中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

タバコ

2006-08-24 09:16:26 | 身辺雑記
  若い頃の私はよくタバコを吸っていた。一日に20本、会議などがある時には30本くらいは吸った。日に20本以上吸うとヘビースモーカーだと聞いたことがあるが、それはともかくとして、今に思うとだらしないスモーカーだった。朝目覚めると布団に入ったまま一服、洗面を済ますと一服、食事が終わると一服、家を出て電車に乗るまで一服と言う具合でけじめがなかった。特に歩きながら吸うなどマナーとしてはなっていなかった。文化祭の前に生物教室でタバコを吸いながらクラブの生徒達を指導していて、たまたま教室に入って来た学校長に叱られたこともあった。とにかくだらしがなかった。今思い出しても我ながら嫌悪を感じる姿だった。よく格好がいいからという動機でタバコを吸うようになったという話を聞くが、私の場合はみっともないと言う他はなかったと思う。

 それでも何度か禁煙を試みたこともあるが、結局は失敗した。アメリカの作家のマーク・トゥエーンが「禁煙など簡単なことだ。わたしはこれまで何回もやっている」と言ったそうだが、私もその類だった。そんな私もとうとうタバコと縁を切ることになった。30歳になる直前に、心臓神経症とやらを患い、いくらタバコによって神経を鎮めようとしてもかえってイライラが募るので、ある日、手元にあったタバコの箱を、まだ何本か残っていたが、「ええい、止めた」と屑箱に放り込んだのが10年近く親しんだタバコとの別れだった。健康面に問題があったことが幸いしたわけだ。その当時、現在の日本たばこ産業株式会社(JT)は日本専売公社と言ったが、そのタバコ工場が、高槻あたりだったろうか、京都と大阪の間の国鉄(現在のJR)の沿線にあって、そこに「今日も元気だ。たばこがうまい」と大書した大きな看板が、走り過ぎる電車の乗客に呼びかけていた。こんな広告はもちろん現在では許されないが、生涯タバコを離せなかった私の父は「タバコは体によくないことは分かるが、あの言葉はうまくできている。本当にそうだ」などと言っていた。私もあの広告の文、今で言うキャッチフレーズは、一面の真実をついていたと思う。健康な時にはなかなか止められないものがタバコで、「意志が強かったのですね」などと言われたこともあるが、そんなことではなかったことを私自身が一番よく知っている。

 今に始まったことではないが、近頃は女性の喫煙者が増えているようだ。喫茶店などでも、若い女性の5人に3人、あるいはそれ以上はタバコを吸っている。それもそっと吸い込んで、そっと吐くと言うような慎ましやかな吸い方でなく、未成年の頃から親しんでいるのではないだろうかと思わせる吸い慣れた様子を目にすることが多い。私は中高年の婦人の喫煙を見ても特にどうとも思わないが、若い女性の喫煙を見るのは好きではない。偏見と言うのではなく、やはり若い女性の多くが将来母親になることを考えると、母体保護のためにも有害だと思う。喫煙は女性ホルモンの分泌にも悪い影響があると説いて回っている医師がいることを新聞で読んだこともある。喫煙の習慣はなかなか断ち切れないものだから、母親になっても続けることも少なくないだろう。幼い子を膝に寝かして喫煙している若い母親を見たことがあるが、その児はそれこそ受動喫煙の害をまともに受けているわけで、無神経なその母親が腹立たしかった。疫学的には、20年くらいしたら女性の肺癌発生率はかなり高いものになるだろう。