弁理士法人サトー 所長のブログ

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色彩のみからなる商標

2017-03-02 10:56:02 | 知財関連情報(商標)

経産省から大々的に「色彩のみからなる商標について初の登録を行います」とのニュースがリリースされ、知財業界は興味津々となっています。

2015年の4月に新しいタイプの商標として「色彩のみからなる商標」についての出願が受け付けられることとなりましたが、その登録第1号ということみたいです。
出願から2年近くの期間を経てようやく登録ということからも、新しい商標の登録に向けた苦労が感じられます。最近は、普通の商標でしたら、半年くらいで登録になりますからね。

当ブログの関連記事:http://blog.goo.ne.jp/sat-patent/e/354dcf8765173c6859f449550b690467

立体商標が導入されたときも、第1号が登録されるまで相当の長期を要していましたが、最近は一般商標と同じくらいのスピードで処理されています。ケーススタディが進んだというのもあるでしょうし、周りの目が気にならなくなったことも大きいのかもしれません。

さて、今回、この「色彩のみからなる商標」の登録を受けて、いつものようにちょっと屈折した見方をしてみたいと思います。

今回、登録が予告されたのは、下記の2つの商標です。引用元は、経産省のウェブサイトから。PDFのニュースリリースから切り抜いてきました。

これを見ると一目瞭然。上の「青、白、黒」は、トンボ鉛筆の消しゴム「MONO」ですね。下の「オレンジ、緑、赤」は、コンビニの「セブンイレブン」ですね。
このように、複数の色を組み合わせた「色彩のみからなる商標」は、単色に比べて識別性が高く、業界では登録される可能性が高いであろうと考えられてきました。今回の登録になったことも、特に疑問点はありません。見れば分かりますからね。

ところで、これらの商標、類似範囲はどうなるのでしょうか?
消しゴム「MONO」について考えてみると、消しゴムは通常、直方体ですよね。そのカバーだと、だいたい見た感じで今回の登録商標のような形になると思うのです。
でも、競合する他社が消しゴムに商標A商標B商標Cなどを用いた場合、類似の範囲はどうなるのでしょうか?
・商標A

・商標B

・商標C

商標Aだと、「青、白、黒」の組み合わせであることは確かですが、見慣れた「MONO」という感じがしません。商標Bに至ると既に「MONO」ではないように思えてきます。ちょっと色を変えた商標Cではどうでしょうか。

さらに、商標D商標Eのように図形を代えてしまうとちょっと別になるような。
・商標D

・商標E

本来、色彩の商標であるのであれば、商標Aでも、商標Bでも、商標Cでも、商標D商標Eでも権利が及ぶ可能性が高いはずです。このあたり、あまり厳密に色の割合や色調にこだわってしまうと、類似範囲が極端に狭くなることも考えられます。個人的な感覚ですが、商標Eは意外と「MONO」っぽい。

特許庁などの行政や裁判所などの司法は、既存の枠組みを壊すことを避けます。「前例が無い」とか、「第三者の利益を害する」とかの理由で。それから、やる気が徐々になくなっていくのも気になります。最初はやる気マンマンじっくり審査の「色彩のみからなる商標」ですが、数年経つとクールな流れ作業ということも。
今回、せっかく「色彩のみの商標」という新しい枠組みができたのですから、使いやすく実のある制度になることを期待します。

前回のマリオで調子に乗って、またイラスト(?)を挿入してしまいました。

コメント
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