著者の斎藤茂太氏は、1916年の生まれですから90歳。精神科医であり文筆家でもあります。
ご存知のとおり歌人斎藤茂吉氏の長男で、作家北杜夫氏の実兄です。
今回は、メンタルヘルス関係の本のつながりでこの本に辿り着きました。斎藤氏の本は初めてです。
とても読みやすい本で、力んだところのないさらりとした語り口です。
こういう感じです。
(p22より引用) こころのスイッチの場所は、まず「好きなもの」にある。「好き」をいっぱいもつことをおすすめしたい。
もちろん、本業は精神科医ですから、その方面からのアドバイスもあります。
たとえば、落ち込んだときの対処について。
(p25より引用) 落ち込むことを恐れすぎてはいけない。落ち込むこともまた、自然なこころの動きの一つなのだ。むしろ、ちゃんと落ち込めるほうが大事だといってもよい。
水に溺れるのは、浮き上がろうとバタバタともがくからなのだ。静かに水に身をまかせていれば、自然に浮力が働いて、あんがい、溺れない。
ただし、ポイントはキチンと押さえます。
(p26より引用) 大事なのは、きりかえのきっかけをつかみ損なわないようにすることだ。さもないと、こころは再浮上できなくなってしまう。
読んでいて、今までの自分がまさにやっていたこともありました。
たとえば、この割り切りの態度です。斎藤氏は「おまじない」と言っていますが・・・
(p33より引用) 私は、マイナスのスイッチをプラスに変える「おまじない」を知っている。・・・
「まあ、いいか」。この一言である。
また、初めて気づかされたこともたくさんありました。
「清福」という言葉もそのひとつです。
(p206より引用) 益軒によれば、清福を身につけるには、真の教養人でなければならないという。真の教養人とは、・・・こころの中には、いつも楽しさを感じることができる素直さが自然に存在していて、感じた楽しさをいっそう大きく育てられる力のある人という意味だ。
楽しさを感じるためには、やはりこころに余裕がなければなりません。
余裕がないと、「気づき」は生れにくいものです。
最近、ちょっと流行りかけの言葉に「セレンディピティ」という単語があります。「偶然から大きな発見や発明を行なう」といった文脈で登場します。
「セレンディピティ」とは、「思わぬものを偶然に発見する力」といった意味です。
(p211より引用) 私は、セレンディピティは、日常の暮らしの中で生かされてこそ、大きな意味をもつものだと考えている。セレンディピティは、身の回りにあるちょっとしたことに幸福の芽を見つける能力だと意訳できよう。
最後に、ポジティブな心持ちのための必須の言葉です。
(p191より引用) 「ありがとう」という言葉には、魔法のような力がある。相手に対する感謝の思いを伝えることはいうまでもないが、いっている自分のこころにも、文字通り、ありがたい思いがじんわりと染みわたっていく。
「清福」と「感謝」、当たり前のこととして自然に身につけたいものです。
こころのスイッチをきりかえる本―今すぐできる気分転換のコツ 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2006-10 |