弁理士法人サトー 所長のブログ

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意匠法、明治以来の大改正!

2020-04-06 15:07:39 | 知財関連情報(その他)
今回は、2020年4月1日に施行された意匠法の改正について、解説します。

今回の改正は、約130年前に日本で最初に意匠条例が定められたとき以来の、最も大きな改正と言われています。
今回なぜ大改正が行われたかというと、大きくは時代の変化に合わせるためですが、具体的には、昨今高まっているデザインの戦略的活用の重要性に対応するためです。
主な改正点は以下の通りです。
  
  1.保護対象の拡大(画像デザイン、内装デザイン、建築物の外観デザイン)
  2.意匠権の存続期間の延長(出願日から25年)
  3.関連意匠制度が拡充(一つのコンセプトに基づき進化するデザインを保護)
  4.出願手続きの簡素化(一つの願書で複数の意匠が可能)


これにより、特許庁はデザインの力をビジネスに更に活かしてもらうおうと考えています。特に、デジタル技術の発展に伴う新たなデザインの保護や、デザイン面からのブランド構築をしやすくするための制度強化を目的としています。

さて、ここからもう少し詳しく見ていこうと思います。

1.保護対象の拡大」について
従来保護されてきた製品デザインに加え、以下3つも対象になります。
(1)「物品に記録・表示されていない画像デザイン」
これは以下のようなクラウド上の画像や物品以外の場所(道路・壁・人体等)への投影画像などが対象になります。

(出典:「意匠の審査基準及び審査の運用~令和元年意匠法改正対応~」(特許庁)P.9 https://www.jitsumu2019-jpo.go.jp/pdf/resume/resume_037 pdf)
その他、eコマースのウェブサイトの商品購入用画像や、アイコン用画像なども対象です。
従来、画像デザインは、物品に予め記録された、または表示され、物品の機能に関係のあるもの(例えば液晶デジタル時計の時刻表示部、TVに映るDVDレコーダーの操作画像)でなければ対象になりませんでした。改正により、インターネットを通して行われるサービス等において、ユーザーとの接点として重要となってくる画像デザインや、デジタル技術の発展に伴い製品の特徴となってきている物品に表示されない画像等を保護できるようになります。
なお、物品の機能に関係ない画像(壁紙、ゲームの画像等)は引き続き対象外です。

(2)「内装のデザイン」
これは以下例などが対象になります(ただし、内装全体として統一的な美観を起こさせる場合に限ります)。

(出典:「令和元年特許法等の一部を改正する法律」(特許庁)P.24 https://www.jitsumu2019-jpo.go.jp/pdf/resume/resume_036.pdf)
従来、内装のデザインは、テーブル・照明器具などの複数の物品、壁の装飾等から構成されるため、一意匠として保護されませんでした。

(3)「不動産である建築物の外観デザイン」
これは以下例などが対象になります。従来、不動産のデザインは対象外でした。

(出典:「令和元年特許法等の一部を改正する法律」(特許庁)P.23 https://www.jitsumu2019-jpo.go.jp/pdf/resume/resume_036.pdf)

上記の(2)(3)により、例えば店舗デザインに注力している企業がそれらの意匠権という独占排他権を得られるようになることで、より企業がブランド構築をしやすくなると考えられています。

2.意匠権の存続期間について
今回の改正では、意匠権の存続期間が「出願日から25年」になります。
従来は「登録日から20年」でした。出願から登録までの平均期間は、約8カ月(2018年時点)ですので、この改正により期間が延長されることになります。
これにより、意匠の特徴の一つである、長期的に愛好される製品のデザイン(例えば食器)に対する保護が強化され、ブランド構築も更ににしやすくなると考えられています。

3. 関連意匠制度について
関連意匠制度は、自己の出願意匠(本意匠)に類似する意匠(関連意匠)を一定期間内に出願すれば、登録し得る制度です。本制度において、以下の2点が改正されます。
(1)関連意匠の出願可能期間が「本意匠の出願日から10年を経過する日前まで」に延長(ただし、本意匠が存続している場合に限ります)。従来は、「本意匠の出願日から1年弱を経過するまで(本意匠登録に係る意匠公報が発行されるまで)」と短いものでした。

(2)「本意匠に類似せず、関連意匠にのみ類似する意匠」が、出願対象に追加されます。例えば、以下の図の右側の意匠です。

(出典:「イノベーション・ブランド構築に資する意匠法改正-令和元年改正-」(特許庁)P.24 
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/isho_kaisei_jp.pdf)


従来は、本意匠に類似していなければ、関連意匠制度は使えませんでした。

4. 出願手続きの簡素化について
今回の改正により、一つの願書で、複数の意匠についての出願可能になります。
従来は、一意匠ごとに出願しなければならなかったので、複数の意匠を出願される企業の方にとっては、出願手続が少し楽になるのではないでしょうか。
なお、本改正は、まだ施行されておらず、公布日(2019年11月7日)から2年以内を予定しています。一意匠ごとに一つの意匠権を発⽣させるという原則は維持されます。

5.むすび
上記した今回の改正により、一貫したデザインコンセプトに基づき長期にわたり開発され、また、複数の製品群の間で進化していくデザインを、連鎖的に保護できるようなり、そのデザインによるブランド構築も更にしやすくなると考えられています。

その他、「侵害行為とみなされる範囲の拡大」や「損害賠償請求額の拡充」などの改正がされました。詳しくはお気軽にお問い合わせください。
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