いつも聴いている大竹まことさんのpodcastの番組に著者の田崎基さんがゲスト出演していて、本書についてお話ししていました。ちょうど、いつも利用している図書館の新着本リストの中で見つけたので手に取ってみました。
著者の田崎さんは神奈川新聞の報道部デスク。内容は、新聞に連続掲載した特殊詐欺の実態記事をルポルタージュとして取りまとめたものです。
本のかなりの部分は、「特殊詐欺」に関与した出し子・かけ子・受け子・主導役等犯罪当事者からの取材による実態の紹介ですが、そこで明らかにされるところは、若者が犯罪者になる入口の広さとそこから抜け出すことの困難さ、もう一つは、特殊詐欺の根本的な首謀者の秘匿性の堅牢さでした。
(p206より引用) 特別な誰かによる、特別な犯罪ではない。誰もがそうした陥穽へと落ちうる。人間関係や金銭的困窮で追い詰められ、孤独な状況であればなおさら、手元にあるスマホから手っ取り早く稼ぐ道へと誘引されやすい。特殊詐欺が絶え間なく引き起こされるのは、そうした誰もが持ちうる心情に巣食っているからなのだ。
実際に末端の詐欺行為に手を染めてしまう若者たちの姿を田崎さんはこう総括しています。
他方、本書を読んで少々残念に感じたところは、情報遮断されている上部組織、すなわち “首謀者の実態” までは暴き切れなかったところでした。もちろん、これは捜査当局ですら辿り着くのが困難なのですから、止むを得ないところでしょう。
近年「暴力団の関与」が増加しているという指摘はありましたが、海外での組織的活動の実態等も含め、今後の取材に期待したいところですね。