やっぱりタイムリーなニュースに対する記事の破壊力は抜群ですね!!
昨日のコメダvs.マサキの記事で記録的なアクセスを頂くことができました。
閲覧して頂いたみなさま、ありがとうございました。
ここで、2匹目のドジョウということで、もう一度アクセス数稼ぎを目論見ます。
本件、知財業界でも、「日本初、トレードドレス判決」として話題となっています。
時間が経過するにつれて、色々と背景を含む情報が出てきています。
「フランチャイズ契約のもつれ」というのは知財とは関係ありませんが、根拠法が不競法2条1項であること、仮処分決定であることがわかってきました。
「コメダ」のウェブサイトでも、公式な発表がされており、この中で不競法2条1項に基づいていることが明示されています。
不競法2条1項の何号かは明示されていませんが、公式発表では、「コメダの著名若しくは周知性を有する営業表示を使用した不正競争行為に該当する」と記載されていますので、1号を中心に、2号も該当するとの判断がされていると考えられます。なお、この部分の判断は、僕の個人的な見解です。
不競法2条1項1号は、わかりやすく説明すると、他人の商品や業務を示すものとして広く知られている表示(商標は当然ながら商標以外でも「○○といえば」という表示)を使用して、自分と混乱を招くような行為を「不正競争」としています。
「他人の商品や業務を示す表示」は、「商品等表示」と言われており、商標だけでなく、商号(例:商標登録されていない店舗名)、容器や包装などもこれに含まれます。
今回の決定では、「店舗の外装」、「店内の構造」、「内装」について「コメダ」の主張が認められた、つまりこれらは「商品等表示」に含まれるということを示していますので、まさに「トレードドレス」について判断がなされた画期的な決定と言えるでしょう。
先に触れた「鳥貴族vs.鳥二郎」では、判決が出る前に和解になってしまったので、「トレードドレス」についての判断はされていません。ところが、今回は、仮処分の決定とはいえ、裁判所の判断が示されたわけですので、今後の同様の事件について大きな影響を及ぼすものと考えられます。
本件については、損害賠償等の本訴があり、場合によっては控訴・上告も考えられます。どのような結論が蓄積されるのか目が離せません。
もちろん、今回の決定は、「コメダ」の特徴的な店舗に「商品等表示」としての機能が認められ、さらに大衆に広く知られていることを前提としています。ですから、あらゆる業態に適用されるわけではないですよ。「トレードドレス」と認められるためには、「特徴的」で「広く知られている」ことが最低限の要件になります。
ところで、ここ数日の流れを見ていると、上海の「大江戸温泉物語」から「コメダ事件」と、「トレードドレス」に着目させるための流れがあまりにもデキスギに思えてしまいます。
今年も残すところあとわずかとなりました。
今年は、例年になく温かいからか、年末を感じることもなくあっという間に1年が終わろうとしています。
さて、サトー国際特許事務所は、年末年始の休暇ということで、
12月29日(木)~1月4日(水)
がお休みです。
ご用の方は、29日中にご連絡ください。
それでは、今年も1年ありがとうございました。
みなさまにとりまして、来年がよりよい年になることをお祈り申し上げます。
特許業務法人サトー国際特許事務所
代表社員 弁理士 南島 昇
珍しく、2日続けての更新です。
昨日、上海の「大江戸温泉物語」でトレードドレスについての保護の難しさについて触れたところでしたが、今朝の新聞でトレードドレスについての東京地裁判決が出たとの記事がありました。
今回の問題となったのは、名古屋を発祥として日本中に展開中の「コメダ珈琲」。ログハウス風の建物に、黒字にオレンジの看板といえば、名古屋では知らない人はいないでしょう。僕も、「シロノワール」が大好物です。
コーヒーを提供するお店としては、最近は、スタバをはじめとするカフェスタイルが主流ですが、「コメダ」は懐かしい喫茶店スタイルをウリにしているようです。
この「コメダ」の店舗形態をパクったとして、和歌山県にあるローカルな喫茶店チェーン(?)の「マサキ珈琲」が「コメダ」に訴えられました。
写真を見る限り、ログハウス風の店舗、店舗のカラースキームなど、「マサキ」は「コメダ」とそっくり。さらに、ウェブサイトをのぞいてみると、メニュー展開、コーヒーカップや皿のデザインなども、うり二つ。
