Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.405:人を育てる

2011年05月19日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
人を育てる。
城山三郎監修
光文社

みんな勝手に育っている・・・・・・。
それが読了したときの偽らざる感想です。

本書は一昔前の本になりますが、一般のビジネスパーソンから、企業の中で
「どう育てられたか」、「どう育ててきたか」の体験談を集めたものです。
筆者たちの年齢・性別、所属する企業の規模、業種や業態などが様々なので
あたりまえですが、面白いくらいバラバラです。

ある人は社長や上司など「師」とあおぐ人々から学び、また、ある人は仕事
そのものに翻弄される中から学んでいます。皮肉なことに、会社を辞めたあ
とに、いつもガミガミ言っていた上司の言葉が自分の糧となっていることに
気づいた人もいるし、とんでもなく嫌な上司を反面教師として成長を遂げて
いるしたたかな人もいます。

共通項はありません。(仕事の話をしているのであたりまえですが)ただ、
そこに“仕事がある”から成長を遂げたという一点においてのみ共通してい
ます。

一方、育てるほうの話にも、「成功体験」を与えるとか、「育てようという
意識を持たない」とか、「思い切り任せて精一杯働ける場を与える」など、
その人なりの持論が展開され、みごとにバラバラです。どうすれば人は育つ
のか、という問いに対して、こちらも一律の答えは期待できそうにありませ
ん。

無理に共通項を探そうとすると、もう、お手上げ、という感じですが、よく
よく見ていくと私1.0には育てられる側の意識が何となく大切なのでは、と
思えてきました。同じ人に同じ言葉をかけられても、受け取り側の意識によ
って気づきになったり、ただの説教になったりします。朝礼でときどきわけ
のわからんことを言う課長が、ただの意味不明なおっさんに思えたり、実は
心に傷を負ったメンバーに間接的に自分は理解しているということを伝えて
いる漢(おとこ)だということがわかって愕然としたりするのですから。

かように人材育成というのは、育てようと思ってもすぐに結果が出るたぐい
のものではないようです。定年後、上司の愛情に気づくようなこともあるわ
けで、育成側としては何ともわりに合わない話に思えます。しかし、人は会
社の生産性を上げるためだけに生きているのではありません。したがって、
ここは一つ社会のために“袖触れ合うも他生の縁”と考えて、大らかな気持
ちで人材育成に取り組むほうが精神衛生上はよろしいのではないでしょうか。

もちろん、日常の職務遂行能力のようなものはシステマティックかつ厳しく
教え込むほうが効果的で良いのかもしれませんが、人間的な成長を促すとい
う意味ではやはり悠然と構える必要がありそうです。また、そういう姿が最
近大人に見当たらなくなった「貫禄」というものを周囲に匂い立たせるのか
もしれません。

最後に皆さん。よ~く考えてみてください。誰かが自分のことをいつも気に
かけてくれていて、その成長を期待して待っていてくれる。そんな職場があ
ったらそれだけで幸せですよね。(文責:マツモト1.0)

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