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ヨーロッパ文化と日本文化 (ルイス・フロイス)

2006-03-18 00:12:46 | 本と雑誌

 著者のフロイス(Luis Frois:1532~97)は、ポルトガル(リスボン)出身のイエズス会の宣教師です。

 1563年(永禄6)に来日し、織田信長と面会、その絶大な保護を得ました。その後、3年間日本をはなれた以外は、30余年間を日本での布教にささげ長崎で没しました。
 大の日本通で文筆の才に富み、本書以外でも大作「日本史」の著者として有名です。

 この本は、ヨーロッパと安土桃山時代の日本の風俗を、サクサクとした「対比」で明らかにしています。「われわれは・・・、日本では・・・」という短文の集合で「相違」を列挙していきます。(中には、相違を際立たせようとするあまり例外的なものを誇張していると思われるものもありますが・・・)

 ものごとを理解するうえでは、何かと比較するというのは非常に有効な方法です。比較して「相似」と「相違」を抽出するのです。特に、その比較も相違が際立つとさらに効果的です。

 この場合、「相違」に「気づく」ことが肝になります。そこで「気づく」ための工夫ですが、私は以前このBlogで、「視点」「視野」「視座」を変えることをお勧めしました。

 この本は、「ヨーロッパ人の宣教師の『視座』」から見た日本の風俗を、「相違」という表現で炙り出しています。その対象物の広がりは、衣食住関係はもとより、家畜(馬)・武器・船・書物・演劇・歌謡等極めて多方面に及びます。
 中でも僧侶と宣教師の対比や子どものしつけ・教育に係る部分は、いろいろな意味で興味深いものでした。

 また、比較という意味では、「ヨーロッパと日本」(空間的比較)と「安土桃山時代と現代の日本」(時間的比較)が楽しめます。
 特に、時間的比較という点では、「相違」というよりも「相似」(昔からそうだった)の点が気になりました。そのいくつかを紹介します。

 日本人的「笑い」

(p186より引用) われわれの間では偽りの笑いは不真面目だと考えられている。日本では品格のある高尚なこととされている。

(p191より引用) われわれの間では礼節はおちついた、厳粛な顔でおこなわれる。日本人はいつも間違いなく偽りの微笑でおこなう。

 日本人的「表現」

(p188より引用) ヨーロッパでは言語の明瞭であることを求め、曖昧な言葉を避ける。日本では曖昧な言葉が一番優れた言葉で、もっとも重んぜられている。

(p194より引用) われわれは怒りの感情を大いに表わすし、また短慮をあまり抑制しない。彼らは特異の方法でそれを抑える。そしてきわめて中庸を得、思慮深い。

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2 コメント

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m-fun様 (思案中)
2006-03-19 14:26:46
m-fun様
 いつもコメントありがとうございます。
 最近読んだ民俗学者宮本常一さんの「忘れられた日本人」にも、このフロイスの記したいくつかの習慣・風俗がなお残っている姿が紹介されています。場面は1950年代後半から1960年代にかけての日本の農村です。
 時間を経てすっかり変わってしまうものもあれば、時間を経ても底流として脈々と受け継がれているものもあります。

 ところでm-funさんは長崎出身ですか? 私も長崎には何度か行ったことがあります。中世から近現代の歴史の息吹が残った個性的な存在感のある街ですね。最初は中学の修学旅行、次は高校時代に九州一人旅で、その後社会人になってからは2年間の熊本勤務中に出張で1回、プライベートで1回。東京にもどって出張で1回、このときは平戸に行きました。
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思案中様 (m-fun)
2006-03-19 00:32:52
思案中様

m-funです。少し前に日経新聞の「日記をのぞく」というコラムにフロイスの「日本史」についての記事があり、ちょっと興味がありましたので、「完訳フロイス日本史」(中公文庫)を購入しました。この本は全12巻あるので、先のコラムで取り上げていた信長編第2巻のみ読みました。宣教師の目というフィルターを通してはいるものの、実際にその時代に生き、実際に見た人の書いたものというのは、“生の史実”に近いものとしてそれだけで普通の歴史書にない興味をそそられます。おそらくこの「日本史」の中でも「対比」している描写があるのでしょう。そのような観点から読むことも歴史文化を知る楽しみがあるのかもしれないですね。ただ私自身長崎県出身なのですが、フロイスのことについてはほとんど知りませんでした。少し反省しています。
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