OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

贄門島 上/下 (内田 康夫)

2020-11-15 09:44:13 | 本と雑誌

 かなり以前、内田康夫さんの作品は集中して読んだことがあります。
 一番最初は「シーラカンス殺人事件」だったように記憶しています。そのあとは、定番となった「浅見光彦シリーズ」に入っていくのですが・・・。

 今回は、図書館の新着書のコーナーで、久しぶりに「内田康夫」さんの名前をみたので、半ば衝動的に借りてきました。

 この作品は浅見光彦シリーズの中では比較的後期のものです。お決まりのタイプごとの登場人物が揃い、地方色を色濃く醸し出しながらストーリーが展開されていきます。

 ただ、久しぶりに読んだ印象はあまりよくありませんでした。
 読者に妙に諂ったような描写が増えています。さらに本書の背景になっている材料のせいもあるのでしょうが、物語そのものというよりも書きぶりというか娯楽作品としての体裁にも不満を感じました。

 作家が社会的・政治的評論を発すべきではないとは微塵も思っていないのですが、どうもストーリー展開に必要な扱いを越えた著者の意見の挿入が目立ちます。個別の政治家が揶揄されている点でいえば、いわゆる“社会派”ともまた違うんですね。

 このシリーズは、初期の作品群のように“単純なエンターテインメント”に徹した方がいいように思います。それが、小説のプロットにも主人公のキャラクタにもマッチしています。

 後期のシリーズではこの「贄門島」のようなテイストの作品のウェイトが増しているようだと、これでまた当分、“浅見光彦シリーズ”は手に取らなくなりますね。

 

 

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〔映画〕ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

2020-11-14 11:38:10 | 映画

 
 アクションもので、007シリーズと並んで安心して楽しめるのが「トム・クルーズ」が登場する作品ですね。
 
 今回観たこの映画は比較的最近のトム・クルーズ 主演兼制作作品です。

 主人公はミッション・インポッシブル系のように「スーパーマン」ではありません。その分、劇画のような超絶はシーンはなくベタな映像ですが、ストーリー展開が無駄なくスムーズなので観ていて心地よいテンポを感じました。
 キャスティングも良かったと思います。

 

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〔映画〕007 トゥモロー・ネバー・ダイ

2020-11-13 10:50:59 | 映画

 
 このところ集中して「ゴジラシリーズ」を観ていたので、正直少々疲れました。
 
 ということで、安心して楽しめる定番の作品群で一息いれることにしました。
 ピアース・ブロスナンの “ジェームズ・ボンド” は結構軟弱なタイプなので、単純娯楽作品として楽しめるんです。
 
 ミシェール・ヨーも、2作あとに登場するハル・ベリーと並んで、この作品でとても活き活きと輝いていましたね。

 

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〔映画〕ゴジラ FINAL WARS

2020-11-12 10:56:28 | 映画

 
 シリーズ第28作目、2004年の作品です。
 
 大きな一区切りの「28作目」、「ゴジラ生誕50周年作品」と銘打たれた作品です。
 私も今回で観るのは3~4回目になると思いますが、やはりこれはダメでしょう。改めで評判の悪さはわかります。
 
 モンスターと異星人が登場して、ほとんどの時間が無意味な格闘に終始しています。特に「人」どおしのシーンとても不自然なアクションばかりで・・・。そういえば、画面に活きた人や町が出てこないんですね。ストーリーもメッセージも何も伝わってくるものがありませんし、音楽もゴジラ映画では珍しく「ダメダメ」だったと思います。
 
 どうせ 「ゴジラ生誕50周年作品」を作るのなら、「第一作」に忠実で現時点の最高の映像技術を駆使した “リメイク版” の方がよかったですね。
 
 ということで、やっとシリーズ28作品を一気に観通しました。
 こうやってみると「シン・ゴジラ」は、ゴジラ映画の本質を結構受け継いでいるような気がしてきました。不思議です。

 

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建築家、走る (隈 研吾)

2020-11-11 10:30:51 | 本と雑誌

 変わったタイトルの本ですね。今回の東京オリンピック開催にあたっての新国立競技場の設計者としても有名な隈研吾さんの自伝的エッセイです。

 建築家に至るまではオーソドックスなキャリアを辿り、主な経歴や実績だけを辿ると順風満帆のようにみえる著者の半生ですが、実際は、それこそ「走り回った」山あり谷ありの様相だったようです。そして、その過程で著者が経験し感じたことは私にとって刺激的な気づきになりました。

