弁理士法人サトー 所長のブログ

弁理士法人サトーから法改正や事務所の最新情報を提供します。

鳥貴族事件の別視点

2015-04-28 13:53:05 | ちょっとひとやすみ
先日のブログで記載した「鳥貴族 vs.鳥二郎」の件、このブログでの反響も大きく、多数閲覧して頂きました。

この件について、事務所内でも自由に話をしたのですが、その中でちょっとおもしろい意見がありました。
今回の事件は、まだ決着がついたわけではありませんが、「誰が得したのか?」という視点での意見です。

おもしろい意見の一つは、「鳥二郎の広告宣伝戦略は大成功」というものです。
つまり、今回の事件で「鳥二郎」は、「鳥貴族」から訴えられたおかげで、広告宣伝をしなくても、テレビのニュース、ワイドショー、新聞まで大々的に取り上げられました。関西の一部の地域でしか知られていなかったと思われる「鳥二郎」は、ニュース、ワイドショー、新聞のおかげで日本中の多くの人に知れ渡ったのではないでしょうか。そして、おもしろがった人たちは、「鳥二郎に行ってみる?」と積極的に足を運ぶようになったのでは。そして、味やサービスにも不満がなければ、リピータにもなってしまったり。
そうすると、「鳥二郎」にとっては、ほとんど宣伝費を使うことなく、マスコミが勝手に騒いでくれたおかげで簡単に全国区の知名度を手に入れることができた、ということになるわけです。
もし、「鳥二郎」がここまで考えていたとすると、相当のプロモータがいるのでしょう。ステルスマーケティング(ステマ)もここまでくると、脱帽?!

一方、今回の事件、「鳥貴族」の立場からすると、いわゆる「トレードドレス(一例:西松屋事件)」の過去の判断を参考にしても、なかなか有効な手立ては思いつかなかったのではないでしょうか。それでも、「鳥貴族」のファンからは、「似ている」とか「間違えてしまう」とかの苦情を受けていたことでしょうから、「鳥貴族」としては顧客の意見を無視することができず、やむやまれず争いへ至ったのではないかと推測したりします。
とはいえ、こちらもマスコミが騒いでくれたおかげで宣伝になったのでは。
ちなみに事件が報道された週の週末に「鳥貴族」に行ってみましたが、午後6時には待ち客が出るほどの盛況でした。やっぱり宣伝効果?

知財専門家の立場として知財軽視を看過できないのは当然ですが、視点を変えたとき、知財の成功がビジネスの成功とはいえないところに難しいものがあります。

これは、「標準化」と「ビジネス」でも同じようなことがいえます。
知財戦略は、ビジネスでの成功があってはじめて成功といえるのでしょうね。


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ゴールデンウィーク事務所休日のご案内

2015-04-24 13:51:32 | 事務所情報
4月末から5月にかけてゴールデンウィークです。

今年、サトー国際特許事務所は、カレンダー通りの営業です。
4月30日(木)、5月1日(金)は通常通り営業します。



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鳥貴族 vs. 鳥二郎

2015-04-21 16:44:54 | 知財関連情報(商標)
本日のニュースで「鳥貴族」が「鳥二郎」を提訴したと話題になっていました。
僕も焼き鳥が好きで安価でボリュームのある「鳥貴族」にはよくお世話になっています。「鳥貴族」は、国産鶏を使い、メニューの全品が280円と統一されているのも安心です。

そんな「鳥貴族」が「鳥二郎」に対してロゴや店舗のデザインなどが類似しているとして訴えたというのが今回のニュースのようです。
まず、「鳥貴族」の看板といえば、黄色の背景に赤文字でデザイン化された「鳥貴族」の文字が描かれています。一方、お世話になったことはありませんが、「鳥二郎」は、えんじ色の背景に黒文字でデザイン化された「鳥二郎」の文字が描かれています。
商標的な観点から、これらの2つの比較すると、「類似」とはいえません。弁理士として、「鳥貴族」が有名な現状でお客さんから「鳥二郎」を提案されたとしても、商標的には「登録なる可能性が高いですよ。」と答えるでしょう。

ところが、今回の問題は、この看板の問題に限らないようです。「鳥二郎」は、「じゃんぼ焼き鳥」とのロゴ、生ビールの「うぬぼれ生」、お店の内装、それから店員の服装など、ブランド全体として「鳥貴族」のコンセプトに類似しているようです。「鳥二郎」に行ったことはないので、詳しいことはわかりませんが。

以前のブログ記事でも紹介しましたが、「ブランディング」は、「あいさつ」、店舗の雰囲気、メニュー、食器、サービスする店員の雰囲気(服装も含む)などなど、お店に入った瞬間から五感に訴えるものとして構築されています。ユーザの立場では、お店のコンセプトが似ていると、「姉妹店?」、「セカンドライン?」などと思ってしまうのが一般的でしょう。
そうすると、今回の問題は、「鳥二郎」側に故意にだます意図がなかったとしても、「鳥貴族」がブランディングによって長年育て上げた「ブランド」のオコボレを頂戴しようとしていたのではないか、と考えられそうです。いわゆるフリーライドです。

今回の問題では、不正競争防止法2条1項2号の「他人の著名な商品等表示の使用等」に該当するかどうかが問題になるでしょう。

訴えた事実だけでは双方の主張が分かりませんのでこれ以上の判断はできませんが、「鳥貴族」も「鳥二郎」も関西発祥ということですから、はじめは「面白い恋人」と同じような「シャレ」のつもりだったのではないでしょうか。誤解を恐れずに言えば、お笑い好きで「シャレ」が好きな地域性といえそうです。

どの業種でも人気が出てくると、正当、不当に限らず必ずこれをマネする競業他者が出てきます。一店舗程度でマネをしている分には見逃してしまうのでしょうが、競業他社が多店舗に展開しだすと問題となるのでしょう。

そこで、やっぱりブランドは、人気が出る前から知財による適切な保護が必要となってきます。
そんな「ブランディング」を検討中のあなた、サトー国際特許事務所までご相談下さい。
最後はうまく宣伝に結び付けることができました!

