OMOI-KOMI - 我流の作法 -

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本田宗一郎 夢を追い続けた知的バーバリアン (野中 郁次郎)

2020-08-16 12:50:37 | 本と雑誌

 かなり前になりますが、野中郁次郎教授が主催した社会人向けセミナーに参加したのですが、その事務局より送っていただいた本です。

 本田宗一郎氏関係の本は「夢を力に」をはじめとして何冊か読んでいるのですが、やはり何度振り返っても刺激になりますね。
 本書は、本田宗一郎氏の軌跡を辿ったうえで、知識創造理論の権威である野中教授が稀代の経営者たる宗一郎氏の思想・姿勢等について論考を加えたものです。

 まずは、宗一郎氏のエピソードを記した「第一部 詳伝」からの覚えです。
 軽自動車N360の成功に続いて、ホンダは小型乗用車分野に参入します。しかしながら、度重なる宗一郎氏の設計変更命令により迷走した新車開発は発売から3年後に販売中止という結果に終わりました。1967年当時の技術研究所杉浦英男所長はこう語ります。

(p103より引用) 「強力な創業者がいて、しかもその人が技術的にもトップに立っている。加えて、過去にどえらい成功体験を持っている。そういうリーダーがいるということは、行く所まで行ってしまわないと、途中で止めるということはとてもできない企業体質だった」。

 “カリスマ経営者の弊害”といえばそれまでではありますが、ホンダの場合は、“甘受すべきリスク”だと捉えるべきでしょう。
 とはいえ、それが「トップの暴走」であるならば、どこかで誰かが止めなくてはなりません。ホンダにはそれができるもう一人の傑物がいました。名参謀、藤澤武夫氏です。
 宗一郎氏が強くこだわっていた「空冷水冷議論」。社内の技術者の議論で水冷の利を理解した藤澤氏は宗一郎氏に対峙します。

(p106より引用) 藤沢はここで勝負に出た。
 「あなたはホンダの社長としての道をとるのか、それとも技術者としてホンダにいるべきだと考えるのか。どちらかを選ぶべきではないでしょうか」
 それを聞いてしばらく黙っていた宗一郎がこう答えた。
 「やはり、俺は社長としているべきだろうね」
 「水冷でやらせるんですね」
 「そうしよう。若い人たちが望むならそれがいい」
 次の日、宗一郎は技術陣を集め、皆の希望を聞いたうえで、水冷でいくことを指示したのだ。

 諭した藤澤氏、受け止めた宗一郎氏、これも二人の長年にわたる相互信頼に裏打ちされた“真実の瞬間”でしょう。

 そして、本書の「第二部 論考」です。
 ここでは、野中教授が唱える「実践知(フロネシス)リーダーの6つの能力」をフレームワークとして宗一郎氏・藤澤氏のリーダーシップを検証していくのですが、二人で「6つの能力」をうまく補完させ合いながらホンダならではのマネジメントスタイルを発揮している姿がよく分かります。

 さて最後に、その他、本書の記述の中で気になったところを書き留めておきます。
 「実践知リーダーの6つの能力」の3つめ「場をタイムリーにつくる能力」についてのくだりです。

(p154より引用)新しい知は人と人との共鳴・相互作用を通して創発する。それが経営学における「場」の考え方である。

 この「創発の場」についてですが、昨今の「テレワーク」の動きによって、従来の「リアルな場」に加えて「ヴァーチャルな場」での人と人との関わりのウェイトが高まってきました。
 以前から「インターネット」の登場により「ヴァーチャルな場」の重要性は意識されていましたが、それは、「未知の人・考え」との出会いを偶発させるという点での有用性だったように思います。
 今回、「既知のメンバ」との営みにおいて(テレワークという)「ヴァーチャルな機会」ができたわけですが、これは“積極的”な意味で創発にとって有益なのでしょうか?それとも、やはり「リアルな機会」の方が優れているのでしょうか?もちろん、これも、0or1議論ではなく、「補完関係」ということだと思いますが。
 ちなみに宗一郎氏は “現場”“現物”“現実”(三現主義)を重視しましたし、偏に「身体性」の人でした。