 たとえば、中国での仕事を通して知った「大人のロジック」について。

(p35より引用) 歴史的建造物の保存でも同じことです。中国ウン千年の歴史のゆえか、中国の官僚は「大人」のロジックで社会をたくみに誘導します。都市に高層ビルが建たないような都市計画では、中国の経済成長を継続できません。高層ビルを建てながら、その中に文化的な歴史を保存する方策を必死で探します。やみくもに原理主義に走らず、理想と現実の間、理想と欲望の間を、うまくパランスさせようとする意思がある。それがつまりは大人のロジックです。
 対照的に、日本の建築保存運動は、保存運動そのものの歴史がないから、都市の長期的オペレーションの手段としての保存という、「大人」の論理にはなかなか到達しない歯がゆさがあります。

 超中央集権国家の中国ですが、それゆえに「政策の柱」になる思想は徹底しています。

 もうひとつ、「歌舞伎座改築プロジェクト」で気づいた著者の覚悟について。

(p79より引用) 歌舞伎座のプロジェクトでは、お上との齟齬があったおかげで、設計チームの結束が一気に強まりました。「唐破風の屋根をはずして、わかりやすいハコにしなさい」といった、思わぬ提案をお上からぶつけられたおかげで、自分たちが本当に何を実現したいかが見えてきた。要するにぼくらは、この東京の中ではまったく例外的な、特別な形態、特別な場所を継承したいのだ、ということがはっきりわかったのです。・・・
 自分の内にある、建築の理想を極めたい気持ちと、あらゆる人たちの思惑が渦巻く現実とのジレンマを乗り越えていく方法は、単純です。作っている行為自体を楽しめばいいんです。作ることは楽しいし、誰かと一緒に何かを作ることはもっと楽しい。
 そのためには、世間から何をいわれても、「俺たちは、本当にいいものを作ろうと思ってやってきている」と胸を張れる仲間を作ることです。「自分たちを取り囲む条件の中で、これ以上のものはできない」と、いい切る努力は、仲間となる上での前提です。「俺」ではなくて、「俺たち」で作っているという実感。それがあるから、何をいわれても、何とかやっていけるのだと思います。

 このあたりの高揚感は、“さもあらん”と感じ入りますね。

 さらに、面白かったのが、モダニズム建築の巨匠と言われるル・コルビュジエの著者の評価(意味付け)を語ったくだりです。

(p100より引用) どうしてコルビュジエがサヴォア邸で、ピロティ建築の理屈をひねくり出したか。その手法だったら世界のどとでも通用したからです。場所と建築を切り離しさえすれば、アメリカでもインドでも、どんなところでも建てることができる建築の手法を、彼は早い時期から敏感に見抜いていたのです。
 どこでも通用するとは、つまり商品としてたくさん売れることです。その意味で、彼はマーケティングの天才でもありました。コルビュジェは、建築に 「商品性」という新しい概念を導入したのです。

 痛快でとても納得できる指摘ですね。

 さて、最後の覚えは、本書を通じて現れ出た著者隈研吾さんの生き方のポリシーです。

(p236より引用) 今、ぼくの中では、自分の名前を残すというより、後世でも愛され続ける建築を作りたいという気持ち、楽しい人たちと一緒に楽しく仕事をしたいという気持ちが一番強くなっています。建築は形がはっきり見えるものですから、建築家は結果至上主義者と人には思われるかもしれませんが、世界中で切った張ったをやり続けるうちに、「楽しさ」という基本が一番大事なんだと、今更ながら気づきました。

 “信頼し合える仲間と建築という協業プロセスを楽しむこと”、いいですね、素晴らしいですね。

 

 

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〔映画〕ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS

2020-11-10 10:27:46 | 映画

 
 シリーズ第27作目、2003年の作品です。
 
 前作「 ゴジラ×メカゴジラ 」の完全な続編です。機龍とのバトルははっきりした黒白の決着がついていないので、続編は作りやすいですね。

 今回の作品は、前作の機龍誕生の経緯を踏まえエンディングに導いているので、訴えるメッセージは明確ですしストーリーも一貫しています。もちろんそれ故に作品自体の出来も素晴らしいものかというのは別問題ですが。
(出来映えは “可もなく不可もなし” といったところでしょう)

