Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.464:自分がみえる 相手がわかる 9つの鏡

2012年10月07日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
自分がみえる 相手がわかる 9つの鏡―エニアグラム超性格診断テスト
木村孝 高橋慶治 著
オーエス出版


(注:本コラムは、10月7日に配信したメルマガのバックナンバーです。
メルマガ配信時は465号としましたが、うっかり464号を飛ばしていることに
後で気が付きました。ということでBlogでは464号として掲載させていただきます。)


とある大学病院で、昨秋からチーム医療推進プロジェクトの世話役をやって
います。言わずもがな、職種・部門間の垣根を越えて全スタッフが患者さん
に最善のことをしようという考え、というか運動です。そしてこの病院では、
「疲弊する大学病院スタッフの負荷の軽減ということ」も大きなねらいです。

一般論ですが、部分最適・部門最適ですと患者さんのみならずスタッフ側も
業務の総量が増えます。例えば「薬のアレルギーを確認する」という行為を、
外来、病棟ナース、病棟薬剤師、手術部がそれぞれ(自分の部門の仕事とし
て)行うなど好例です。患者さんの元に行き、聞き取り、フォームに記録し、
電子カルテに入力するという同じ作業を4人のスタッフが各々にするわけで
す。患者さん(あるいはご家族)も4回同じことを答えることになります。
もちろん精度を上げるために意図的にやっているのであれば別ですが。

チーム医療活動にとって、この営利企業ではあまりあり得にくい業務の重複
は、不経済という視点以外にもうひとつ大きな問題が内在します。それは、
各部門がそれぞれに一生懸命である、という点です。各専門性のもとに患者
さんにbestな仕事をと本当に心底思って仕事をしているという点は、会社時
代、長らく「なんとか楽して金儲けしよう」と仕事をしていた我が身にとっ
て衝撃的です。そしてその「自分たちは最善と思っていることを全力でやっ
ている」という姿は、時として部門間の衝突を起こします。それを信念対立
と呼んだりします。

例えば(これは作り話ですが)眼科病棟の1床以外はICU含め空きベッド
が無い時、交通事故の患者さんを受け入れるか、というようなシチュエーシ
ョン。救急部は助けてあげたいと思うし、眼科の病棟は(まったく専門性が
違い)適切なケアができないのでそれは患者さんのためにならないから断る、
といった話です。
 
そういう信念対立は、病院でも会社でも、いわば左脳的に組織ビジョンを打
ち出し、問題を構造化して、統合となる問題解決法を紡ぎだしていけばよい
のです。が、問題は、そこにパーソナリティが横たわります。同じ看護部で
もAさんとBさんはまったく「キャラ」が異なり、それは自ずと心を動かす
言葉が異なります。

従来、その対応分けを「ソーシャルスタイル」をはじめとしたツールで試み
てきましたが、実践シーンでいまひとつ「なんだかな」という感がぬぐえま
せんでした。
 
前置きが長くなりましたが、それを乗り越えるヒントとなるのが今回の1冊
が説く「エニアグラム」という診断。ご存じの方も多いとは思います。私は
これを使ってこのチーム医療の信念対立の解消手立てを試みていますが、た
いそう好評です。

例によって10分ほどでできるセルフチェックテストのスコアで、自分のタイ
プが9つのどれかが決まります。複数のタイプが同じようなスコアになった
場合は、その判断の仕方も指南してくれます。さて、その9つとは

 タイプ1:完全主義者
 タイプ2:献身家
 タイプ3:達成者
 タイプ4:個人主義者
 タイプ5:観察者
 タイプ6:堅実家
 タイプ7:楽天家
 タイプ8:統率者
 タイプ9:調停者
です。

この本の素晴らしいところは、このタイプ別に「自分に対して留意すべき
点」「相手に対して留意すべき点」がきわめて実務的にクリアに書かれてい
る点です。
ちなみに私は「タイプ3」ですが、自分の課題・留意点は「人の話をよく聞
く」「人と誠実に関わる」です。一方で、タイプ3の人とかかわる時は「ま
ず、努力や成果をほめる」だそうです。そして、このタイプが嫌う事は「の
ろいこと」「非効率」と続きます。
一方でタイプ9の人とかかわるときは「あなたといるとホッとする」がキー
ワードで、大事にしたいことは「調和」、嫌いなことは「急激な変化」です
ので、タイプ3のそれとは真反対です。

これが「血液型性格診断や星座占いと何が同じで何が違うか」、という裏声
はもちろんありましょうし、聖心女子大の鈴木秀子名誉教授が中心となって
学会があるくらいですので、科学的な説明もつきましょう。それよりこれよ
り、この出口のない「人間関係のややこしさ」にあって、少しでも「使い勝
手の良い」道具となれば幸いです。
<文責 シバタ>

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