 もうひとつ、本書で新しく教えてもらった宗一郎氏のクリエイティビティを生んだ発想法

(p264より引用) こうしたいんだ、というものがある人には現場の技術の中に真実が見えてくる。本田宗一郎さんはインテンションがあって、なぜだ、どうしてだ、次にこうやってみたらどうだ、ああやってみたらどうだ、これでやったらどうだ、と前に進んでいく。それと、あの人の極端なのは、「こうやってうまくいきました」と言うと「もっとやったか」と言うんです。普通の人だと「よかったな」と言っておしまい。ところが本田さんは「それをやったら壊れます」と言うと、「壊せばいいじゃないか」と。うまくいったのだから壊す必要ないだろうと思うのですが、「もっとやったのか」とさらに追求する。壊してうまくいかなかったら、「そこまでやってうまくいかなかったんだな」と。これが本田宗一郎さんの発想の、クリエイティビティを生む一つのボイントになっていると思います。つまり範囲を、駄目だという事実が出るまで広げてしまう

 よく「出来るまで諦めずにやる」ということは言われますね。そして「やっとできた!」という瞬間が訪れると、普通の人はそこがゴールだと思います。しかし、宗一郎氏はその先の「限界」まで見極めることを求めました。失敗するにせよ、成功するにせよ「限界の結果が出る」まで追求し通す。「お前、やったのか」という宗一郎氏の言葉は“根源”を突いていました。

 そして、社長経験者川本信彦さんが語る「宗一郎氏の原点」

(p265より引用) 普通は「どっかにあんのか、じゃあやってみろ」ですが、あの人は「どっかにあんのか。じゃあ別のやってみろ」。あの人の発想は、無いものをやってみろ、ということです。

 「世の中にないものを生み出す」こと、宗一郎氏が生涯追い続けた“夢”でもあったのだと思います。

 

 

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〔映画〕 ハドソン・ホーク

2020-08-15 19:42:07 | 映画

 

 観たのは2回目でしょう。

 ブルース・ウィリスの比較的初期の出演映画です。完全に「コメディ」なのですが、正直に言ってあまり出来は良くないですね。ドタバタ喜劇の割には、出演者のキャラクタや演技がイマイチです。
 ジェームズ・コバーンもコメディ映画の悪役を演じるにかなり無理があるんですね。

 

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〔映画〕 プリティ・ウーマン

2020-08-14 19:26:11 | 映画

 

 観るのはもう何回目になるでしょう。
 私はミーハーなので、この手のテイストのHappy End作品が大好きです。

 ジュリア・ロバーツの出世作らしいですが、この作品のジュリアは本当に魅力的ですね。すでに「大女優」の輝きを十分に放っています。なので、Hookerといってもそう見えないのですが、これも仕方ないでしょう。
 映像としても、主人公の変身ぶりを見事なメリハリで表現していてワクワクしますし、そのバックに流れる音楽も見事です。

 あと、忘れてならないのがヘクター・エリゾンド。ホテルの支配人役ですが、こういった役どころにはピッタリです。いい味を出していますね。

 

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〔映画〕 コンフィデンスマンJP -ロマンス編-

2020-08-13 16:34:02 | 映画

 

 詐欺師が主人公の映画は数多くあります。

 騙したつもりが騙される、どんでん返しが付き物ですから、シナリオ的にも制約がなくて作りやすいのでしょう。なので、むしろ、そのどんでん返しに「必然性」がないと、単なるご都合主義的な作品になってしまいます。

 その意味では、本作品もかなりそういった安易な作りに片足ずっぽりと入っているようです。興行的には、長澤まさみさんと豪華な出演者のラインナップでもう少しは持ちそうですが・・・。

