著者が示す日米比較の例をもう少しご紹介します。
今度は、「ビジネスモデル」に関するものです。
「ものづくり日本」と言われますが、さて、これからの「ものづくり」はどういう姿になっていくのでしょうか。
グローバル化やデジタル化の進展が、ものの「つくりかた」のルール自体を変えつつあるというのが、著者の指摘です。
(p191より引用) 「横型」を推進するアメリカと、「縦型」にこだわる日本
アメリカは、一般的に言って、自分は付加価値の高いバリューチェーンの上流を押さえ、下流の資本集約的や労働集約的な重たい部分は、外国、特にアジアにアウトソースする傾向が大変強い。・・・アメリカは、バリューチェーンを分解して、付加価値の高い部分に特化し、それをグローバルに横展開する「横型」モデルに強い。
「横型」は「分業型」志向です。
「ものづくり」の各段階(プロセス)を切って、それぞれのかたまりを「モジュール化」する、そして、そのモジュール間をつなぐ方式(インタフェース)を規定する。こうすることによって、プロセスごとに「最適」なものを組み合わせてバリューチェーンを作り上げていくのです。
(p192より引用) これに比べ、・・・日本企業は垂直統合の「縦型」である。日本企業はたとえアジアで生産していても、アジア工場は自社工場か協力工場で、基本的には日本企業の垂直統合された一部であることが多い。
「縦型」は「自社完結型」志向です。
自己完結しているので、バリューチェーン全体を一元管理することが容易になります。そして、このことにより、顧客に対しても、「一貫した品質保証」を約束することができるのです。
さて、この「縦型」「横型」、二つのビジネスモデルの優劣についてですが、著者はこうコメントしています。
(p193より引用) 「横型」「縦型」の優位性は事業によって違うが、「デジタル化の推進」「インターフェースの標準化」「アジアとアメリカのつながり」の要素がますます強くなってきている現在、世界のマジョリティは「横型」になりつつあると言えるであろう。
このようなグローバル潮流に呑み込まれ、従来の「日本方式」が少数派となりつつある中で、今後の日本はどういう道を歩むべきなのでしょうか。
(p196より引用) 日本にとってのグローバリゼーションとは「日本独自のやり方で道を究めるか」、あるいは「妥協して世界の趨勢に合わせ、より大きな土俵での勝負に出るか」のトレードオフの選択なのである。
トレードオフといっても、すべての商品/サービスにおいて一律にどちらかの道を選択するということではないでしょう。商品/サービスによっては、限られた小規模マーケットで確固たる地位を守り続ける道もあるはずです。
しかしながら、世界的な潮流への対応も間違いなく必要です。
(p197より引用) 自分から見ると、格下の最大公約数的製品を侮っていると痛い目にも会う。最大公約数的製品をグローバルに打ち出してマーケットシェアを取った企業が、プラットフォーム構築の覇権まで握るとその強さは磐石となるからだ。マイクロソフト社のウィンドウズOSや、アップル社のiPodがそのよい例であろう。彼らの製品を中心として、その周辺に大きなエコシステムができてしまうという具合だ。
アメリカ礼讃ではありませんが、イノベーイティブなサービス市場においては、依然としてアメリカが力を発揮しているのは認めざるを得ないところです。
さて、日本は・・・、王道は「自己の強みを活かす」ことです。
やはり、ハードとしての「ものづくり」(製造業)にフォーカスすべきでしょうか?
その場合の方法論は、従来のような「縦型(自社完結型)」を継続するのか、「横型」で重要なモジュール・クリティカルパスを押さえにかかるのか、いずれにしても「グローバル分業」は前提となります。
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