選者の先生がたおよび作者名の敬称略で失礼いたします。
<入選句>
いちばんの奇跡あなたにあえたこと
(印象吟・坂下 清 選・佳作)
疑似餌にも釣られるほかはない孤独
(前句付「溺れる者は藁をも掴む」みぎわ はな 選・佳作)
さては母だな父の態度がやわらかい
(読者柳壇「差し金」荒川 八洲雄・安藤 紀楽 選・佳作)
泣きつつも電卓はじく赤い爪
(第14期・12回 川柳マガジンクラブ誌上句会「魂胆」
新家 完司 選・六十五秀)
残り香が語るおんなのはかりごと
(第14期・12回 川柳マガジンクラブ誌上句会「魂胆」
前田 咲二 選・七客)
いつも楽しみな「柳豪のひとしずく」は鈴木 順子特集。
今月号の表紙の写真は、
きれいなお着物で笑顔いっぱいの順子さん。
土下座した土の臭いを忘れない
現実よ敵に抱かれてでも生きる
気がつけば子に手加減をされている
かくれんぼそれから母が見つからぬ
約束の午後から雨になるという
句に昇華するまで君と戯れる
透明になれたら君にまといつく
明日もまた生きる目覚ましセットする
疑うのはやめたご飯が不味くなる
なかなかの鬼だ握手をしておこう
「川柳アンソロジー」は、
失明し、病のなかにあって句をつくり続けられた影山 晴美。
ご夫婦の深いつながりをも感じさせられる。
眼が覚めて夢では見えた眼が見えぬ
若い日に買った苦労で耐えている
妻の手でようやく回る俺の独楽
水清き故郷に住まぬ訳を持つ
喜びは自分で出来た身繕い
病室で残すご飯にそっと侘び
灯を消せば妻の寝息とキリギリス
もう会えぬ人のカルテが閉じられる
遺影笑むあの世いったいどんなとこ
思い出があってよかった寝たっきり
みなさんの入選句ほか掲載句 より
会場が手話と歌った「花は咲く」 (風間 なごみ)
神のいる世界に同時多発テロ (西山 竹里)
父叱り母は裏口開けて待つ (原 脩二)
かあさんがいるんだ鬼もにんげんも (日谷 寛)
洒落たやつ散りぎわまでも花がある (すずき 善作)
風少し吹いて秘密がほどけだす (勝又 恭子)
幸せが金で買えたら不幸です (呟 薫)
ひどい目にあったと何かうれしそう (小林 ふく子)
魂が呼び合ったのでしょうきっと (森吉 留里惠)
二人だとこんなに水が透きとおる (米山 明日歌)
ミサイルが次々落ちる水たまり (月波 与生)
一人めしひとりの音の中で食う (小池 楽人)
恋人が冥土喫茶で待ってます (斉尾 くにこ)
気づかれぬようにわたしを消しておく (句ノ一)
好き好きと言えたら世界ちがったか (松田 タ介)
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