中国は贋物大国だと思っている人は多いのではないか。贋物と言う言葉を聞くと中国を連想することもあるかもしれない。別にこれは誇張でも中国に対する根拠のない侮蔑でもなく、実際中国には贋物が多い。中国人も認めているほどだ。しかし、贋物は中国に限ったものではなく、古今東西贋物がなかった国も時代もないだろう。現在では贋札作りを国営事業にしている国さえある。
中国に行くとよくCDを買う。初めからコピー製品だということを承知で買う。60元(約900円)くらいだと本物らしいが、コピーだと20元(約300円)くらいで、コピーと言っても、カバーの装丁もちゃんとしていてビニールで密封してあり堂々としている。音質も問題ない。コピーを求めること自体が不届きだと言われそうだが、何しろ店にあるのはコピーと思われるものばかりだし、見比べる本物がそばにあるわけでないから仕方がない。いや、聴くことができれば安い方がいいと思ってしまう。10元くらいだとさすがに粗悪品かと警戒して買わない。
贋札も多いようだ。西安で宿泊したホテルの前に、副食品専門の大きな市場がある。魚介類、肉類、乾物、果物、野菜などありとあらゆるものを売っていて、非常に活気溢れる所だ。この市場を歩きながら目を楽しませていると、突然、すぐそばで女性のわめき声が聞こえた。振り返ってみると売り手らしい中年の女性が、男に向かって罵声を浴びせている。何事かと思ったらガイドの邵利明が「贋札らしいです」と教えてくれた。しかし、別に警察を呼ぶようなことはなく、おそらくその贋札を客に突き返して終わったようだった。
私も贋札を摑まされたことがある。西安の寺院で邵利明に20元札を渡して入場料を払ってもらおうとしたら、窓口で贋札だと返された。その前に雲南に行った時にどこかでやられたらしい。その札を本物と見比べてみると、紙質や色、印刷の具合など贋物とはっきり判る代物だったが、面白いので取っておくことにした。この贋札はあまりに粗雑なものだが、高額紙幣になると精巧なものもあるらしい。
上が贋の20元札、下が本物である。贋札は横の長さが僅かに短い。
裏面。右側にある透かしが、贋札の方でははっきり見えるのがご愛嬌である。
100元札が一番高額だが、これを出すと露骨に裏表をためつすがめつしたり、指で弾いたりして調べられてちょっと鼻白むこともあった。有料道路の料金所でもやっていたからよほど贋札が多いらしい。日本なら大騒ぎになって警察行きだが、中国では突き返せばそれで済むようだ。もっともある日本人観光客が贋札と知りながら使って、ばれたので逃げて捕まり警察沙汰になったことがある。その男の参加したツアーを手配した中国の旅行社の友人が処理に困っていた。
骨董品、古美術品になると実に手の込んだ贋物が多いらしい。「人民中国」で読んだことがあるが、ハイテク技術を使って調べても専門家が騙されることもあるような「高級品」もあるそうだ。そこまでしたら本物と贋物の違いは何だろうということになり、贋物でも値打ちがあるのではないかとさえ思ってしまう。要はあまり高価なものは買わないことだし、買うのならよほど信用の置ける店にすることだ。だが、安いものなら贋物であることを承知で買うのも案外楽しいかもしれない。桂林の近くの観光地で、どこにでもいる「千円屋」(日本人観光客に何でも千円と言ってみやげ物を売る商売人)が紫水晶のような高さ2、30センチの塊を売っていたが、明らかにガラス製のものだった。しかしそれを承知なら、きれいでちょっとした置物にもなるし、1000円は特に高くもないと思った。観光地には贋物が多い。
雲南省の麗江に行った時のガイドの青年が「中国には人間以外は何でも贋物があります」と言ったのはおかしかったが、案外人間の贋物もあるのではないだろうかと半ば本気で考えた。最近読んだ本に、日本のある企業が中国での合弁事業のプロジェクトの進出の条件として、地域の市長の確約を強硬に要求したが、市長は多忙で会わせるのが難しく、中に立った中国人が困った挙句、市長によく似た贋者を仕立てて急場をしのぎ、後でばれて計画がご破算になったという話が出ていた(孔健「日本人は永遠に中国人を理解できない」:講談社」)。やはり人間の贋物もあるのだ。