 

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〔映画〕ゴジラ×メカゴジラ

2020-11-09 16:10:57 | 映画

 
 シリーズ第26作目、2002年の作品です。
 
 歴代のゴジラシリーズの中で、最も数多く観直した作品です。
 シナリオは少々「ウザったい」ところがありますが、比較的シンプルでストレートなので後味はいいですね。
 造型についていえば、ゴジラもシャープな外観ですし、「3式機龍」もメカニカルな中にバランスが取れていて私は好きです。
 
 キャスティングも(ウザったいところを抜くと)カメオ出演も含め良かったです。個人的には、この作品の釈由美子さんは結構 “はまり役” だったと思いますよ。

 

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〔映画〕ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃

2020-11-08 20:18:57 | 映画

 
 シリーズ第25作目、2001年の作品です。
 
 プロットやストーリー面では、全ゴジラシリーズを通しても私が好きな作品のひとつです。
 キャスティング面で特筆すべきは宇崎竜童さんでしょう。演技なのか慣れない故なのか、ぎこちなく朴訥な立ち振る舞いがなかなか印象的ですし、天本英世さんが、まさに彼らしいミステリアスな役柄で登場しています。
 
 ゴジラシリーズ第3期の「ミレニアムシリーズ」は独立色の強いものが多いのですが、本作品の場合、ゴジラ以外の怪獣のプロットが “大和聖獣” という全く独自の位置づけとなっているのもオリジナリティがあって面白いですね。
 
 唯一の欠点は「ゴジラの造型」です。特に肩から腕あたりのつくりは “体格のいい人間そのもの” でかなり違和感がありますね。

 

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マンモスを再生せよ ハーバード大学遺伝子研究チームの挑戦 (ベン・メズリック)

2020-11-07 11:26:26 | 本と雑誌

 以前、「合成生物学の衝撃」という本を読んだのですが、その流れで手に取ってみました。
 ケナガマンモスを再生しようという俄かには信じ難いプロジェクトの話です。

 最先端の遺伝子学がテーマですが、専門的な解説書ではなくノンフィクション物語の体裁です。なので、学術的な内容を期待していた読者の方は少々拍子抜けするかもしれません。
 私も「遺伝子編集技術」のあたりは、先に類似の書物(合成生物学の衝撃)を読んでいたこともあって、ある程度行間を埋めることができたかなという次第です。

 本書で紹介されている数々のエピソードはどれもとても興味深いものですが、特に私が気になったくだりを書き留めておきます。遺伝子学と倫理に関わる「科学者の姿勢」に言及した部分です。

 まず、遺伝子学の特殊性をこう紹介しています。

(p249より引用) 遺伝子ドライブ(特定の遺伝形質が、親からすべての子に がれるようにする技術)は物議をかもす研究である。受け継がれる遺伝子を変更することは、種そのものを変えることを意味する。そして、遺伝子ドライブを使えば、一つの種をいとも簡単に終わらせることができる。・・・ かくも強力な科学的ツールの使用が倫理に反しないかどうかはいまだに懸案事項である。実際、アメリカの情報機関幹部は最近、CRISPRと遺伝子ドライブが大量破壊兵器となる可能性を考慮するべきという結論を下し、科学界は騒然とした。ある生物種の遺伝子を改変すれば、ほとんど時を置かずにその種全体を根絶やしにできるのだ。

 そこで、こういった研究に携わる科学者の倫理観が極めて重要な課題として取り上げられます。

(p248より引用) 一般市民の中に飛びこみ、いずれ全人類に影響が及ぶ新しい科学を人々に伝える活動は、ティンが進めている科学研究と同程度に重要なものとなっていた。チャーチがかねがね言ってきたように、科学は世間と隔絶した場所で行なわれるのではない。科学者は自分の研究を世間に公開し、人々に知らせる責任がある。

 科学者自身による倫理判断にのみ頼るのではなく、状況を公表することにより「社会的検証の機会」を整えておこうというとても重要な姿勢です。
 すでに現在の先端科学の水準は「生命を創造する」ことをも可能にしつつあります。こういった監視機能を幾重にも備えておかないと、その合成生物学のもたらす予期せぬ弊害を予見し回避することが困難な段階に達しているのです。

