弁理士法人サトー 所長のブログ

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続・東京オリンピックのロゴ

2015-07-31 13:59:49 | ちょっとひとやすみ
昨日、東京オリンピックのロゴでブログを書いたところ、目論み通り多くのアクセスを獲得しました!

昨日のブログは、出張に出発する前の15分で書いていたので、深掘りができず消化不良感が残りました。
そこで、「続編」として、もう1回、アクセスの獲得を目論みます。

まず整理しておきたいこと。
●商標の視点
「商標」は、特定の商品やサービスに同一又は類似する登録商標がなければ登録されます。極端な話をすれば、同一の商標であっても、適用するサービスや商品が違っていれば登録になる可能性があります。
今回のベルギーの劇場のロゴ(以下、「ベルギーロゴ」)は、サービスや商品でオリンピックとの共通性が低いでしょうから、国際的にも登録される可能性が高いでしょう。そもそも、ベルギーロゴは商標登録されていませんので、今回のオリンピックのロゴ(以下、「東京ロゴ」)が商標的な観点で問題になることは少ないでしょう。
●著作物の視点
「著作物」は、登録等が必要とされず、創作された時点で「著作権」が発生します。極めて大雑把にいえば、「著作権」は複製を禁止する権利と捉えられます。ですから、例えAとBという著作物が類似していても、これらが独自に創作(=複製ではない)されたものであれば「著作権」を侵害するような事態は生じません。

それでは、今回のケースについての分析です。
商標としての問題は、上にも述べたようにベルギーロゴが登録商標でないことから生じません。ベルギーロゴに商標権がないので、商標権を侵害することもありません。

それでは、「著作権」はどうなるのか。
これも上に述べたように、東京ロゴが独自に創作されたものであれば、著作権が問題になることもありません。
しかし、時間軸で捉えると、ベルギーロゴは、東京ロゴよりも前に使用されていたようです。そうなると、東京ロゴは、時間的にベルギーロゴの後ですから、デザイナーがベルギーロゴを知っていたか否かが問題です。もちろん、主観的に「知っていたか否か」といわれたら、東京ロゴのデザイナーは「知らなかった」というでしょう。

では、客観的に東京ロゴとベルギーロゴとを比較してみましょう。
ベルギーロゴは、中央の長方形の棒状の図形に対して、左上と右上に、「正方形から扇形を除いた形状の図形(メンドクサイので「ブーメラン形」としましょう。)が表されています。これで、ベルギーの劇場名を示す「Theatre De Liege」の頭文字の「T」と「L」とを表現しているように思います。つまり、「T」と「L」とをモチーフ(動機)にしたデザインといえるでしょう。
次に、東京ロゴは、中央の長方形の棒状の図形に対して、同じく左上と右下に「ブーメラン形」の図形が表されている点で共通しています。ただ、東京ロゴは、右上に、日本であることを象徴(日の丸)するような「赤い丸」が追加されています。これで、東京ロゴは、中央の長方形と、左上の「ブーメラン形」、右上の「赤丸」で「Tokyo」の「T」を表しているのでしょう。
そうなると、右下の「ブーメラン形」は何なのでしょうね。
東京ロゴをカラーで見ると、左上のブーメラン形は「金色」、右下のブーメラン形は「銀色」であることから、「金メダル」と「銀メダル」を暗示したのでしょうか。
でも、「Tokyo」に右下のブーメラン形が必要となるモチーフがありません。じゃあ、銀色の右下のブーメラン形は何を意味しているのかな?
この「Tokyo」と直接関係のない、右下のブーメラン形があるばかりに、東京ロゴのデザイナーはベルギーロゴにインスパイアされた、との印象を客観的に与える結果となってしまっているようです。

一方、東京ロゴにもし右下の「ブーメラン形」がなかったら、今回のような問題は起こらなかったかもしれません。中央の棒と、左上のブーメラン形と、右上の赤丸で「日本、東京」を表現している主張すれば、「そうかもね。」と理解されそうです。でも、モチーフを導き出すのが難しい右下の「ブーメラン形」を追加してしまったばっかりに、ベルギーロゴとの共通点が多くなってしまい、客観的な説明の説得力を失ったように思います。
デザイナーさんは、なんで右下のブーメラン形を追加したのでしょうね。
「金」と「銀」にこだわったのかな。じゃあ「銅」はどこに行った?



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東京オリンピックのロゴ

2015-07-30 13:32:03 | ちょっとひとやすみ
気づいたら、7月も終わりが迫ってきました。
最近、名古屋は毎日暑い日が続いています。
ここ10年くらい夜寝るときは冷房を使っていませんので、毎朝汗だくになって目が覚めます。昼間の暑さは我慢するとして、夜は涼しくなって欲しいものです。

さて、ニュースでは、2020年の東京オリンピックに向けて作成されたエンブレムのロゴがベルギーの劇場のロゴとそっくりということが話題となっています。
JOCや政府の関係者の話としては、「商標的には問題ない。」ということのようです。
確かに、指定商品・役務を別にして、商標のロゴとして「類似」か「非類似」かと問われたら、「非類似」となる可能性が高いかもしれません。
しかし、ロゴとしての共通性が非常に高いですよね。商標的な観点からは法的な問題が無いにしても、クリエイターの観点からは看過できないレベルではないでしょうか。
ベルギーの劇場のロゴを作成したデザイナーからすれば、気持ちいいものではないでしょう。

そもそも、どうしてここまで似たロゴがあることに気づかなかったのか。このロゴを選定するに当たり、専門家(弁理士を含む)の意見聴取や調査は行なわなかったのでしょうか。
先に大きな話題となった新国立競技場の話題も含めて、日本の主催組織(JOC?)に知的財産に関する認識の甘さが感じられます。
組織委員会は代理店に丸投げしているんじゃないかな?

