C.アンダーソン氏の著作は「フリー」の方を先に読んでしまいましたが、こちらの「ロングテール」も大きなインパクトを残した本でしたね。
こういう、先駆的な「コンセプト」をザックリと切り出して示した著作は、細部の議論の当否はともかくとして読んでみて大変刺激になります。
以下、本書の中のいくつかの議論で私として興味を持った部分を覚えとして記しておきます。
まずは、「ロングテール」の基本コンセプトを説明している箇所からです。
「ロングテール」は、市場がニッチな領域に大幅に拡大することでもあります。著者は、このニッチ市場の開闢に「三つの追い風」が吹いていると指摘しています。
(p72より引用) 第一の追い風は生産手段の民主化だ。・・・
第二の追い風は、流通を民主化して消費のコストを減らすことだ。・・・
第三の追い風は需要と供給を結びつけることだ。
以上の三つの追い風それぞれが、ロングテール市場における新たなビジネス・チャンスになると考えて欲しい。生産手段の民主化は星の数ほど生産者を増やすことにつながるし、効率性にたけたデジタル経済は新たな市場を生む。またばらばらに分散した無数の消費者の知的活動を追跡してもっとも適した商品を届ける能力は、さまざまなレコメンデーション手法へとつながり、事実上新しい流行発信源になっている。
この三つの流れのなかで、現在のマーケットを支配しているのは、第二と第三の風をおさえたビジネスのようです。すなわち、ロングテールのアグリゲーターとして情報を集め、その集積した情報を検索によりフィルタリングをかけ、さらにレコメンデーション技術によりマッチング処理してエンドユーザーに届けるモデルです。
とはいえ、その前提には、ロングテールを構成する大量なコンテンツの存在が必要不可欠です。そのフェーズを、著者は「生産手段の民主化」と名づけているわけです。
「生産手段の民主化」は、生産者の圧倒的な増加をもたらします。そして、その背景には「ものづくりの動機」の変化・多様化があると著者は指摘しています。
(p96より引用) ヘッドとテールではものづくりの動機が違うという事実を知らなくてはならない。・・・ロングテールのヘッドは旧来の貨幣経済ではじまり、テールは非貨幣経済で終わると考えてもいい。・・・
ヘッドでは営利が優先される。高くつくが影響力は強い大衆市場の流通媒体によって、商品から利益が生まれる。そこはプロの領域だ。・・・
いっぽうテールでは、生産と流通のコストが(デジタル技術の民主的な力で)低く抑えられ、利益はしばしば二の次とされる。創造の目的は自己表現、楽しみ、実験などさまざまだ。経済的な動機があるとすれば、現金と同じくらい人を動かせる貨幣の存在だろう。「評判」という貨幣である。
この「評判」という価値は、人に認められたいという根源的な欲求であるが故に、その程度の大小に関わらず、人を創造的な活動に導くものなのです。そしてインターネットの世界が「認められる機会」を飛躍的に増大させたわけです。
さて、本書の最終章、第14章「ロングテールの法則-消費者天国をつくるには」では、ロングテール・ビジネスを発展させるコツが2点にまとめられています。
ひとつは、「すべての商品が手に入るようにする」
もうひとつは、「欲しい商品を見つける手助けをする」
さらに、「ロングテールの集積者として成功するための9つの法則」も紹介されています。
コストを削減する
法則1:在庫は外注かデジタルに
法則2:顧客に仕事をしてもらう
ニッチに注目する
法則3:流通経路を広げる
法則4:消費形態を増やす
法則5:価格を変動させる
支配をやめる
法則6:情報を公開する
法則7:どんな商品も切り捨てない
法則8:市場を観測する
法則9:無料提供をおこなう
この最後の法則9には、まさに、アンダーソン氏の近著「フリー」で展開した「フリーミアム」の萌芽が見られますね。
ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2006-09 |
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