中国に行くとよくCDを買う。初めからコピー製品だということを承知で買う。60元(約900円)くらいだと本物らしいが、コピーだと20元(約300円)くらいで、コピーと言っても、カバーの装丁もちゃんとしていてビニールで密封してあり堂々としている。音質も問題ない。コピーを求めること自体が不届きだと言われそうだが、何しろ店にあるのはコピーと思われるものばかりだし、見比べる本物がそばにあるわけでないから仕方がない。いや、聴くことができれば安い方がいいと思ってしまう。10元くらいだとさすがに粗悪品かと警戒して買わない。
贋札も多いようだ。西安で宿泊したホテルの前に、副食品専門の大きな市場がある。魚介類、肉類、乾物、果物、野菜などありとあらゆるものを売っていて、非常に活気溢れる所だ。この市場を歩きながら目を楽しませていると、突然、すぐそばで女性のわめき声が聞こえた。振り返ってみると売り手らしい中年の女性が、男に向かって罵声を浴びせている。何事かと思ったらガイドの邵利明が「贋札らしいです」と教えてくれた。しかし、別に警察を呼ぶようなことはなく、おそらくその贋札を客に突き返して終わったようだった。
私も贋札を摑まされたことがある。西安の寺院で邵利明に20元札を渡して入場料を払ってもらおうとしたら、窓口で贋札だと返された。その前に雲南に行った時にどこかでやられたらしい。その札を本物と見比べてみると、紙質や色、印刷の具合など贋物とはっきり判る代物だったが、面白いので取っておくことにした。この贋札はあまりに粗雑なものだが、高額紙幣になると精巧なものもあるらしい。
上が贋の20元札、下が本物である。贋札は横の長さが僅かに短い。
裏面。右側にある透かしが、贋札の方でははっきり見えるのがご愛嬌である。
100元札が一番高額だが、これを出すと露骨に裏表をためつすがめつしたり、指で弾いたりして調べられてちょっと鼻白むこともあった。有料道路の料金所でもやっていたからよほど贋札が多いらしい。日本なら大騒ぎになって警察行きだが、中国では突き返せばそれで済むようだ。もっともある日本人観光客が贋札と知りながら使って、ばれたので逃げて捕まり警察沙汰になったことがある。その男の参加したツアーを手配した中国の旅行社の友人が処理に困っていた。
骨董品、古美術品になると実に手の込んだ贋物が多いらしい。「人民中国」で読んだことがあるが、ハイテク技術を使って調べても専門家が騙されることもあるような「高級品」もあるそうだ。そこまでしたら本物と贋物の違いは何だろうということになり、贋物でも値打ちがあるのではないかとさえ思ってしまう。要はあまり高価なものは買わないことだし、買うのならよほど信用の置ける店にすることだ。だが、安いものなら贋物であることを承知で買うのも案外楽しいかもしれない。桂林の近くの観光地で、どこにでもいる「千円屋」(日本人観光客に何でも千円と言ってみやげ物を売る商売人)が紫水晶のような高さ2、30センチの塊を売っていたが、明らかにガラス製のものだった。しかしそれを承知なら、きれいでちょっとした置物にもなるし、1000円は特に高くもないと思った。観光地には贋物が多い。
雲南省の麗江に行った時のガイドの青年が「中国には人間以外は何でも贋物があります」と言ったのはおかしかったが、案外人間の贋物もあるのではないだろうかと半ば本気で考えた。最近読んだ本に、日本のある企業が中国での合弁事業のプロジェクトの進出の条件として、地域の市長の確約を強硬に要求したが、市長は多忙で会わせるのが難しく、中に立った中国人が困った挙句、市長によく似た贋者を仕立てて急場をしのぎ、後でばれて計画がご破算になったという話が出ていた(孔健「日本人は永遠に中国人を理解できない」:講談社」)。やはり人間の贋物もあるのだ。