弁理士法人サトー 所長のブログ

弁理士法人サトーから法改正や事務所の最新情報を提供します。

司法制度改革の犠牲者

2015-05-29 16:42:51 | ちょっとひとやすみ
今回は、ちょっとした問題提起です。

今朝の日経新聞の社会面に、「新人弁護士かすむ未来」という記事がありました。その記事には、司法試験をパスしたにもかかわらず、生活もままならない弁護士の話が載っていました。

さて、問題となっている司法制度改革は、司法試験3000人/年の大量合格を目指しただけでなく、私たち弁理士の世界にも大きな影響を与えました。比較的大きな影響があったのは、「知財高裁」の設置や、弁理士が特定侵害訴訟で代理人ができるようになった、ことでしょうか。
とはいえ、知財高裁が設置されてもいろんな背景で知財訴訟は激減し、特定侵害訴訟で代理人となる場面もほとんどありません。今思えば「絵に描いた餅」です。

まあ弁理士が受けた影響はさておき、本題の3000人/年合格による犠牲者の話です。
司法試験に合格すると、判事や検事となる資格を得るのですが、判事や検事の定員は改革の前後でほとんど変わりませんので、この大量に合格した司法試験合格者の多くは弁護士になるわけです。
この大量の弁護士を生み出す論理構成は、「日本でも、欧米(特にUS)と同様に潜在的な訴訟需要があるにもかかわらず、弁護士が不足しているから需要に応えられていない。」とか、「弁護士費用が高いので訴訟に踏み切れないから、弁護士が増えると競争で価格が下がるので訴訟が増える。」といったものだったように思います。
反面、弁護士の急増によって質が低下するのではという懸念に対しては、「質の低い弁護士は競争によって経済原理で淘汰される」ということで、懸念に及ばないというものだったような。
要するに、日本の弁護士も、欧米(特にUS)と同じように競争原理を導入することで、高止まりしている弁護士費用の低減と、切磋琢磨による質の向上が図られる、というバラ色の構想でした。

結果は冒頭の通りです。それでも、当時、US的な市場経済的競争主義を標榜していた方々は、これは競争によって生じた淘汰であって、適正な競争が行なわれた結果だと反論するでしょう。

ところが、この競争によって犠牲となったのは、淘汰された弁護士だけなのでしょうか?
大量の合格によって、不幸なことに弁護士として資質に欠ける方も合格者に含まれていたことでしょう。この資質に欠ける弁護士は、淘汰されるまで仕事を続けます。その間の顧客は、やっぱり犠牲者ではないでしょうか。

最近の議論を見ていると、司法試験の合格者を3000人/年から1500人/年に削減するとか、食えない弁護士の救済のような視点での改革ばかりが目立つ気がします。これに対して、これまで大量に市場に出回った「食えない弁護士」によって割を食ったユーザの視点は欠けているように思えてなりません。

今のところ「弁護士」、「会計士」、「弁理士」といった士業ばかりに焦点が当たっていますが、これを「医師」と置き換えると、国家資格の意義は競争とは違う形での淘汰を設計すべきように思うのですが。
今、医師不足を賄うために医療制度改革で医学部定員の増加がすすめられているようですが、人の命を扱う医師は士業以上に「倫理感」や「滅私奉公」が求められると思います。これを市場原理に晒すのが本当に正しい「競争」なのでしょうかね。

司法制度改革の当時、声高に「市場原理」、「競争社会」、「自己責任」を叫んでいた当事者は現在の状況を、やっぱり「負けた方が悪い」、「見る目がない」と思っているのでしょうかね。

あ、誤解のないように言っておきますが、僕自身は、競争を否定しませんし、護送船団・ぬるま湯体質の業界はいずれ社会からはじかれると思っています。ですから競争に晒される側の保護を強化しろという気はないのですが、この競争の結果で割を食ったユーザを救済する制度はあってもいいのではないかと思うのです。

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続・標準化の活用例-誰が証明する?

2015-05-28 15:51:17 | その他の情報
先日の活用例の続編です。

名古屋に住んでいると、弁理士会の活動や顧客への訪問で月に数回は新幹線を利用します。東の東京、西の大阪、名古屋から新幹線は大変便利です。しかも、他の交通機関と比較して「安全」だと思っています。
確かに、この新幹線。みなさんご存知の通り、開業以来「乗車中」の旅客の死亡事故は「0」ということで、日本の安全神話の第1条のようになっています。安全性や時間の正確さは、世界一と誇ることができるでしょう。

さて、その安全で有名な新幹線ですが、どうして安全、何をもって安全と、誰が証明しているのでしょう?
昭和39年の開業以来、「乗車中」の旅客の死亡事故がないのだから、別に異存なく「安全」ということでしょうか?
そうなんです、これも国際規格によって「安全」が証明されているわけではなく、実績の積み上げによって「安全」が保証されているのです。

例えばISOなんかに「時速200km以上で走行する鉄道車両は、開業から30年間旅客の死亡事故が発生しなければ『安全』と定義する。」なんて条項があれば、日本の新幹線は「安全」といえるのですが、実際にはそんな条項はありません。

これが問題となったのが、海外への新幹線の売り込みです。
地震の多い日本でも、地震の影響で走行中の新幹線で旅客に影響が出たことはありません。だから「地震国でなければなおさら大丈夫です。」と言っても、新幹線の導入を検討する国では「安全の基準」が不明確としてなかなか導入してくれません。
欧州などのように各国の鉄道が相互に乗り入れている地域では、当然ながら車両や安全の規格が統一(標準化)されています。閉鎖された島国を走行する新幹線の場合、日本の国内規格(法令)があるだけで、外国でも通用するような安全の規格がありませんでした。

台湾へ行くと、日本のJR新幹線とそっくりの新幹線に乗ることができるのですが、こちらは車両だけが純日本製であり、構造物の規格や信号システムなどは欧州の規格との折衷です。つまり、日本は、システム全体として新幹線システムを売り込むことができなかったのです。

安全性や機能性を証明するためには、客観的な指標としての国際規格が不可欠です。


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標準化の活用例-誰が証明する?

