中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

臭豆腐(choudoufu)

2006-08-22 08:34:30 | 中国のこと
 上海の西隣の浙江省の省都杭州の街で、上海の友人の唐怡荷に案内されて、夕食をとる店を探していると、これまで経験したことのないような強烈な悪臭が漂ってきた。わあ、これはたまらない、いったい何だと思っているうちに、やがて路傍でその悪臭を発するものを売っている所にたどり着いた。見ると4、5センチ角の薄い豆腐のようなものを揚げていて、鼻が曲がりそうな臭いを発している。怡荷に聞くと「臭豆腐ですよ」と答えたので、いつかテレビで紹介されていたことを思い出し「ああ、これが・・・」と思った。その番組ではさまざまな中国の臭い食品を紹介していて、臭豆腐を揚げているシーンもあったことを覚えている。怡荷は「買いますか」と言ったが、とてもとてもという気分で断った。

 しばらく歩いてある店の前に来ると、怡荷は、ここにしましょうと言って中に入った。入った途端、あの臭豆腐を揚げる臭いが店内に立ち込めているのが分かり、一瞬後悔した。この店はセルフサービス式で、好きな食べ物を注文して代金を払ったら、別の窓口で注文した品を受け取るようになっている。私は勝手が分からないので怡荷が適当に見繕って持ってきてくれた。彼女の皿を見ると例の臭豆腐が乗っている。そして彼女は美味しそうにそれを食べた。それを見た私は、せっかくの機会だから食べてみようと決心し、恐る恐るかじってみた。果たしてあの臭いが口から鼻へ抜けてきてたじろいだが、我慢して2つ食べると少し慣れてきて、意外にうまいと感じられもした。それ以上は食べなかったが、多分これは何度か食べていると好きになって、やがては病みつきになるかも知れないとも思った。

それ以後、北京の繁華街である王府井の裏通りでもこの臭いを嗅いだことはあるが、食べたことはない。紹興酒で有名な浙江省紹興でも、この臭豆腐は名物だと聞いたことがあり、今年の秋には紹興を訪れる予定なので、食べてみようかとも考えているが、どうなることか。私の長男が以前仕事で台湾に行った時、街の屋台の食べ物はどれも美味しかったが、どうしても食べる気がしなかったものがあったと言っていたのは、どうやら臭豆腐らしい。もっとも、雲南のレストランで「これは臭くない臭豆腐です」と言って出されたものはまったく臭くなく、おかしなものでかえって拍子抜けして、こんな臭豆腐もあるのかと思った。

前にテレビで中国の豆腐について紹介する番組を観たことがあるが、中国では豆腐製品は非常に多いらしく、製造、加工の方法も多様のようだ。臭豆腐は、発酵学者で世界中の臭い食品を食べ歩いた小泉武夫氏の著書「くさいはうまい」(文春文庫)によると、納豆菌や酪酸菌で発酵させた豆腐を、発酵している塩水に漬けて発酵・熟成させて作るものだと言う。これだけ発酵を重ねたら臭くなるのも当然だろう。作り方は地方によって違うらしいが、それにしてもなぜこのような食品を考えついたのか想像できない。もっとも日本にも納豆のような臭い食品はあり、小泉氏によると世界にはさまざまな臭い食品があって、臭豆腐などはまだましな部類らしい。

中国人の友人達に好きかと尋ねたら、皆好きだと答えたから、どうやら臭豆腐は中国の国民的食品なのかも知れない。