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ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (中島 誠之助)

2007-12-16 13:59:15 | 本と雑誌

Shino  筆者の中島誠之助氏は、テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」に登場している古美術鑑定家です。

 本書は、その中島氏が、「ニセモノ」をテーマに語った軽い読み物です。

 古美術の真贋に限らず、今のご時世、詐欺や詐欺まがいの事件は後を絶ちません。
 中島氏が語る「ニセモノにひっかかる方程式」です。

(p19より引用) 懐があったかく、骨董をほしがっているが不勉強な人間に、「儲かるよ」と甘く囁く。こうすることで、百人のうち九十九人までは必ずひっかかる。
 これがニセモノにひっかかる方程式なのである。

 中島氏が長年にわたって関わってきた骨董の世界では、どうやら「ニセモノ」も必要な要素として認められていたようです。
 ただ、それも、骨董という特殊で閉鎖的な業界の専門家どうしの取引の世界に限って通用するものであり、その限りにおいて「許されるニセモノ」があるというのです。端から素人を騙そうという意図で創られたものは、許されざるニセモノであり、中島氏の言を借りると「ガラクタ」だというのです。

 中島氏が接したニセモノの中には、ホンモノといって通用するような高度な技術で創られたものがいくつもあったといいます。

 「ホンモノ」と「まったくそっくりのニセモノ」とを並べてみて、物性的には全く同じということも理屈のうえではあり得ます。
 とすると、「ホンモノ」とは一体何か?
 結局は、「創造」と「模倣」の違い、作者の精神の発露たる「オリジナリティ」に帰結するのでしょう。

 本書は、骨董という、私自身全く関わりのない世界が舞台になっているので、ちょっと感覚的に違うかなという点も多々ありました。

 が、そうはいっても、中島氏のことばでちょっと関心を惹いたものを1・2、ご紹介します。

 まずは、「目利き」の定義について。

(p175より引用) ホンモノとニセモノがわかるということは、プロとしては当たり前のことであり、わかって当然、わからなければ仕事にならない。何が大切かというと、出世するものを見分ける力、つまりは美の発見ができるかどうか。それが本当の目利きといえる。

 ホンモノかどうかを見分けるのにとどまらず、ホンモノの中でもさらに「一際光るもの」「美しいもの」を見出す眼力を重んじるのです。

 もうひとつ、「大切にする心」について。

(p5より引用) これまで私は、番組のなかで、骨董品の鑑定を通して、大事なことはモノではなく「心」が一番のお宝だと強調してきた。それが、
「どうぞ大切にしてください」
という私のコメントに凝縮されて口から出てくるのだ。
 たとえニセモノであろうと本人が気に入っているものであれば、あるいは先祖代々受け継いできたものであれば、大切にする心、いとおしむ心を持ち続けることが大事なのだから。

 モノの価値は、「それを持ち続ける気持ちの中にある」ということです。

ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21 C 135) ニセモノはなぜ、人を騙すのか? (角川oneテーマ21 C 135)
価格:¥ 720(税込)
発売日:2007-08


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