弁理士法人サトー 所長のブログ

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悪意ある「商標登録出願」!!

2016-05-18 10:37:01 | 知財関連情報(商標)

ようやく特許庁が腰を上げて(?)くれました。

特許庁の案内はこちら

この出願の関係者は、数年前から業界の中では問題となっていました。

商標登録出願に限らず、特許出願などは、出願に際して「出願料」という手数料を特許庁へ支払う必要があります。
昔は願書に郵便局などで購入した「特許印紙」を貼って出願料を納めていました。
近年は、電子出願となったため、「予納」という形で弁理士や事務所が所有する口座に「特許印紙」を納めておき、出願などの手数料が発生するたびにこの「予納口座」から必要額を引き落としていく仕組みになっています。
大手の特許事務所などでは、この「予納」する印紙代が毎月数百万から数千万になるので資金繰りに苦労します(余談)。

さて、この「出願料」ですが、もし「予納口座」に残額がなかったらどうなるのでしょう?
まあ、願書に印紙を貼っていなかった場合も同様です。どうなるのでしょう?

特許庁は、この点に関しては優しくて、「手続補正指令」として必要な手数料を納めるように求めてきます。そして、指定された期間内に手数料を納める(予納口座に入金、印紙を貼付して補正)ことにより、この手数料未納の瑕疵は解消することになります。

この運用を利用すれば、とりあえず料金を納めなくても(実質的な出費がなくても)、莫大な数の出願をすることができます。
これを悪用して、次から次に商標登録出願をしているのが今回のケースです。

商標は、その性質上、商標登録出願人そして商標権者が自らその商標を使用する場合に、商標登録が認められます。
ところが今回のケースは、到底、自ら使用するとは思えない商標についても出願されています。

商標は、上記のように自ら使用する商標について登録が認められますが、権利範囲が重複するような商標登録出願については、時間的により早く出願した者がその登録を受けることができます。これを先願主義といいます。
簡単に言えば、早い者勝ちです。

そうすると、今回のケースのように悪意の出願人が自ら使用しないにもかかわらず大量の商標登録出願をすると、自分で使用するためにこれらと権利範囲が重複する商標を後から出願した善意の出願人は、商標登録を受けられず、商標権を取得できないという問題が生じてきます。

上記のように手数料が適切に納められていなかった悪意の商標出願は、結果的には「出願却下」となり、善意の出願人が商標登録を受けることができるようになります。しかし、悪意の出願からこれが出願却下されるまで、悪意の出願であっても優先順位は残ってしまいます。
そうすると、この悪意の出願から出願却下がされるまでの数ヶ月(半年くらい)は、善意の出願は商標登録を受けることができません。
昨今のように商品やサービスがめまぐるしく変化していく時代では、この半年の時間のずれがビジネスの機会を逸したり、海外との競争に敗れてしまう原因ともなりかねません。

そう思うと、この出願人が行っている行為は、日本の産業競争力に多大な悪影響を及ぼしていると考えざるを得ません。
この出願人は、何を考えているのでしょう?

ところが、このようなバカバカしい悪意の出願人が出願するような事態が法律の制定時にそもそも想定されていませんでしたから、異質な出願を繰り返す出願人に制裁を加えたり、指導をする根拠がありません。そのため、今回ような特許庁からの「案内」という形になったのでしょう。
それでも、特許庁としては、悪意の出願人を目立たせるのは避けたかったのか、この「案内」はトップページではなくずいぶんと探しにくいところに置いてありました。ネット社会なので、直リンでたどり着くことはできるんですが。そこは、特許庁は関知しないということでしょう。

いずれにしても、悪意の出願で迷惑を受ける方は数多く生じることがあると思いますが、適切に手続きを行えば商標登録を受けることができますので、あきらめないでください。
もちろん、本ケースへの対応についても「サトー国際特許事務所」にお任せください。
サトー国際特許事務所」の商標専門の弁理士が適切な対応をご提案します!!

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