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経産省は「大アジア主義」政策を撤回しろ!!

2007年05月15日 14時36分18秒 | 社会と教育
  我が国の政府というのは、「自国民」をあまり愛していないということがはっきりわかる政策が登場しました。以前、このブログでもさんざん議論になったものの続編です。

平成19年度「アジア人財資金構想」について
http://www.kyushu.meti.go.jp/press/19_4/19_4_16.htm
  
  どんな企画かは、大体想像がつくでしょうが、以下に内容を抜粋します。

>我が国企業に就職意志のある、能力・意欲の高いアジア等の留学生
>に対し、奨学金や人材育成から就職支援までの一連の事業を通じ、
>産業界で活躍する専門イノベーション人材の育成を促進する

  というのがお題目です。具体的な内容も見てみましょう。

--------以下引用--------

  本構想では、次の2つの事業を実施します。

高度専門留学生育成事業

  企業ニーズに即した産学連携による専門教育や、ビジネス日本語教育・日本ビジネス教育、インターンシップ、就職支援等、必要な知識や技能に関する教育を行う特別なプログラムを実施する、大学を主体とした産業界等と連携し構成されるコンソーシアムを支援します。

高度実践留学生育成事業

  各地域にて複数の大学と産業界等が連携して留学生へのビジネス日本語教育・日本ビジネス教育、インターンシップ、就職支援等の特別なプログラムを実施する広域的な事業を実施します。

--------引用以上--------

  もちろん、留学生の方に奨学金もつけます。

http://www.meti.go.jp/information/downloadfiles/c70412d05j.pdf
  
  以前こちらでこの話題を取り上げたときは、「1ヶ月30万円」などというふざけた金額でしたから、それに比べれば「月額12~17万」というのは多少控えめにはなっているようです。
  しかし、●「日本学生機構」の奨学金(大学生)が、月額4.5~6.4万円(もちろん返済義務あり)なのと比べると、破格の待遇です。
  しかも、これにはまだ続きがあって、どうやらこのプログラムに参加した大学が授業料等を負担してくれるそうです。ずいぶん恵まれているもんですね。日本人の学生から入学金だの施設費だの搾り取って、外国人は授業料タダですか。馬鹿にするのもいい加減にしろと言いたいです。

  こういう政策を役所が実施していることを、政治家のみなさんは知っているんでしょうか?

  どうせ、以前の記事と同じような全くかみ合わない議論が出てくると思うので、ここでもうはっきり言っておきます。「外国人を使う方が日本の(企業の)利益になる」という前提でコメントしている、またはそう推知できる方には、私は一切返答しません。私はそういう方に考えを変えていただこうなどと僭越な考えを持ってはおりませんので、悪しからずご了承下さい。

  本来、税金を使った産業振興・人材育成というのは、自国のためにやるべきものです。経済産業省がやろうとしていることは、アジアの人材のつまみ食いであり、これは国内の人材育成から撤退し始めたということでもあります。
  そういうことを言うと、「グローバル化した世界では国籍の枠を取り払って人材を求めないと競争力が保持できない」などと、まるで日経新聞の記事や外資系企業のコマーシャルみたいな反論をしてくる人がいます。なるほど、金を使って自国に人材を呼んでくればいいじゃないか、ということですね。
  現在、それでがたがたになっている国があるのをご存じありませんか?アメリカです。世界中から人材を集め、金利を相対的に高くして投資を集めて、やっと生きている国がアメリカです。
  今の日本の若い奴は使えない、だから外国から取ってこなくちゃダメなんだなどと言っている人間は、会社の利益しか考えていない我利我利亡者の「反日」人間です。そういう方は安倍首相が行っている教育改革とやらに「経済効率が悪い」という批判をするんですかね?
  中・短期的な人材の確保なら・・・などと言うなら、なおさらインターンだの大学4年間6年間だのいちいち手間をかけずに、外国人の即戦力を取ってくればいいだけの話でしょう。本来育てるべき「自国人」に金が行き渡らないという点が問題なのです。

  また、他国に日本シンパを作るという目的があるなら、内閣府が直轄すべきです。だいいち、経済産業省は自分から、

>我が国大学・企業のグローバル化、我が国の産業競争力強化

  という目的を掲げています。親日派の育成などという視点はないと思った方がいいでしょう。希望的観測で物事を判断しない方がいいです。

  それに、なぜ対象地域を「アジア」に限定するのでしょうか。役に立つ人材であれば、欧米だろうと、アフリカだろうと、世界中から呼べばいいではありませんか。
  それこそが真の「グローバル」なのではありませんか。
  経済産業省と文部科学省が勧めているのは、単なる大アジア主義です。そういえば、満州事変の前にも、中国やベトナムからたくさん留学生が来ていましたね。朝鮮に至っては、日本国の一部でした。経済交流が活発になり、「アジアは一つだ」という妄想を持つ人間が、内にも外にも増えてきているのでしょう。
  日本の戦前の大陸進出は、財閥の意向を受けたものでした。今、大企業が人材のグローバル化などと言っているのと同じです。日本で儲けるのは面倒だから、もっと効率よく儲けられるアジア大陸に進出しようということです。
  そして、朝鮮半島が年5%成長し、満州国が5カ年計画で大工業地帯に発展した影で、東北地方では身売りが相次ぎ、そうでなくても大多数の国民は仕事がなかったり、薄給だったりで、苦しんでいました。そういう満州や朝鮮の発展を日本の功績だと誉めそやかす人に言ってやりたいのですが、「アジア」のために「日本国民」が犠牲になってもよいという発想は、今回の奨学金の話と全く同じです。
  こうして、日本は戦争の時代に突入しました。今回も、非常に状況が似ています。