2015-05-20 15:44:11 | 事務所情報
技術の進歩によって、世の中には様々なすぐれものが溢れています。

多くのメーカは、他社には無い独創的な技術を開発し、その技術で世の中をリードして大儲けをしてやろうとの野望を抱いていることと思います。

でもちょっと待ってください。独創的な技術が他社よりも優れていると誰が証明するのでしょうか?
そうなんです。技術というのは、自分で「優れている、優れている。」と言っても客観的な指標がなくては何がどのように優れているのか誰も証明できないのです。
仕方が無いので、多くのメーカは、カタログに小さな文字で「当社従来製品比」、「従来比」、「他社○○との比較」などと相対的に優れていることを示してお茶を濁しています。これでは、「従来比ってなんだよ?」ということになって、なかなか消費者やユーザを納得させることができません。

そこで、「標準化」なのです。
優れた技術を試験する検査基準をISOなどに提案し、これを国際標準にするのです。そうすると、消費者やユーザは、ISOのお墨付きがついたことで技術の優位性を客観的に認識することができるようになります。

メーカ社長「ユーザさん、今回開発した製品は今までにない優れた機能を備えていますよ!」
ユーザ「何が優れてるの?」
社長「この充電池、1000回充電してもヘタれることがないんですよ。」
ユーザ「1000回って、自分に都合のよい自社基準をつくって検査しただけでしょ?」
社長「違うんです。ISO×××の国際的な検査基準にしたがって、1000回実験したんですよ。」
ユーザ「ISOなの?、じゃあ信頼できるね。採用!」

といった、夢のような展開が待っています。

このISO×××は、充電池が開発したメーカが、それこそ自社の製品に有利となるように設定した実験条件とすることもできるのです。
メーカは、製品の開発と並行して、自社の製品に最適な実験条件を国際的な検査基準としてISOに提案するのです。そして、このISOの検査基準を満たす充電池を製造できるのが自社だけであれば、このメーカの充電池だけがISOの検査基準を満たす充電池として、メーカは市場で大きな競争力を持つことができます。
つまり、製品だけでなく、検査のルールも自社で策定し標準化することによって、自社に有利なルールを使って競合他社と競争することができるのです。

まさに、この国際的な検査ルールを策定することが、標準化です。このように、標準化は、製品の規格だけでなく、試験や検査にも適用されます。他社ではマネできないちょっとした技術的な工夫で大きな効果が得られる製品の場合、特許出願だけでなく、検査基準の標準化を目指すことにより、大きなビジネスチャンスがやってくるかもしれません。

これらからは、特許で技術を保護しつつ、その技術の優位性を証明するために自社に有利なルールを検査基準として標準化することがビジネス戦略になっていくでしょう。

技術標準、国際標準に関する相談なら、サトー国際特許事務所へ。


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商標登録されました!!

2015-05-13 17:13:02 | 事務所情報
「ブランディング」だの、「商標つかってビジネスを適切に保護すべき」だのとカッコイイことを言っておきながら、恥ずかしいことに事務所の名称については商標登録をしていませんでした。
しかし、ウェブサイトを更新し、ブログを開設をすすめる一環として、このたび商標登録をしました。
昨年12月に商標登録出願し、今年の3月に登録査定を受け、4月に登録されました。
指定役務の区分は45類です。
これで安心して事務所名を使用することができます。

意外にも、商標登録をしている事務所は多くありません。
そもそも特許事務所の名称は、弁理士の姓に「特許事務所」や「国際特許事務所」などの業務名を組み合わせただけですので、商3条1項の規定から事務所名称だけでの登録は難しいのかもしれません。しかし、ロゴと組み合わせることにより商標登録が可能なケースがあります。

事務所名の商標登録を考えられているあなた、サトー国際特許事務所までご相談ください、って特許事務所から相談がくるわけないか!

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ゴールデンウィーク限定の人気記事?

2015-05-08 13:13:24 | ちょっとひとやすみ
このブログは、見ての通り「gooブログ」です。
「gooブログ」では、なかなか細かいアクセス分析を行なうことができます。どのブラウザを利用したのか、どこからブログへ到達したのか、などなど。
そんな中でどんな「検索キーワード」からこのブログへたどり着いたかも知ることができます。

このゴールデンウィーク中、事務所は休業中ですので当然ブログを更新していなかったのですが、ブログ中の特定の記事にアクセスが集中(といっても数十件ですが。)していました。ゴールデンウィーク中の全体のアクセス数が少ないだけに、特定記事への集中が目立ちました。

その記事は、「近大マグロ」です。

ここからは勝手な想像です。
父「ゴールデンウィークだし、話題の飲食店にでも行ってみるか!」
母「そういや、近大マグロってずっと話題になってるよね。」
娘「それ、食べてみたいしぃ。」
息子「よっしゃ、ググってみる?」

としてヒットしたのが事務所ブログの記事だったのかな~。
そして読んだ親子は「なんじゃこりゃ。役に立たんなあ。」として他の記事を見ることなく、別のサイトへ行ってしまったと。

突然、「近大マグロ」のアクセス数が増加していたので、こんな想像をしてみました。

最近は、何かをしようと思うと、まずネットで検索しますよね。
ビジネスチャンスはこんなところにも潜んでいそうです。


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