エンブレムを貼りたいところですが著作権が心配なのでリンクをしておきます。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150729-00000109-jijp-spo.view-000
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特許の怪物(パテントトロール)

2015-07-07 13:41:43 | ちょっとひとやすみ
世の中、特にアメリカではずいぶん前から「パテントトロール」が問題になっています。日本ではあまり話題にならないのですが、「日本企業がアメリカでパテントトロールの犠牲になった」、なんて話は聞いたことがあるのではないでしょうか。

このパテントトロールの「トロール」は、「怪物(troll)」を意味しています。特許の世界の「怪物」なんですね。
ちなみに、僕は、最初「トロール漁船」の「トロール」の意味かと思っていました。特許を「トロール網」で文字通り一網打尽にするといった意味なのかと思っていたのですが、こちらは「trawler」ですね。

さて、本題に戻して。
なぜ、この「パテントトロール」が日本では大きな問題になっていないかという点に触れてみたいと思います。
「パテントトロール」は、市場で大きな規模を形成している商品に関連する特許を入手(あくまで入手です。自分で出願することは「まれ」です。)して、この特許で権利行使をすることによって利益を上げる仕組みです。例えばスマフォなんかは世界中で巨大な市場になっています。このスマフォに組み込まれているちっちゃな特許を権利者から入手(購入)して、この権利を使って巨大市場のメーカや通信キャリアなどに特許権を行使(脅し)しまくります。巨大な市場を形成している以上、その特許をやりすごすことは難しく、うまくいくと和解や訴訟で億単位のお金を得ることができます。
パテントトロール会社は、この埋もれている特許を探しだし、日夜権利行使に励んでいるわけです。
このように、パテントトロールは、トロール会社が自ら実施をすることなく、権利行使を吹っかけることに目的があります。

ところで、日本の場合。
日本の特許法では、特許権者に認められる権利として、大きく特許発明の実施をやめさせる「差止請求権」と、特許発明の実施によって特許権者に生じた損害を賠償させる「損害賠償請求権」があります。簡単に言えば、日本の特許法における「誠意をみせろ!」の中には、「やめろ」と「金払え」が含まれています。

この「やめろ(差止請求権)」には、侵害者の実施によって生じる特許権者の被害の拡大をくい止める、ことが期待されています。
例えば特許権者が特許発明を利用してAという製品を作って販売しているとき、侵害者が特許発明を侵害したA'という製品を作って販売すると、侵害者の侵害品A'が売れる分だけ特許権者の正規品Aの売上が減少します。ですから、特許権者が「やめろ」と差止請求権を行使する理由があります。
ところが、トロール会社は、特許権を持っていても正規品Aに相当する商品を製造しているわけではありませんので、「やめろ」というのは単なる嫌がらせです。もちろん、侵害者であればやめざるをえないのですが、トロール会社としては1円にもなりません。

そこで、トロール会社は、「金払え!」と損害賠償請求権を行使します。ところが、日本の場合、「金払え」の根拠となる損害賠償の金額は、侵害者の侵害行為によって特許権者が受けた損害を上限としています。つまり、上の例でいくと、侵害者が侵害品A'を売ることで特許権者の正規品Aが売れず、特許権者に10億円の損害があればその損害(10億円)を賠償しろ、ということになります。
でも、トロール会社は、特許発明を利用した正規品Aを製造販売していないので、上記の例の損害がほとんど発生しません。そのため、日本の特許法では、トロール会社の取り分は、ライセンス料程度に抑えられてしまいます。さらに、日本では、懲罰的な損害賠償、つまりアメリカの3倍賠償のような制度もないので、裁判を起こしてまで「金払え!」というウマミがありません。
このような理由があって、日本ではトロール会社にウマミがなく、パテントトロールがあまり問題にならないのが実情と思われます。まあ、日本の特許の市場は、トロール会社にとって魅力が無いということでしょう。

これだけなら、「日本は平和でよかったね。」なのですが、日系の会社は日本以外で標的にされてしまいます。そうなると、この理屈に慣れていない日本の企業はアメリカなどでも同じような理屈が通ると思い、日本的な対応をとってしまい、大きな損を出すことにもつながります。
また、日本では上記のような懲罰的な損害賠償が認められていません。そして、慣習上なのか、裁判所は、損害賠償額を低めに認める傾向にあります。そのため、本当に特許権侵害で困っている特許権者も、特許権の侵害で被った損害を十分に回収できないのも実情です。
こうなると、海外のユーザ(日本も?)からしてみると、「日本では特許をとっても元が取れない」とか、「侵害した方が得」という発想になりかねません。

そんな背景から、損害賠償額について懲罰的な金額を認めようとする意見もあるのですが、パテントトロールの存在もあって難しいジレンマに陥っています。
特許権の有効活用と権利濫用防止という観点から、既存の枠に囚われない新しい制度の構築が必要なのかもしれません。


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Bingbot・・・ぬか喜び

2015-07-02 11:21:26 | ちょっとひとやすみ
このブログへのアクセス解析をみてびっくり。
7月1日のアクセス閲覧数が過去最高の300超え。うちのブログもビッグになったんだとすごーく嬉しい気分に。
しかし日ごとに徐々にアクセス数が伸びていくならまだしも、7月1日に突然、爆発的にアクセス数が増えた理由は何?
「フェイスブックで友達が増えたから?」などと考えたりしましたが、別のところに理由がありました。

「Gooブログ」では閲覧するブラウザの種類も分かるのですが、今回爆発的にアクセスしているブラウザが「Bingbot」。そう、検索エンジンのクロールを行なうMicrosoftのクローラでした。

ちょっと残念な気分になりました。
そんな簡単にアクセス数が増えることはありませんよね。

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