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第一書房巡礼行記 最後の出版秋山兼蔵の『東亜交渉史論』

2009年10月16日 00時00分32秒 | Weblog
敗戦まで後1年となった1944年(昭和19年)、第一書房社主・長谷川巳之吉は、戦局の悪化に伴い自分の求める出版を続けていくことが不可能となったと判断したのでしょう。
第一書房の有する版権すべてを大日本雄弁会講談社に譲り、商売をたたみ戦火を逃れ鵠沼へ転進しました。

その彼が、最後に手がけた書籍が秋山兼蔵の『東亜交渉史論』でした。
敗戦迫る1944年(昭和19年)3月20日のこと。
初版4000部で、A5判、紙カバー付、487ページ。
当時としては大冊で、頒布価格は6円20銭でした。



『東亜交渉史論』 秋山謙藏著 1944年(昭和19年)3月20日 初版 4000部
 215×158ミリ A5判 紙カバー 487ページ 6円20銭


この秋山の労作は、東の亜細亜を西の欧羅巴が侵略する歴史を大東亜という当時の大日本帝国の侵略思想を元に解説した歴史書です。
随、唐時代から西洋諸国との邂逅を含めて概括した大著で、15世紀前後の中世の大判地図3枚が折り込まれています。

物不足の昭和19年にあっても、大東亜の思想を喧伝するための著作ですから、十二分に手間暇コストをかけて制作された書籍です。
第一書房の有終の美、最後を飾るにふさわしいものとなりました。

最後の印刷会社は、長年に渡り第一書房の印刷を担当した東京都牛込区山伏町にあった萩原印刷でした。
製本会社名は記されていません。
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