ソムタム学級通信 ★さちえのタイ生活★

2010年6月より青年海外協力隊、養護隊員としてタイへ。バンコクより北へ450キロ東北部のコンケンで日々試行錯誤の記録。

アヒル

2012年02月28日 16時50分15秒 | コンケン 第9特別教育センター
ここ数ヶ月は配属先で、玄関に自転車をとめず、裏口にとめている。
なぜかというと、裏口は食堂とつながっていて、食堂を通っていくことで
食堂のおばちゃんや、食堂で朝ご飯を食べる人たちに会っていけるから。

さて、家に帰ろうと裏口に向かうと、さちえさちえと呼ぶ声がする。
配属先には、運転手がいて、他にも大工仕事やなんでもこなす働きをする男の人たちがいる。
正規の公務員ではないこの人たちは、職員とは一線を画したように
配属先の隅っこの壁の間にまるで基地のような居場所を作っている。
それが、食堂のすぐ横。

その人たちに呼ばれて近寄ると、何かさばいている。
     

「ペッ」 
ペッとはあひるのこと。
アヒルをさばいている。
      

恥ずかしながらだが、こうやって生き物をさばくのを最初から最後までまじまじと見るのは初めてで
アフリカに派遣された同期の隊員は
「鶏は自分でさばけるようになった。」
「生きた鶏を買ってきてさばいて食べる」
なんて言うのだけど、タイに派遣された私はそうする必要が全くなく、
アフリカ隊員には胸を張って言えないが、どぎまぎして見た。
     
     


一羽いくらするの?と聞くと
「300バーツ(900円程度)くらいかな。でもこのアヒルは家から持って来たからタダだよ。」
といいながらみごとな手さばきで、テキパキとさばいていく。
      

日本にもアヒルはいるか、アヒルを食べるかときかれ、
中華料理の北京ダックなんて、ひと皿3000円もする、というと
みんな 驚く驚く。



「ほら ほら これ。 両足。」とお茶目に笑って並べて見せてくれる。
      


すっかり解体されたアヒル。
心なしかしょんぼりしているような。
      


これが心臓 これが肝臓と教えてもらって、ああこの形、見たことあるある
スーパーでパックに入っていたこの固まり、
今この体からそがれたけれど、今の今まで生きていた臓器だと興味深く見る。
         

「ラープペッをつくる。ラープペッはラープムウよりうまいぞ。食べてみてごらん」
     

ラープは挽肉を炒めてバジルや香草、炒り米とからめるイサーン料理。
とってもおいしい、大好物の料理。
いつもラープムウ(豚のラープ)を食べるが、そのアヒル版を作るのだ。
アヒルのラープに、アヒルの唐揚げ、余すところなく全て食べるという。
くちばしも、唐揚げにすると美味しいのだと教えてくれる。
     


挽肉を作るのを手伝わせてもらう。
ガンガン 包丁で切る。
           


炭火の上にフライパンを置いて、挽肉、臓物、皮、肉は全て炒める。
男たちの料理!という感じでかっこいい。
    


炒めた肉には、臓物も、皮も、食道のような管も、全てがごったまぜ。
アヒルの命を作っていた細胞が、体の機能が、全てごったまぜ。
      


それに唐辛子、レモン、ナムプラー、ねぎと香草、バイマクルーという葉っぱをくわえて
ラープペッのできあがり。
さっそくチム(味見)。 アロイ アロイ!(おいしい)
豚よりもこってりとして 地鶏ならぬ地アヒルなのか、こりこりとしておいしい!
      


レモンのような実がなる木の葉っぱ「バイマクルー」を揚げると、いい香りが漂う。
その、バイマクルーと一緒に食べると美味しいのだと教えてくれた。
    






さて、残った骨や頭、足。
これは唐揚げになる。
頭だって食べちゃうのだ。 
こんなのを見ると、グロいとか、気持ち悪いとか、言う人もいるだろうし、
日本の私の生徒に見せても間違いなく気持ち悪いと騒ぐだろう。
でも、それを食べる、全て食べる、食べて私たちは生きている。
命を残さず使い切るなんて、すばらしい。
     


だから、ほら、見なさい! じっと見なさい! ホラホラホラ! って 言いたい。
全部食べちゃうのよ、全部、全部。
     


香草と一緒に油でカラリと揚げる。
      

まあ、おいしそうなアヒルの唐揚げ!
     





血液も残さず食べる。
アヒルの血に、香草をもみもみして
   

できあがったラープペッをまぜる。
血だから当然、真っ赤っか。
    

血? 血? 大丈夫なの?血飲んでも大丈夫なの?
と聞く私に、うまいぞ、ふつうのラープより血にまぜた方がうまいんだと
食べて見せてくれる。
     


さあ、食べてみてと言われ、口に入れると、あらホント。
みんなの言う通り。
まろやかでまったりとした口触りで、これはアロ~イ。
     





今日ははじめて知る食べ物、食べ方ばかり。
裏口を通るようになって、声をかけてもらうことも多く、
普段は接点のないこういうみなさんとも顔を合わせることができる。
こんな楽しい男の料理会にも招いてもらえる。
      


つい最近、食堂で見た豚の足。  (→ 過去ブログ 「豚の足」
あの時も、生きているものを口にして、食べているのだと実感した。
今日も、そう。
血まみれで解体されているアヒルを見て、臓器を見て、割られる頭を見て
こうやって命をさばいてとりわけていってそれを口にするのだと実感する。

この写真たちを直視できない日本人ってたくさんいると思う。
私も、そうだった。
だけど、パックの中に入っている肉は食べられても、解体するのは見たくない、
目の前で解体を見た肉は口にできない、食べている肉が何か、
その臓器が一体何かわからない、それっておかしなことなのだと思う。


見て見て、ほら、
臓器があって、血があって、どくどくと脈打つ心臓があって、
毛があって、骨があって、それを食べて生きる。
サバサバときれいに解体し、すべてを美味しく全て食べてしまう、
この人たちってすばらしい。 本当にすばらしい。

      




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