ソムタム学級通信 ★さちえのタイ生活★

2010年6月より青年海外協力隊、養護隊員としてタイへ。バンコクより北へ450キロ東北部のコンケンで日々試行錯誤の記録。

感激したこと

2011年05月20日 13時24分29秒 | コンケン 第9特別教育センター


午後の個別学習。
終えたときは、必ず保護者に報告をし話をする。
今日学習したこと、どんなことをしたのか、なんのためにしたのか
興味を持ったのは何で、楽しく取り組めたのは何か、苦手としているのは何か、
一緒に学習することで私が気づいたこと、これからも続けたいことなど。
ただ、どうしても毎回十分に言い切れない。
言いたいことの1割が言えるかどうか。
     




ある日、保護者が言った。
これまでに、私をうれしくさせてくれた子、その保護者だ。 (→ 過去ブログ 「必要とされること」 「机いっぱいの落書き」
「クーサーイ 私に紹介してちょうだい。」
何を紹介するのかと、話が飲み込めず、何度か聞き返すうち分かった。

「この子は家で何を見てあげたらいいの?
クーサイ、私がこの子に家で何をさせたらいいか、
どんなことに気をつけてやらせたらいいか、教えてちょうだい。」
ということ。
「紹介してちょうだい」は、教えてほしいという意味合いだったのだ。


私、これには深く感激してしまった。
とても、とても嬉しかった。

感激したのは、2つのこと。
1つめは、この保護者であるおばあちゃんが、孫の教育に熱心で
一生懸命であること。
孫の成長のために、力を伸ばしてあげるために、自分が出来ることは何かと
家でもやらせたいと、一生懸命になっていること。

もう1つは、私にそれを訊ねてくれたこと。
家庭でも、家族がこういう風に見て接してくれたら、
やらせてくれたら、と望むことはある。

本来、教育は教師(学校)・保護者(家庭)が共通理解をもち、
同じ目標を持って子どもを育てる、それが
最も望ましく子どもを成長させ、教育効果が高いもの。
特別支援の世界では特に、学校での学習を理解してもらい、
保護者の思いを理解し、
同じ思いをもって子どもと関わっていくことがとても重要。
とても敏感な子たちだから。

だけど、互いに共通理解をもつということは、
言葉の通じる日本でもなかなか難しいこと。
少しずつの積み重ねで関係を築いていったり、
子どもが変化することによって保護者の理解を得たり、
最初からうまくいくことはまれで、なかなか時間のかかるもの。


それが、このつたないタイ語を話す私に、保護者が
「私がすべきことを教えて。」
と、聞いてくれるのだ。
私と共通理解をもってこの子に接したいと思ってくれ、
私のやり方を信頼して言ってくれている言葉だ。


伝えたいことはたくさんある。たくさんたくさんある。
感激でのどが詰まらせながら こんなことを言う。


「この子がやろうとすること、考えていることがあります。
 それが、見えるまでじっと待ってあげてください。
 先に大人が手を出してしまうと、自分ではやらなくなります。
 伝わらないのだろうと、あきらめてしまいます。
 こうしたい、ああしたいという意思表示もしなくなります。
 この子はすごくよく考えています。そしてよく分かっています。

 たとえば、私は学習を始めるときには必ず
 “クーサーイはきみのことが好きです。そうだよね?”
 と聞きます。
 それに対して、すぐに答えてくれるときもあれば、
 返事もせずに私の手を離れ、プイと歩き出すときがあります。
 黙ってみていると、壁のカレンダーの数字ステッカーを動かし、
 次に自分の顔写真を動かし、そしてだいぶたってから
 “そうです”と言いました。

 すぐに返事をしないのは、この子があれをやってこれをやってと、
 自分の中でやるべき順番があるからです。
 聞いていないわけでもないし、無視しているわけでもありません。
 順番があるだけです。
 臨機応変に、とりあえずその場だけ「はい」と対応するうまさがないので
 そこが誤解されてしまいますが、本当は誠実に相手に向き合っています。

 だから、行こうとする先に手を引っ張らず、言おうとすることを先に言ってしまわず、
 せかさずに待って見てあげてください。
 とても賢い子です。」
      


やはり、これも伝わったのは1割2割というところかもしれない。
でも、この保護者は黙って、いつもよりも真剣に、時折目を見開いて聞いてくれた。
そして、
「コップンマーックカ クーサーイ」(=ありがとう、クーサーイ)
いつもよりも丁寧なワイ(タイ式のお辞儀)をして。


私は大きなことはやっていない。
やれていない。
だけど、自分の信じている大事なことがある。
それは、きっと伝わる人には伝わり始めているのだと信じたい。

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