ふつうに考えると「陸・海・空」の3軍あって、さらに「海兵隊」というのはなぜ?という感じを抱きます。
アメリカ海兵隊は1775年に創設されたのですが、当初の目的は、平時は警備隊としての艦内秩序の維持であり、戦闘時には敵艦との接近戦の遂行でした。
現在でも、海兵隊は、海外での武力戦闘を前提に組織され、アメリカの権益を維持・確保するための緊急展開部隊として行動することをミッションとしています。
したがって、DNAとして「変化に対する即応性」が染みついているのです。
まずは、組織体としての「即応対応」ですが、以下のように状況によって小さくも大きくもできる柔軟な構造になっています。
(P185より引用) 同一業種内でも業績のよい組織は、「分化」と「統合」という相反する組織の状態も同時に極大化しているというのである。
しかし、分化と統合の「同時」極大化というのは、論理的には不可能である。・・・この論理矛盾を打破するのが現実の世界における行動である。つまり、動くことで視点が変わり状況が見えてきて、統合と分化という力(ニーズ)が全く拮抗しているわけではないことがわかってくる。対抗する二つの力のバランスを取るのではない。時と場所によって異なるそれらの力関係を感じ取り、組織のリーダーがその強いほうを選んで推進するのである。そして、より高度な分化と統合を交互に追求することによって、組織をスパイラルに革新するのである。
海兵隊が部門間分化に対して開発した統合組織構造は、入れ子型でいかなる規模でも自己完結している海兵空・陸機動部隊(MAGTF)であった。
また、同じように人材活用においても「即応対応」が工夫されています。具体的には以下のような仕掛けです。
(P80より引用) 強襲上陸部隊は、・・・エファテ等で予行演習をしたが、第二海兵連隊の指揮官が病気になったため、スミス少将は師団の作戦計画にもっとも精通している作戦主任参謀シャウプ中佐を大佐に進級させ、第二連隊の指揮官とした。第二次大戦中の米軍は、作戦のニーズに応えてこのような抜擢を行ない、使命が終わると元の階級に戻すという機動的人事を編みだした。
この対応は、「階級」と「職責」をベースにした典型的官僚型組織を所与の前提としたうえでの応用形なので、真の意味での「柔軟な適材適所の人材活用」とまでは言えないと思います。
が、逆に「典型的官僚組織」の世界観の中で、この手の荒技ができること自体、出色と言えるかもしれません。
さて、以上のような「組織」と「人」に係る柔軟な仕掛けの支えがあって、状況に応じた機動的なアクションが可能になります。
(P123より引用) 遊撃線の要諦は、・・・「戦略的には、一をもって十に当たり、戦術的には十をもって一に当たる」ものであり、時間と空間をダイナミックに同期化させるのである。
まさに「孫子の兵法」の真髄です。