ご機嫌公論

フリーランスのライター兼編集者・ロイ渡辺のBLOG。
締め切り間際に更新されていても、それはあくまでも「息抜き」。

ちょいと真面目な話

2004-06-20 00:30:12 | Weblog
渾身のバカ話にもイマイチ反応の鈍いこのブログなので、
どうせなら真面目な話も書いてやる! と半ば切れ気味に書いております。

先日アップした古尾谷雅人氏の記事に、
みか氏がこんなコメントを付けてくれました。

ずっと 「取材を受ける人を楽しませる」
というあなたの言葉について考えています。

本当に、侮れません、この人。
さらりと、物事の本質を抉り出します。
栃木県にはうかつに近づけません。

さて。

「芸術の本質は、太陽の光のように万人に平等だ」
これは、取材に岡本太郎宅を訪れたとき、敏子さんに聞いた、
岡本太郎氏の口癖(エッセンスだけ拝借)です。
それまで別に岡本さんのことは好きでも嫌いでもなかったのだけれど
この言葉に触れたとき、オレは彼のことを大好きになりました。

芸術家が、何がしかの糧によって生きていく限り、
芸術を「売る」ことは、致し方ないこと。
逆に言えば、自分の生み出す芸術作品で食っていけなくては
プロと言えないわけで。
でも、しかし、それでも、芸術は太陽の光のように、
誰にでも降り注がれて、初めてその価値がある。
その矛盾点に、オレは憧れちゃうしぐっとくるわけです。(注:1)

というのも、オレのしている仕事が、
どこをどうこねくり回しても「誰かにとっての有料」だからです。
雑誌の記事にしても、単行本にしても、
無償で閲覧できるウェブの記事にしてもクライアントがオレの文章を買ってくれるわけで、
どこかに必ず「金銭のやり取り」があるのです。

ということは、書き手であるオレと、
その文章を読む読者の間には、
目を凝らさなければ見えないにしても、有料という名の夾雑物が横たわってるわけです。

つまりオレの生み出すものは、決して芸術作品にはなり得ない、ということです。

それは「少しの悲しみ」であり、
プロとしての最低限の「矜持」でもあり、
エンターテイナーであろうとするオレの、依って立つスタンスである、のです。


んで、やっとこさ最初の「取材を受ける人を楽しませる」ですが。
取材を申し込むときのこっちのスタンスは、
「面白い記事を書きたい」です。(注:2)
んでもって、先方のスタンスは
「記事になることで自分のパブリシティになる」です。
ここには、幸いなことに「有料」が横たわっていないんです。
取材の瞬間にだけ、経済活動が停滞するんです。

だからこそ、取材の席で、オレは相手を楽しませてみたい。
同じ取材を受けるにしても、有意義だったし楽しかった、と
相手に思ってほしい。
もうこれは、ポリシーとかではなく、
そうしなくちゃ気がすまない、という
駄々っ子レベルの願望なのです。
ほんのちょびっとだけでも、オレの行為が
万人に平等でありえる瞬間なわけです。


オレの書く記事を読んで、読者の誰かがどこかで
ちょっと「ほう」とか
「へぇ」とか「くすっ」とか、
そーいう動きがあってくれれば、それは無上の喜び。
でも、そういう読者の顔が見えないのが大前提の、読み捨て記事書きがオレなのです。

だから、取材のときくらいは、
相手を好きになりたいし、
好きになってもらいたいし、
楽しみたいし楽しませたい。

ただただ、それだけなんですよ。



注:1 なので、岡本氏はなるべく自治体などに作品を売り、
それを公園に展示するなどして、誰にでも見てもらえるようにしたかったそうです。
今でこそお宅は記念館形式で運営され、観覧料がかかってしまうのですが……。

注:2 ワタクシ、ジャーナリストではございません。
社会正義とか、そーいうことで文章を書くことがないので、こう言い切ります。

注:3 だから、締め切りもギャラも文字数限定もない、こーいうところに書く文章は苦手です。
ね、面白くもなく、だらだらしちゃうでしょ? くすん。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
多分 (みか)
2004-06-20 00:49:36
媒体に載ったインタビューを読むとき、大抵の人はインタビュアーにはあまり気を留めていないのではないかと思うのです。

インタビューを受けてる方に注目するのは当たり前のことだけれど。

だけど、こういうふうに、じたばたしつつもどこか潔く仕事をする人が私たちのもとへ数多の興味深い記事を届けてくれているのかと思うと、非常にうれしくなります。

きっちりした大人だな。

(あくまでも仕事に関して、だ)

ありがとう、礼を言うぞよ。



湘南新宿ラインで新宿や渋谷に出るのも簡単となった今、栃木県もまんざら捨てたものではありません。
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ていうか (jojo)
2004-06-20 03:33:20
バカ話に渾身の力を込めちゃうところに問題があるんじゃないのかと。

職業病だな。
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論理展開に (ロイ)
2004-06-20 04:04:29
破綻、もしくは過不足があることを、

冷静に指摘してくれないだけ、

武士の情けを感じるので、



>みか

仕事に関してだけか!



>じょー

そこに突っ込むか!



のようなふたつのリアクションは、

自主的に差し控えさせていただきます。
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差し控えるって言いながら (みか)
2004-06-20 07:58:03
やっぱそうリアクションしたいのか。

したくてしたくてうずうずしてるのか。

仕事に関してだけだな、うむ。
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ひねくれてますが (shunsuky)
2004-06-21 17:29:59
僕はひねくれものなんで、インタビューを読んだり聞いたりするときは、インタビュアーの聞き方のほうが気にかかったりします。答えがおバカなのより問いがおバカなほうが滑稽ですもん。いつもそっちのほうでムカついたり、失笑したりしてます。インタビューされるのは素人でもできるけど、インタビューするのはプロの仕事だと思います。



あと、本ほど無料で万人に読まれる体制が整った芸術って無いと思いますよ。公立図書館網なんてすごいもんですよ、夢のようです。あれじゃ本があまり売れないのもしかたないと思うです。
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そうなのよねぇ (ロイ)
2004-06-22 11:55:10
>しゅんちゃん



確かに、そのとおりなのですよ。

作家が「図書館納入冊数」だけの売り上げで食っていければ

きっと話はまた違ってくるんだろけど……。



ときに、ブログはどうしちゃったの?
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ああ (shunsuky)
2004-06-22 21:07:12
ごめん、私のブログは全部消しちゃったの。ううん、わけはきかないで、だってなんでもないから。あ、でも私、ロイのblogだいたい毎日読んでいるのよ。だってロイの書くこと好きなんだもん
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うれしいけど (ロイ)
2004-06-22 22:00:18
そんなこと言うとギドりにジェラシられちゃうわん。
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