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情報⊂人 (アメリカ海兵隊(野中 郁次郎))

2006-04-28 00:10:17 | 本と雑誌

 著者の野中郁次郎氏は、以前「失敗の本質」という著書において、第二次大戦の日本軍敗戦の原因を、戦略・組織面から研究し発表しました。
 そこでは、日本軍の6つの作戦をケースに失敗の要因を分析し問題点を浮かび上がらせています。本書でも、前書で指摘したのと同様の問題点がところどころに顔を出します。

 まずは、ガダルカナルで日本軍と戦った米国海兵隊中佐の言です。

(P64より引用) 「この血なまぐさい12時間の戦闘によって、どう理解して良いか分からない問題にぶつかった。一木は、斥候がほとんど全滅させられたのだから、論理的に彼の攻撃の意図は海兵隊に知られているとは考えなかったのだろうか。・・・なぜ、彼は損害の大きかった第一回攻撃と同じ方法で第二回攻撃を行ったのだろうか。・・・その答えの一部は、当然のことであるが、一木大佐の情報不足であろう。しかし、もっと重要なことは、彼の傲慢な現実無視、固執、そして信じ難いほどの戦術的柔軟性の欠如ではないか」

 第二次大戦において、日本軍は対米情報戦に敗北したと言われますが、その内実はそんな単純系ではありません。情報の有無が大前提なのは言うまでもないことですが、仮に情報があったとしてもその情報を活用する能力がなければ何の意味もないのです。情報は、使う人がいてはじめて活きるのです。

 「情報」を「意味のあるものだと認知」し、それをもとに「事実を把握」、さらに、その事実を踏まえて「分析」し「対応策を策定」、そして「実行」する、最後にまたその結果を「情報としてインプット」する・・・という一連の活用サイクルを回すことが重要だということです。
 このサイクルは「人」が回すのです。その意味で、「情報⊂人」なのです。

 さて、具体的な情報活用は、たとえば「失敗の教訓化」という形をとります。

(P90より引用) ジュリアン・スミス少将は「われわれはいくつもの失敗をしたが、最初からすべてを知ることはできない。われわれは将来のためになることをたくさん学んだ。・・・」といった。“ガルバニック”作戦を指導した指揮官たちは、ギルバート諸島の戦闘が終了した瞬間から、戦闘中に生じたすべての失敗と欠陥を発見し、詳細に検討し、それを修正するよう、幕僚たちに指示した。

 ただ、検討・修正にとどまっているのではありません。その教訓はシステマティックに共有されます。

(P92より引用) ニミッツ提督の担当する太平洋全域にわたり、ギルバート諸島での戦訓が配付された。・・・タラワ以後の強行上陸作戦のあらゆる局面は“ガルバニック”作戦という原型を基に検討された。

 「教訓」はリアルな世界で義務化されないと確実に活かされたことにはなりません。
 ここまでやってようやく1サイクルのゴールです。そして、サイクルはまた回り始めます。

コメント
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