 ちなみに、2020年のノーベル化学賞は、ゲノム編集技術のCRISPR/Casを開発したドイツMax Planck Institute for Infection BiologyのEmmanuelle Charpentier所長と米California大学Berkeley校のJennifer Doudna教授が受賞しました。

 

 

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〔映画〕ゴジラ×メガギラス G消滅作戦

2020-11-06 13:19:10 | 映画

 
 シリーズ第24作目、2000年の作品です。
 
 前作との連続性はなく、第一作目の延長上という位置づけです。その分、ずっとシリーズを観ている人から見ると “浮いた感じ” を抱くかもしれません。
 
 もちろん特撮の技術は格段に進歩していて、たとえば水没した渋谷のシーンとかはかなりのリアリティがありました。が、概して映像は淡泊ですし、ストーリーも一本調子、登場する怪獣も地味で、全体の出来としては可もなく不可もなくといった印象ですね。

 

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〔映画〕ゴジラ2000 ミレニアム

2020-11-05 16:47:29 | 映画

 
 シリーズ第23作目、1999年の作品です。
 
 1998年に公開されたハリウッド版「GODZILLA」に触発されてシリーズを復活させたとのこと、再開にあたって、ゴジラの相手に思い切ったものを登場させました。
 しかし、この “飛翔体” は予想外でしたね。最初見たときには、物凄い「違和感」がありましたが、何度かこの作品を見ていくうちに不思議なことにその違和感も霧消していきました。
 
 ゴジラシリーズの中でも、この作品は「際立って特異」な作品のひとつですね。面白いチャレンジだったように思います。
 ただ、このあと「FINAL WARS」までは “無難なプロット” に戻ってしまいましたが。

 

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〔映画〕ゴジラvsデストロイア

2020-11-04 09:58:35 | 映画

 
 シリーズ第22作目、平成ゴジラシリーズ最終作として製作された1995年の作品です。
 
 ひとつの大きな区切りだったので、制作側のプレッシャーも格別だったと思います。それだけに厳しめの評価が多いもの期待の裏返しとして止む無しでしょう。
 
 最後を意識した「第1作目」へのオマージュがプロットにも出演者の選択にも見られますが、それも適度なものでした。映像的には、デストロイアの造型はかなり疑問符がつきますが、臨海副都心を鳥瞰したシーンやゴジラが赤い光を放射状に放つシーン等はチャレンジングで迫力がありとてもよく出来ていました。
 
 これで「平成ゴジラシリーズ(VSシリーズ・第2期)」は終わりですが、この時期の一連の作品は、玉石混交とはいえ時間や設定の連続性が意識されていて、全体的にかなり高い水準のものだったと思います。

 

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アインシュタインの旅行日記 : 日本・パレスチナ・スペイン (アルバート・アインシュタイン)

2020-11-03 18:23:17 | 本と雑誌

 1922年~1923年、アインシュタイン日本・パレスチナ・スペインを訪れているのですが、その旅程の途上に記した日記や書簡等を再録したものです。
 一次情報に近いものなので、一貫したメッセージやストーリーがあるわけではありませんが、その分、アインシュタインのストレートな感想や思想を垣間見ることができます。

 アインシュタインの旅は、1922年10月から1923年3月までの長期にわたります。往路の船の中で抱いたアインシュタインの「日本(人)感」はあまり芳しいものではありませんでした。

(p162より引用) 11月3日・・・午前11時頃にようやく出航し、緑の島々のあいだの絶景のなかを航海。
 中国人はその勤勉さ、倹約ぶり、子孫の多さで他のすべての民族を凌いでいるかもしれない。シンガポールはほとんど完全に彼らの手中にある。彼らは商人として尊敬されている。その点、日本人は信用できないと見なされていて比べものにならない。日本人の心理を理解するのは困難だ。私は日本人の歌があんなに訳がわからなかったので、日本人を理解しようと思わなくなった。昨日、他の日本人がまた歌っていたので目がくらんでしまった。

 しかしながら、日本に滞在して様々な場面で日本人と接するうちに、その意識も変化していきました。たとえば、12月10日、京都を訪れていた際の日記の一文です。

(p187より引用) 外国の師への尊敬の念は、今も日本人には見られる。ドイツで学んだ多くの日本人はドイツ人の師を敬服している。ことによると細菌学者コッホを記念して殿堂が建てられるかもしれない。皮肉や疑念とはまったく無縁な純然たる尊敬の心は日本人の特徴だ。純粋な心は、他のどこの人々にも見られない。みんながこの国を愛して尊敬すべきだ。

