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見えないリーダーシップ (タオ・マネジメント―老荘思想的経営論(田口佳史))

2009-03-18 22:37:23 | 本と雑誌

 本書は、老荘思想に則った企業経営のあり方を説いたものです。そこには、老荘流の「リーダーシップ」の形も紹介されています。

 一言でいえば「見えないリーダーシップ」です。

 
(p65より引用) 実は、組織をうまくならしめている者こそがトップであるとは、だれも気付きも思いもしていない状態こそが理想的姿といえる。

 
 「謙下」
 謙虚な姿勢を重んじ、尊大・傲慢を否定します。

 
(p82より引用) 虚の本質は「真実」である。しかし、己を虚しくするとは、以下のことではない。自分の見識を持たない。自分の信条を持たない。・・・
 自分をまず後にする。まず相手を先にすることである。

 
 これを企業経営に当てはめると、「顧客重視」「社員重視」の姿勢につながっていきます。
 「老子」の思想から、「社員重視」という観点にかかわるものとして2点記しておきます。

 ひとつには、「個性を重視した多様な人材の尊重」という考え方です。

 
(p95より引用) 道は不仁で、誰であろうと差別をしない。・・・
 また道は、相対的に見ることをしない。したがって、比較ということがない。人間を常に差別しない。能力や力量の比較で見ない。個々の個性、持ち味で見る。

 
 もうひとつは、「権力行使の抑止」です。

 
(p122より引用) 相手が自分よりも弱く、何ら抵抗する力を持たない時には、その絶対的権力を振るってはならない。人間として行ってはならない行為である。
 つまり、強い立場から命令するということは、一方的な通告となる。一方的ということは、調和に欠けるのである。調和に欠ける行為は、必ず災いを被ることになる。

 
 老荘思想の企業経営は、争わず、上善若水、柔軟な共生を目指します。無駄な力は行使しない「省エネルギー」型です。小さい自事柄を侮らず、丁寧に対処していきます。

 
(p194より引用) 大問題や難題の生じ難い、つまり総体のエネルギーを建設的なテーマに投入することができる企業においては、易しいことほど慎重に、小さなことほど細心に立ち向かうという、いわば「愚直さ」が尊重されているのである。

 
 また、経験を重んじます。著者のいう「真の知識」とは実行という経験から得たものをいいます。
 その観点から、机上の「戦略的思考」を強く否定しています。

 
(p200より引用) 頭脳の働きの中には、戦略的思考、つまり創造上における勝利の図式を思い描くという働きもあり、それはとかく野心や欲望を誘発しやすいものである。
 頭の中での勝利、あるいは勝利にいたる戦略構築は、それが鮮やかであればあるほど人間を酔わせるもので、それこそ妄想を生じやすくし、虚構を描きやすくする。更にこれらは、それ自体に力を持つもので、多くの人間を惑わす力を持っている。
 企業の中がひとたびこうした状況に犯されてしまうと、多くの社員は地道で素朴な肉体的実践を嫌うようになり、ただ単なる頭脳プレイを好むようになり、それはやがて妄想集団の悲劇である内部崩壊や社会との乖離を招くことにもなる。

 
 最後に、老荘思想における「望ましい経営者像」です。

 
(p233より引用) 成果は次世代の経営者に、自分は負担のみという案件を英断をもってスタートさせたかどうかほど、経営者の業績を語る場合に重要なものはない。

 企業を「充実発展継続」させることが経営者の使命であり、「自らは次世代のためにある」との自覚を肝に銘じる覚悟です。

 
 

タオ・マネジメント―老荘思想的経営論
価格:¥ 2,310(税込)
発売日:1998-04

 
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