本書では、稲盛氏の経営に向かう基本的姿勢が、明確な形で具体的に示されています。
その多くは、極めて真っ当な王道の勧めです。
たとえば、「技術と経営」についての指摘です。
(p92より引用) 技術的な優位性というのは、このように永遠不変のものではない。だから、企業経営を安定させようと思うなら、たとえ技術的にさほど優れていなくとも、どこでもやれるような事業を優れた事業にすることが大切である。つまり、誰もがやれるような仕事をしていても、「あの会社はひと味違う」というような経営をすることが、その会社の真の実力なのである。
・・・平凡な仕事を立派な事業にしている会社こそ、実は非凡な会社なのである。
「組織」についても、「アメーバ組織」という独創的な手法を実践しましたが、その基本的な考え方は非常に素直なものでした。
(p98より引用) アメーバ経営における組織編成は、このように「まず機能があり、それに応じて組織がある」という原則にもとづいて、最低限必要な機能に応じたムダのない組織を構築することが基本になっている。
また、「人」についてのコメントを2つ。
まずは、「人材育成」に関してです。
京セラにおいて、多いときには3000を越す「アメーバ組織」があったそうです。そうなると、それぞれのアメーバを任せられる「リーダ」の育成が非常に大事になってきます。
(p110より引用) アメーバ経営では、組織を細分化しているので、将来性のある新しいリーダーを登用して仮にうまくいかなかったとしても、会社の屋台骨を揺るがす危険性は少ない。だから、若干経験不足で不安が残る人材であっても、リーダーとして積極的に登用し、経営者としての自覚と経験を積ませることが大切である。
「人を育てるアメーバ組織」というわけです。
もうひとつは、「新規事業と人」に関してです。
(p110より引用) 私は、新規事業を始める場合においては、「人材こそ事業の源である」と考えてきた。だから、単にビジネスチャンスがあるという理由で事業を始めたことはない。・・・「適切な人材がいるから新事業に進出する」というのが私の鉄則である。
この考え方は、私も真理を突いたものだと思います。
事業でもプロジェクトでもそうですが、その成否は、リーダやメンバの本気度次第です。「適切」かどうかは、スキルや経験の有無にもよりますが、最終的には「本気」かどうかで決まります。
「はじめに人ありき」という姿勢です。
アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2006-09 |
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