Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.290:教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する

2009年02月16日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する
クレイトン・クリステンセン,マイケル・ホーン,カーティス・ジョンソン
翔泳社

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久々に書評のコーナーです。この本が取り上げているのはアメリカの初中等教育の話。日本でもPISA調査結果等から小中学生の学力低下が叫ばれていますが、初中等教育に問題を抱えているのは日本だけではありません。、アメリカなんてもっと深刻だったりするのです(下記Webサイト参照)。
社会実情データ図鑑

で、その改革にクリステンセンお得意の破壊的イノベーション理論を適用できないかというのがこの本の内容です。しかも改革の鍵になるテクノロジーが「コンピューターを利用した教育」なのです。eラーニングの信奉者でもここまでは持ち上げないだろうというぐらいICTの教育活用を礼賛しているポジティブな文章です。

生徒中心の教室で学習を個別化するにはコンピューターを活用するしかない!という80年代初頭のCAIのうたい文句をベースに、「ユーザー生成コンテンツの制作を支援するプラットフォームの出現」というコンシュマー・ジェネレイテッド・メディアなスパイスを効かせ、「オンラインコースが高校の全履修課程の25%のシェアを獲得するのは2014年頃」という大胆な予想までしています。

内容については、「ちょっと行き過ぎ」と思える面もありますが、クリステンセン氏の説明する「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」の話しは、確かに今の教育ビジネスとeラーニングにかなりの部分が合致します。

例えば同書の中で

1)破壊的イノベーションは出現した当初、既存の商品よりも性能は劣る
2)破壊的イノベーションは出現当初、無消費にぶつけられる
3)破壊的イノベーションは既存市場のメインプレーヤーから出現しにくい

という事を述べています。これらを日本のeラーニング事情に当てはめて考えてみましょう。

1)については、「ネットの環境によってはスムーズに学習できない」「紙のテキストが欲しい」ということを当初言われ続けていましたが、単なるFlashアニメのレベルを超えて、学習者個々に合わせた教材の提示や分岐型シナリオを持つケーススタディ型コンテンツが可能になりつつある昨今、既存の教育手段の性能に追いつき追い越そうとしています。

2)については先ほどの、グラクソ・スミスクライン社様の事例や、ネットラーニング社が資生堂と協同で事業展開しているwiwiwという育児休暇中の女性向きのeラーニングサービスが該当します。勉強しようにも家事や育児が忙しくて教室に通えない。そういう無消費にeラーニングをぶつけることであらたな市場を開拓しています。

3)については、ネットラーニング社、SATT社、デジタルナレッジ社、プロシーズ社等eラーニングで頑張っている会社にベンチャーが多いことがあげられます。

クリステンセンの予言は、アメリカの高校でなく日本の社会人教育市場で的中してしまうのではないかと思ってしまうのですが、みなさんはどうお考えになりますか?

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