引き続き、ハイエクの特徴的な主張をご紹介します。
ハイエクは、経済的自由の保障のための重要な価値概念として「競争」をあげています。
(p223より引用) 競争体制こそが権力を最小化させる唯一の体制だというのです。競争社会では金持ちが生まれ、財閥もできるかもしれないけれども、そういう人が出てくることで普通の人の自由も保障される・・・
ただし、競争が万能であるとハイエクは考えていません。競争が成り立つ土俵(枠組み)はなくてはなりません。
(p72より引用) ・・・「有効な競争」をつくり出すことが必要で、そのためには注意深く考え抜かれた法的な枠組みが必要であるとハイエクはいいます。・・・競争を禁じて統制経済になるのではなく、競争を効果的にやらせるための工夫を法的につくるという意味の計画は重要であるということです。・・・
統制をしなくても、競争によって諸個人の活動を相互に調整することができ、しかもそれは政治権力の恣意的な介入・強制を排除できるとハイエクはいいます。意図的な社会主義的統制を必要としないためには、競争が絶対に不可欠な要素であるのです。
競争を有効に機能させる一つの方法は、「『価格』の調整機能」にゆだねるという道です。
(p90より引用) 競争に調整機能があるというのはハイエクにおいて最も根源的な主張です。・・・
競争は単純な社会よりも複雑な社会で効力を発揮するとハイエクはいいます。・・・ものすごく複雑な社会になると、個人はいわずもがな、いかなる優秀な官僚を集めても、命令で需要と供給のバランスをとることは絶対にできません。
そこで、当事者がわかっている事実にしたがって独自に行動するに任せ、それぞれの行動が全体として調和するような調整がどうしたら可能になるかという問題をハイエクは提起し、「価格」というものの持つ情報機能と重要性を指摘します。
不可能に思われるようなこの調整機能を見事に果たしているのが、競争体制における「価格機構」だとハイエクはいいます。つまり、自分の決定と他人の決定とをうまく折り合わせる情報は価格に集約され、調整が可能になるというわけです。
もう一つは「法」です。
ただし、ここでいう「法」は限定法でなくてはなりません。
(p73より引用) ハイエクが日本に来て講演したときに、「自由主義の法律はDon’tであるべきである。Doであってはいけない」といいました。
ハイエクが是認する法律の特色は「否定」です。「これこれをせよ」という法律ではなく、「これこれすべからず」という法律を求め、否定されていること以外はやっていいというくらいでないと、自由主義ではないというわけです。
また、こうも説明しています。
(p128より引用) 経済的な面で、国家は一般的な状況に適用されるルールだけを制定すべきだとハイエクはいいます。要するに、法は抽象的でなければいけないということです。そういうルールがあれば、あとは個人個人がその場の状況に応じて行動するわけです。・・・
いずれにしても、本来の法は個別的な命令であってはならず、詳細が予見できない条件において適用されるものでなければならず、特定の目的や人間のもたらす効果が前もってわからないものだとハイエクは繰り返します。
法は「機会の均等」をもたらすべきであって、直接的に「結果の均等」を目指すべきではないとの考えです。
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