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標準化がビジネスを妨げた事例

2015-04-17 11:56:54 | 知財関連情報(特許・実用新案)
先日のTBT協定のブログでもちょっと紹介しましたが、「Suica」は進め方を一歩間違うと導入できない可能性もありました。これは、TBT協定の政府調達に関する規定による例です。

この例に限らず、実は国際的な標準化がビジネスを妨げた事例は散見されるのです。
身近な例では、洗濯機があります。
最近ではあまり見かけなくなりましたが、以前、洗濯槽と脱水槽とが別々になった二槽式の洗濯機がありました。この洗濯機は、洗濯槽で「洗い」と「すすぎ」を行ない、脱水槽で遠心力を利用して「脱水」するものです。
日本のメーカが手がけていた二槽式の洗濯機(以下、単に「洗濯機」)は、脱水槽に外蓋と内蓋とが設けられていました。脱水槽は、濡れた洗濯物を遠心力で脱水するものですから、比較的高速で回転します。そのため、ユーザが不用意に手を入れたりすると、大けがのモトにもなっています。そこで、日本製の洗濯機では、外蓋と内蓋との二段構えにすることで、外蓋を開けても内蓋が待ち構えて手を突っ込めないようになっています。そして、外蓋を開けると、ブレーキが掛かり、内蓋を開ける頃までには脱水槽の回転は安全な速度まで低下又は停止するという安全装置を備えていました。
これはこれで十分に安全性が確保されていたと思います。

日本のメーカは、国内の市場が二槽式から一槽式の全自動洗濯機へ移行しつつあったことから、二槽式の販路を海外、特に安価な製品が好まれる途上国への輸出を目指しました。
ところが、この洗濯機を海外へ輸出することはできませんでした。

ここで立ちはだかったのが「国際標準」です。国際標準では、「脱水槽の蓋は脱水運転中に開いてはいけない。」という規格になっていたのです。日本の洗濯機でも安全性の確保ができているのですが、脱水運転中に外蓋を開けることができます。
製品を輸入する国や地域によっては、国際標準の規格に合致しない製品の輸入を制限することもできます。
そのため、国際標準の規格に合致しない日本の洗濯機は、輸出が制限されてしまうというビジネス上の被害を受けてしまいました。

知らず知らずのうちに、国際的な舞台では、自国の企業などに有利となるように国際標準化の動きが進められています。国際化が拡大する一方の昨今、早めに動向を察知し、自社のビジネスが国際標準によって妨げられないように情報収集することも重要となってきています。


今時、なかなか二槽式の洗濯機のイラストはありませんね。一槽式です。
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ブランディングによる価値の創造-近大マグロ

2015-04-13 16:02:08 | ちょっとひとやすみ
あなたは「天然」の魚と「養殖」の魚とどちらが好きですか?
という問に対して、多くの人が「天然モノ」と答えるのではないでしょうか。
一昔前では、養殖魚というと「脂がくどい」とか「独特の臭いがニガテ」とか、敬遠されたものです。今でも、スーパーの魚売り場では「天然魚」と大きく表示されますし、回転寿司でも「天然モノ」と特別扱いです。
地域団体商標でも、「関サバ」や「関アジ」などが登録されていますが、もちろん商品は天然モノです。他にも「氷見寒ブリ」などが地域団体商標を目指しているようですが、こちらも天然モノです。

ところが、最近、この「養殖モノ」の魚をウリにしている、裏を返すと「養殖モノ」の魚しか提供していないにも関わらず、人気爆発中のお店があります。
ご存知の方も多いと思いますが「近畿大学水産研究所」、そう「近大マグロ」で有名な近畿大学のお店です。
このお店は東京の銀座と大阪の梅田にあり、どちらも予約が取りにくいお店として知られています。
本来であれば「養殖モノ」として消費者から「天然モノ」よりも格下に見られやすい商品を、「近畿大学水産研究所」や「近大マグロ」としてブランディングすることにより、従来の「養殖モノ」では考えられない商品の価値を創造しているのです。「近畿大学」という学校名と、「マグロ」という魚の名前とを組み合わせるという一見すると無茶なネーミングで消費者に大きなインパクトを与えることもできています。
このお店のお客さんは、わざわざ「養殖モノ」を食べたくてやってくるわけです。最初は興味本位かもしれませんが、食べてみると「天然モノに負けないね。」という印象を持てばリピーターになり、口コミでお客を増やしてくれるかもしれません。
そして、養殖モノは、飼育が管理されていますから、いつでも安定した高品質の商品を提供できるという商品的な強みもあります。その結果、「天然モノ」に負けない強力なブランド力を獲得したのではないでしょうか。

このように、ブランディングは、従来では考えられなかった価値を創造することもあります。
ちなみに、大阪の「近畿大学水産研究所」でこの「近大マグロ」をはじめとする養殖魚を食べてみましたが、天然モノと違いがわかりません。
天然マグロは一部を除き遠い外洋で捕れた魚を冷凍で運んでくるわけですから、近海で養殖され冷凍されていない養殖マグロは十分に競争力があるのかもしれません。
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