OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

グループ体験 (型破りのコーチング(平尾 誠二・金井 壽宏))

2010-03-14 10:49:08 | 本と雑誌

 著者のひとり平尾誠二氏は私より少し下の世代ですが、現役時代の彼のプレーには非常に強いインパクトを感じたものでした。神戸製鋼・日本代表のころはもちろんですが、FWに林・大八木、バックスに平尾が並び立った同志社大学のバランスのとれた強さは破格でしたね。

 その後も平尾氏は、監督として日本代表を率いる等ラグビー界で活躍していますが、その柔軟で論理的な思考は、マネジメントやコーチングの世界でも刺激的な知見を与えてくれます。

 本書は、「型破りのコーチング」というタイトルですが、その名のとおり、豊富なラグビー経験に基づいた平尾氏からの独創的な示唆・アドバイスがふんだんに盛り込まれています。そういう多彩な平尾氏の言葉を経営学が専門の金井氏が受けて、そのエッセンスを純化・抽象化したり、さらに肉付けし発展させたりしていきます。
 さて、以下では、本書の中で私の興味を惹いたところをいくつかご紹介します。

 まずは、タイトルにもある「型」について。

 平尾氏は、基本としての「型」の意義は認めつつも、スポーツ現場の指導法を例にとりながら「型を過剰に重視すると成長の伸びしろが小さくなる」と語っています。型にとらわれない「無責任なパス」も必要との指摘は面白いものです。

 
(p29より引用) ゲームで必要なのは、状況を切り開くイマジネーションに富んだパスなのです。それには少々精度が落ちようと、ここだと思ったときに躊躇なく放れるある種の無責任さもなければなりません。

 
 もうひとつ、平尾氏と金井氏とのやり取りにに見られたシナジー発揮の例です。

 平尾氏が「馴れ合いのチームワークは無責任さを生み出すだけ」だと「日本人のチームワークのよさ」について疑義を呈したとき、金井氏は、それを受け、ノースカロライナ大学のビブ・ラタネ博士が名づけた「傍観者効果」を紹介しています。

 
(p40より引用) 街中で心臓発作を起こした場合、目撃者が一人のときは81パーセントの人が救助に駆けつけたのに、その場に複数の人がいると救助してもらえる確率は31パーセントに下がったそうです。

 
 こういう心理状況は、恥ずかしながら私にも心当たりがあります。(もちろん、「心臓発作」の場ではありませんが・・・)
 こういう「傍観者」とならないためには、グループ活動における良質な成功体験が有効です。金井氏は、グループでの営みには良・悪、2つのタイプがあると語っています。

 
(p40より引用) 私はよく、よいグループ経験と悪いグループ経験という言い方をします。一人だったら思いつかなかったアイディアが生まれたり、個人の能力を超える創造的な結果が得られたりするのがよいグループ経験。個人的にやりたかったことがグループであるがゆえに阻害され、不満が残ったら、それは悪いグループ経験。

 
 幼いころからたくさんの「よいグループ体験」を積むことが、常にチームとしての成果最大化を目指すというメンタリティを植え付け、そのための極く自然な利他的行動を起こさせるのです。

 日本では、こういう幼いころの「グループ体験」、いろいろな人たちと折り合いとつけながら行動する(触れ合う・ぶつかり合う・とことん話し合う・・・)といった場が急速に減っていますね。バーチャルな世界のゆるやかな結合では、この手の中身の濃い良質な体験は得られにくいものです。
 
 

型破りのコーチング (PHP新書) 型破りのコーチング (PHP新書)
価格:¥ 735(税込)
発売日:2009-12-16

 
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い
 
TREview
TREviewブログランキング
 
人気ブログランキングへ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ルポ 貧困大国アメリカ (堤 ... | トップ | リーダーシップ平尾流 (型破... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

本と雑誌」カテゴリの最新記事