齋藤氏は、本書で、「日本を教育した人々」として4人の人物を紹介しています。
吉田松陰、福沢諭吉、夏目漱石、そして最後に登場するのは、昭和期の「司馬遼太郎」です。
司馬遼太郎氏(1923~96)は、大阪生れの昭和期の代表的歴史小説家、戦後、新聞記者として勤めたのち作家の道に入りました。
代表作といっても、絞りきれないほど数多くの有名な作品があります。
戦国期を描いたものとして斎藤道三を主人公にした「国盗り物語」、幕末維新期を描いたものに、新選組をテーマした「燃えよ剣」、坂本竜馬の一生を辿った「竜馬がゆく」、中国を舞台にした「項羽と劉邦」等々・・・、紀行ものとして「街道をゆく」や「この国のかたち」等のエッセイ、その他多くの方との対談集もあります。
私も、過去においては、文庫本(歴史小説)やNHK大河ドラマ(最近は全く見ませんが、・・・当時は「国盗り物語」「花神」とか)で司馬氏の作品にはかなりの数、接しています。
著者が紹介している司馬氏の視点で、私が興味をもったものを1・2、ご紹介します。
まずは、「明治」という時代の捉え方について。
司馬氏は、明治を、日本の歴史における時の流れのなかのある「時代」としてではなく、独特な切り出されたひとつの「国家」としてみているというのです。
(p176より引用) 明治国家は世界史的な奇跡であって、立体的な固体のような感じで、テーブルの上にポンと置きたいと司馬は語っている。「明治時代」ではなく「明治という国家」として捉えようとするのは、それを時間的な経過の中で見るのではなく、一つの構造として見た方が、明治の特徴をより正確に確定できると考えるからである。
この感覚は、確かにわかるような気がします。
もうひとつは、「プロテスタンティズムと資本主義との関係」のように、江戸期の日本の倫理観が、明治期以降の経済成長の礎になっていたとの見方です。
(p177より引用) また倫理観に関していうと、日本人にはプロテスタントに近い倫理観があったのではないかと指摘している。世界の中で経済発展した国にはプロテスタントの国が多いが、日本はプロテスタントとは関係がなかった。にもかかわらず経済成長を遂げたのは、プロテスタント的倫理観があったからではないかというのである。
清潔、整頓。これがプロテスタントの美徳です。・・・
江戸時代の大工さんは、作業場をきれいに片づけて帰るのです。・・・江戸期日本は、プロテスタントによらずして、こうだったのです。大工さんのみならず、このような労働倫理や習慣が、明治国家という内燃機関の爆発力をどれだけ高めたかわかりません。
このあたり、論拠としては非常に貧弱ではありますが、相似と相違という気づきの「視点」としてはおもしろい指摘だと思います。
日本を教育した人々 (ちくま新書 691) 価格:¥ 714(税込) 発売日:2007-11 |
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