 比べるべきではありませんが、詐欺師が主人公の映画は「スティング」に尽きますね。

 

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〔映画〕 ジュラシック・ワールド/炎の王国

2020-08-12 20:13:33 | 映画

 

 「ジュラシック・パーク」シリーズの第5作目です。

 ジュラシック・パークの最大の売りは恐竜たちのリアルなVFX画像です。第1作目でのその驚きは確かに大きなものでした。ただ、そのその衝撃はシリーズが進むにつれ急激に薄れていき、観る人の関心は、プロットの奇抜さ・ストーリーの面白さにウェイトが置かれるようになります。

 人気シリーズならではの難しい課題を課された本作品ですが、評価は「まあまあ」といったところでしょう。この手のテイストの作品にストーリー性を求めるのが、そもそも無理筋でもありますから。
 次作も計画されているということですが、オーウェンとブルーを中心としたものになるのでしょうか?

 

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〔映画〕 そらのレストラン

2020-08-11 19:24:27 | 映画

 

 大泉洋さん主演、北海道(せたな町)が舞台の心温まる作品です。

 予定調和ではあるのですが、この「予定」を上回るシナリオの素晴らしさと役者のみなさんの自然な熱演が見事でした。
 私は、ともかくこういうベタに素直な作品が大好きなのです。さらに「北海道の自然」が全面に展開されるとなるとそれだけで十分ですね。さわやかなラストは心の底から“笑顔”になれます。

 そのうえ、それぞれの登場人物のキャラクタを活かすべく、熟慮されたであろうキャスティングも秀逸でしたね。男優陣はもとより、本上まなみさん、風吹ジュンさん、安藤玉恵さん、みなさんとても素敵でした。

 

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〔映画〕 バリー・シール/アメリカをはめた男

2020-08-10 18:26:11 | 映画

 

 実話をもとにしたフィクションとのことです。

 エンターテインメントとしてはそこそこ楽しめましたが、プロット以上の工夫等があったわけではないので全体としては「イマイチ」という印象です。“爽快感”がないのは致命的でしょう。

 キャスティングも、トム・クルーズにすべてのリソースをつぎ込んだのだろうなという寂しいラインナップでした。

 

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夫のトリセツ (黒川 伊保子)

2020-08-09 19:34:51 | 本と雑誌

 「定年夫婦のトリセツ」「妻のトリセツ」と読んできて、ここまで辿り着きました。流石にこの手の黒川さんの著作はこれで打ち止めにしましょう。

 さて、このシリーズ、著者としては「妻のトリセツ」は“夫”に、「夫のトリセツ」は“妻”に読んでもらうことを期待しているとのことですが、確かに本書は“妻”に読んでもらいたい内容ですね。私の場合、驚くほど、ここに挙げられている「妻に対するマズイ反応」のほとんどを実行し、見事に撃沈しています。まさに指摘されているように「全く悪気はなく」むしろ「相手のために」との気持ちで・・・。

 ともかく、著者が繰り返し訴えるメインメッセージは、

(p153より引用) つらい一日を過ごした後の女性が欲しがっているのは、正論(問題解決)じゃなくて、共感とねぎらい。それさえあれば今日一日が無駄じゃなかったと思えるからだ。

 そして、本書からの最大のギフトは、「世の中には私と同じような“夫”が大勢いるんだ」という同病相憐れむという慰めですね。

 

 

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〔映画〕 家族はつらいよ

2020-08-08 20:20:14 | 映画

 

 山田洋次監督の作品ですが、「男はつらいよ」シリーズに続くひさしぶりの喜劇映画とのことです。

 「男はつらいよ」シリーズは1作も見たことがないのですが、この作品のようなテイストだとすると私には合わないですね。この手の「日本映画」は苦手です。
 設定もそうですが、登場人物にも全く共感を感じません。ついて行けるのは、せいぜい蒼井優さんの役柄ぐらいでしょう。

 あと2作、続編があるようですが、観るかどうか考えますね・・・。

 

