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ヒューリスティック・バイアス (観想力(三谷 宏治))

2007-03-03 15:04:50 | 本と雑誌

Mandara  以前同じ職場だった方のメールマガジンで紹介されていたので読んでみました。ちょっと前には、ふとっちょパパさんも読まれたようです。

 「観想」とは、仏教では「特定の対象に深く心を集中すること」、ギリシア哲学では「感官的知覚や行為の実践を離れて対象を直観すること」を意味するそうです。

 本書は、よくあるブレイクスルーのための発想法についての本ですが、その中では、なかなかキレのある書きぶり分かりやすい内容だと思います。

 ブレイクスルーのためには、この本に限らず多くの本で「常識に囚われない発想」を求めます。
 著者は、柔軟な発想を阻害する思考のクセとして「単純化の歪み」を挙げます。

(p71より引用) ヒトは幸運な偶然を必然と感じ、好ましい一事例を典型例と思い込み、見やすい情報と第一印象にのみ基づいて意思決定を行う。

 こういった思考の偏向「ヒューリスティック・バイアス」は、事実に基づく重要な点を見過ごすことになると指摘しています。
 拙速な単純化は、多くの場合、無批判的に常識を是とします。

(p120より引用) キーワードは「ヒューリスティック・バイアス」だ。
 ヒトは通常、見たいように見、聞きたいように聞き、考えたいように考える。自らの常識を疑い、知識ベースを拡大し、バイアスを除き、新しい発想や正しい答えを得る努力をしよう。

 事実に基づく状況認識のために有効な方法のひとつが「統計学的思考」です。

(p50より引用) 現代の人類には、まだ、統計学的直感は備わっていない。・・・
 経営の問題点や課題を明らかにしようと、様々な問題を分析する。が、統計的手法を使おうものなら、多くの経営者はそれだけで違和感や拒否反応・拒絶反応を示す。それよりも面白そうな「他社事例」を好む。たった一例の方を信じたりする。
 また、数字でなく、「大丈夫です」と言い切ったヒトを信じる。市場から見たら90%ダメでも、これまで六割方は言ったことを成功させてきたヒトの方を信じてしまう。それで良いなら経営戦略は要らない。

 ここでの著者の指摘は、確かに首肯できるものです。

 小数のサンプルにもとづく数字の上下1%で一喜一憂する愚は、確かに多くの場面で見られます。
 多くの人は、何らかのデータが統計的に有意か否かについて知っていながら、特定の結論に誘引するための根拠もどきとして大いに活用しているようです。

 そこには、結論が拠って立つ「事実」はありません。

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価格:¥ 1,785(税込)
発売日:2006-10-20

コメント (1)
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