ネットでも多くのレポートがされています。
こうなると、「パクリ」といわれても仕方がないのかもしれません。
多分、「コメダ」に詳しくない人は、「マサキ」を「コメダ」と思ってしまうか、何らかの提携関係のお店だと思ってしまうでしょう。
今回の東京地裁の判決では、店舗の形態等については、「コメダ」側の主張を認めて使用を差止たようですが、メニュー展開や飲食物の提供に用いる食器については使用差止に至っていないようです。
新聞記事だけでは、商標法なのか不競法なのかどの法律に基づいた判決かは明らかではないのですが、「トレードドレス」について使用の差止を認めたという判決自体は画期的だと思います。
とにかく法整備が遅れていますが、少しずつこのような判決が積み重ねられていくといいですね。
とりあえずの速報です。
後日、判決を確認できたら、詳細を分析したいと思います。
※追記:ネットで新聞記事が出ていますが、それを読むと不競法の商品等表示に基づいているみたいですね。
クリスマスを挟んだ連休では、ワイドショーで「大江戸温泉物語」のパクリ施設が上海で見つかったと話題になっていました。
さて、このような「パクリ施設」は、何も中国において珍しいものではなく、以前から「ディズニー○○○」のパクリっぽい遊園地など、多種多様な設備が発見されています。そして、中国だけでなく、世界各国でパロディなのかパクリなのかわからない設備は相当数存在しているようです。
今回は比較的大規模な施設であったことと、日帰り温泉という、日本固有のビジネスモデルのパクリ施設であったことから話題になったものと思います。
でも、コンビニや喫茶店などは、日本でもチョコチョコと怪しげなお店を発見できますよね。
有名なものに乗っかってやろうという、知財業界用語で「フリーライド」は、いつの時代もところ構わずあるものです。
さて、今回、この「大江戸温泉物語」をとりあげたのは、以前も話題となった「トレードドレス」の問題といえるからです。
以前、「トレードドレス」を取り上げたのは、「鳥貴族 VS. 鳥次郎」ですね。
「トレードドレス」は、お店の造り、カラースキーム、メニュー構成などのように、一見してどこのお店かを認識できる雰囲気のようなものです。しかし、この「トレードドレス」自体は、商標や不正競争といった知財保護に関する法律では十分に手当てできないのが現状です。
今回の「大江戸温泉物語」は、中国で商標権を取得していないでしょうから、商標権侵害で使用を差し止めることは難しいでしょう。仮に商標権を取得していても、使用主義的な考え方を前提とすると、本家が中国で「大江戸温泉物語」を展開していて、顧客に誤認や混同が生じているといった事実がなければ、本家サイドには「実害はない」としてどこまで主張が認められるか疑問です。
商標権は、商標というマークに蓄積された信用を保護することを目的としていますので、中国で本家によって「大江戸温泉物語」が使用されていないと、中国における信用が蓄積する機会がありませんので、仮に商標権を取得しても、完全な保護を求めるのは難しいでしょう。
自動車やテレビなどの工業製品であれば、商品そのものが流通しますので、これに付された商標も商品とともに流通します。ですから、2次産業の製品であれば、流通する現地で商標権を取得することによって、商標そしてその商標が付された商品の保護を図ることができるでしょう。
しかし、商品の流通が考えられない今回のケースのようなサービスの場合、誤認混同を商標権の効力を認めるための要件とすると、様々な問題が浮かび上がってきます。
日本に限らず、世界中で商品に付する商標を拡張してサービスマークも商標的に位置づけていますが、2次産業の製品を保護する「商標」と3次産業のサービス自体を保護する「サービスマーク」とを同一の法律の類似の考え方で保護するのには無理があるように思えます。これは、日本と中国という問題だけでなく、日本国内においても生じうる問題です。以前のブログで書いた「誤認混同」を侵害の要件とする弊害ですね。
外国の問題ですので、日本と同じような解決策は期待できません。
色々と先方の裁判所等への説得はできるかもしれませんが、法律的な観点からの保護は難しそうです。
今のところ有効な対策がないのが実情です。サービスマークやトレードドレスに関しては、国際的な新たな枠組みが必要なのかもしれません。
単なる感想文になってしまいました。