについてタイムズはこの記事では「あれは選挙運動中の大袈裟な言葉 rhetoricだし、鳩山代表を一生懸命弁解しているから理解してやれ」というようなことを書いている。正確にいうと「鳩山氏はback-pedalingしているように見える」と表現している。Backpedalとは自転車の逆漕ぎのことだが、前言撤回とかやったことをご破算にするという意味なのでミットモナイ話だが。

記事は岡本行夫氏の「民主党は選挙で勝ったからといって、日米関係を変えるような付託を国民から受けていない」という言葉で結んでいる。

☆   ☆   ☆

思うにそれぞれの国や文明には「これだけは譲れない」というコアの理念・価値観がある。米国の場合は「自己責任」とか「市場主義」というものがそれにあたる。それは政権が変わろうと変えることの出来ない普遍的価値なのである。それはイスラム諸国においてコーランの教えが絶対的基準であるように。日本の場合何が普遍的価値なのだろうか?議論を呼ぶかもしれないが、私は象徴としての天皇かな?と思っている。あるいは「日本人であること」そのものが価値なのかもしれない。他国の人はその国のコアとなっている価値観には十分敬意を払う必要がある。まして市場主義は程度の差こそあれ真の世界標準なのである。

現在先進国、発展途上国を含めて行き過ぎた市場主義に歯止めをかけようとする動きはあるが、市場主義そのものを否定するという考え方はない。そういう意味では「市場主義」は米国のコア理念であるとともに世界共通基準でもあるのだ。

政権党である民主党はそのことを良く理解する必要がある。自転車の逆漕ぎは国内外の信頼を失うから。

コメント (1)
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