 そして、11月20日、東京滞在中にアインシュタイン夫妻は明治座で歌舞伎見物しました。その時の日記にはこう記されていました。

(p172より引用) 山本および改造社の社員たちとホテルで夕食。それから、歌と踊りのついた日本の芝居。女役を男が演じる。観客は家族みんなで、床に区切られた狭い囲いに座り、生き生きと参加している。一階席を通って舞台に行く通路が複数あるが、その通路も舞台の一部。役柄は明確に定型化。男性三名の合唱が絶え間なく続くのは、ミサの聖職者に似ている。オーケストラは舞台後方にいて一種の籠のなか。舞台装置はまるで絵画のよう。音楽はリズムと感情を表現する鳥のさえずりのようだが、管弦楽のような論理性とまとまりには欠ける。俳優たちは感情過多に演じていて、見た目の効果に専念。

歌舞伎のアインシュタイン流の描写ですが、何か読んでいて楽しくなるような筆致です。

 最後に、アインシュタインが日本滞在中に記したとても印象的な文章を書き留めておきます。

(p232より引用) 日本には、わが国よりも個人間の助け合いが容易な理由がもう一つあります。本来日本には、自分の感情や情緒を表に出さず、いかなる状況でも落ち着いて平然としているという伝統があるのです。だからこそ、心情的に合わない大勢の人たちが一つ屋根の下で住むことができ、気まずい摩擦や対立が生じることがないのです。このことこそ私には、ヨーロッパ人にとって謎である日本人の微笑みの深い意味だと思えます。

アインシュタインの洞察の鋭さを感じるコメントですね。さらにこういった評価も開陳しています。

(p234より引用) 日本人は将来に生きるのではなく、今を生きているのです。その陽気さは繊細で、決して騒がしくありません。日本人のジョークは私たちにはすぐわかります。彼らにも滑稽さやユーモアに対するセンスはたっぷりあります。私は、こうした心理的に深いところで日本人とヨーロッパ人のあいだにさほど差がないことを確認して驚いています。ただしここでも日本人の優しさに気づきます。日本人のジョークには皮肉がないのです。

 続いて語られた「日本の印象についてのおしゃべり」の締めのフレーズは感動的です。

(p236より引用) 日本人は正当にも西洋の知的業績に感嘆し、成功と大いなる理想をめざして科学に没頭しています。しかし西洋より優れている点、つまりは芸術的な生活、個人的な要望の簡素さと謙虚さ、そして日本人の心の純粋さと落ち着き、以上の大いなる宝を純粋に保持し続けることを忘れないでほしいのです。

 「自信を持て」との力強い応援メッセージ、アインシュタインから日本人への素晴らしい贈り物ですね。

 

 

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〔映画〕ゴジラvsスペースゴジラ

2020-11-02 11:43:29 | 映画

 
 シリーズ第21作目、1994年の作品です。
 
 とても中途半端な印象の作品です。
 ストーリーとしてもいくつかのエピソードが並行して走るのですが、中心となる軸がないのでしっくりきませんし、映像的にも実写との二重写しのシーンが多くて、その合成処理も雑です。
 
 キャスティングがマズイのでしょうか、少なくとも私からみると3~4人程度はミスキャストだったように思います。
 ただ、これは役者さんの問題というよりは、そもそものキャラクタ設定自体の失敗でしょうね。

 

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〔映画〕ゴジラVSメカゴジラ

2020-11-01 10:21:03 | 映画

 
 シリーズ第20作目、1993年の作品です。
 
 初代とは連続性はなく全く新たなキャラクタとして登場した「メカゴジラ」ですが、面白い設定で成功しましたね。造型としてもいい出来だと思います。
 
 ストーリーは、ベビーゴジラが軸になっているので、またまた「お子さま向け」の荒唐無稽かとの危惧もありましたが、豈図らんや佐野量子さんの演技のおかげもあり、“真面目な漫画” として予想外にしっかりしたつくりの作品になったと思います。
 あと、幕張でのバトルシーンは流石の迫力ですね、このあたりは見事です。

 

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