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〔映画〕 かぞくいろ RAILWAYS わたしたちの出発

2020-08-07 19:37:36 | 映画

 

 「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」に続くシリーズ3作目です。

 今回の舞台は鹿児島。前作とは異なり「鉄道」がしっかりと核として物語が組み立てられています。ただ、映画としての構成は、過去のエピソードの挿入が頻繁にあって、観ていて少々煩わしいですね。

 有村架純さん、桜庭ななみさんという「NHK朝ドラ」でお馴染みのキャスティングですが、有村さんには少々キャラクタが固定化されてきたような印象があって、その点、桜庭さんの方が演技に広がりを感じます。
 実質的な主役は、國村隼さんかもしれませんね。

 

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〔映画〕 雨あがる

2020-08-06 20:09:22 | 映画

 

 山本周五郎さんの原作を黒澤明さんが脚本化したのですが、志半ばで最後まで書き終えることはできませんでした。その後、助監督だった小泉堯史さんが後を継ぎ、自ら監督として完結させた作品です。

 ストーリーとしては好みが分かれるかもしれません。一般的な評価は高いようですが、私の好みで言えば“可もなく不可もなく”といった印象でした。時代劇の姿をまとわせた“人情喜劇”のようです。

 キャストの中では宮崎美子さんが光っていましたね。「彼女の作品」といってもいいくらいでした。

 

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〔映画〕 Wの悲劇

2020-08-05 19:22:22 | 映画

 

 夏樹静子さんの「Wの悲劇」を劇中劇として、もうひとつメインのストーリーを重ねるという構成ですが、想像以上によかったですね。

 その大きな要因は豪華な脇役陣です。清水紘治さん・南美江さん・草薙幸二郎さん・西田健さん・・・と並んで、さらに蜷川幸雄さんが演出家の役で登場。レポータ役も本職の梨元勝さん・福岡翼さん・須藤甚一郎さん。

 そして、主役の薬師丸ひろ子さんと三田佳子さん。三田さんの演技は流石に大女優然として圧巻でしたが、この映画の薬師丸さんは卓越でしたね。
 ラストシーンもとても印象的です。いい映画だったと思います。

 

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〔映画〕 クリミナル・タウン

2020-08-04 19:41:47 | 映画

 

 出来の悪い作品です。

 あり得ないようなプロットで、ストーリー自体にも面白味が感じられません。主人公の高校生の行動も、動機の作り込みが不十分なこともあり、すべてが「軽率」としか見えないのです。

 これほど、登場人物に共感できない映画も珍しいかもしれませんね。クロエ・グレース・モレッツも、これでは退化してしまいます。

 

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〔ドラマ〕 琥珀

2020-08-03 20:08:35 | 映画

 浅田次郎さん原作のドラマです。

 映画やドラマに仕立て上げられた浅田作品は数々ありますが、これもその一つ。
 ただ鈴木京香さんの演じた登場人物は浅田さんの原作にはなく、脚本家の創作とのこと。私も原作を読んでいないので無責任な言い様になりますが、テレビドラマだとすると「それもあり」のように思いました。

 他方、同じく新たに追加された若いカップルの方は“微妙”ですね。二人のシーンはどうにも唐突、物語の静かな流れの中では、正直「余分」でした。

 

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〔映画〕 モダン・タイムス

2020-08-02 19:17:50 | 映画

 

 恥ずかしながらチャールズ・チャップリンの映画はこれが初めてです。

 この作品が初めて世に出たころの様子は想像すらすることはできないのですが、今観ても確かにいい作品だと思います。

 ストーリー展開も小気味よくシーンが切り替わって飽きることはなく、コメディ的な仕掛けは、ドリフターズ的なノリ(もちろんチャップリンの方が本家ですが)で嫌みはありません。チャップリンの細やかな動きも見事ですね。

 ポーレット・ゴダードと二人で歩く有名なラストシーンも評判どおりでした。

 

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