  「アジア」という言葉に踊らされてはいけません。我々はアジアではなくて「日本列島」に住んでいるのです。

  まず、この国に住んでいる人々を愛さなくてどうしようというのでしょうか?愛国心を国民に求めるなら、同時に政府も私たちを、これから育つ日本の若者を愛するべきです。


<問い合わせ先>

経済産業省(メールフォーム)
https://wwws.meti.go.jp/honsho/comment_form/comments_send.htm

経済産業省 産業人材参事官室
TEL:03-3501-2259

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13 コメント

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Unknown (ニゲロンパ)
2007-05-16 06:29:31
ろろさんのおっしゃる通りですね。

少子高齢化による若者の社会的負担の増加、バブル崩壊により長い就職難、膨れ上がる国の借金などで苦しんでいるのにこの扱いは酷すぎますね。

アジアの留学生は技術だけ盗んで帰国するだけでしょうに。
日本の若者を教育した方が費用面などで見ても効率がいいでしょうに。

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コメント有難うございました。 (わこ)
2007-05-16 12:33:33
コメントで問題提起していただく事で、次に書くことを、思い浮かべることが出来る事がしばしばです。お返事TBさせていただきますので、見ていただけたら幸いです。
今日のお説、私も賛成です。
アジアの留学生と言う名目で、入国させて、安い労働力として利用していると言う噂も有りますね。
それでは、親日家を養う事にさえならないと思いますし・・・・・
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Unknown (わこ)
2007-05-16 12:40:16
TB試みたのですが、通じにくいようです。
又折がありましたら、御覧下さい。
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>>わこさん (ろろ)
2007-05-16 13:20:20
『研修生制度』のことですね。期間限定の低賃金労働力として、企業が「重宝」しているため、経産省は職域の拡大や期間延長を図っているようです。金が儲ればいいんでしょうか。相手の国に対しても失礼です。

左翼の方は研修生の待遇に非難の声を上げるのに、アジア人財資金制度のような売国には頬被りをする輩が多いようです。しかし、こうして立場の違うわこさんに賛同いただけたのは嬉しいですね。
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>>ニゲロンパさん (ろろ)
2007-05-16 13:47:26
結局今の財界や役人の連中は、自国(民)をダメで馬鹿だと思っていて、アジアの人々は素晴らしいという外国コンプレックスの塊なんでしょうね。根底にあるのはどうせアメリカコンプレックスでしょう。

私が朝鮮人を立派だと思うのは、何があってもまず同胞を優先することです。冗談抜きに日本人はこの点を彼らに見習うべきです。別に優秀だと誇示する必要はありませんが。

おっしゃる通りこんな政策は必要ありません。フルブライト奨学金は学位だけしか与えませんが、経産省の馬鹿プランは日本人の就職口までくれてやるものです。それでも競争すればいいじゃないかとか言う人間と、私は分かり合いたいとは思いません。プロスポーツじゃあるまいし。
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堕落した日本の経営者 (のらくろ)
2007-05-16 22:00:26
>今、大企業が人材のグローバル化などと言っているのと同じです。日本で儲けるのは面倒だから、もっと効率よく儲けられるアジア大陸に進出しようということです。

全く情けないとしか言えませんね。「水道哲学」の松下幸之助、マン島オートバイレース、F1に果敢に挑んで優勝したかと思えば、ビッグ3が「こんな規制でクルマが作れるか!」と撤回させようとしたマスキー法を世界で最初にクリアするなど数々のエポックメーキングを行い、「自動車の歴史」という映画(ダイムラーベンツかBMWが何かの機会にプレゼンしたらしい)で唯一登場する日本人となった本田宗一郎。こういったわが国の工業会に燦然と輝くスターの後を継いだにしては、あまりにやることが姑息で小さい現代の日本の経営者たち。ただ単に人件費が安いという理由だけで、特定アジアの巣窟である大陸に出向く、あるいは大陸の意向に諂うとは。

このような人々はやはり敗戦をきっちり受け止めていたから自分たちが何をすべきかわかっていたのでしょう。若き日の奥田氏や張氏をも叱りつけたというトヨタの大野耐一氏(故人)の口癖は「俺の言うとおりやるでいかん。なぜ言われたとおりやる!?」ですからね。「お前たち現場の職長、係長はたまにしか現場に来ない俺よりもはるかによく現場の長短を知っているはず。俺の言うことを咀嚼したうえで、俺の言ったこと以上に現場の不備を改善して、やっと職長、係長の職責を果たしたといえるのだ」という意味らしいです。ここまで正確に真意を読み取れないにしても、最初の言葉にいささかでもピンと来るのが日本人、大陸、半島人は言うに及ばず、アメリカ人の工場現場のチームリーダーも理解できないでしょう。だからクライスラーはあんなことになってしまったというのに。

もちろん幸之助氏の「水道哲学」は今は十分満たされました。また本田氏の「誰もが簡単に扱える手軽な移動手段」も日本国内なら割と簡単に入手できます。では、日本と日本人が目標とすることはもうないのか。そんなことはありません。ろろさんがここ数回エントリーしておられる、「今の日本のインフラを、もっとエネルギー効率よく、もっと有害排気、排水を少なくし、カーボンニュートラルへ持っていく」といった大目標があります。これをきっちり追い込んでいけば、日本がその方面でのトップランナーになるのは簡単です。そうしてこそ今は鬼籍に入られた先人の意思を引き継ぐということと思います。私は消費者の立場ですが、そうしたエコロジー、エコノミーなものを常々ウォッチして、収入と支出のバランスが許す範囲で新規導入あるいは早期更新をしているところです。

ところで

>私が朝鮮人を立派だと思うのは、何があってもまず同胞を優先することです。冗談抜きに日本人はこの点を彼らに見習うべきです。

というのはどうも……

http://fetia.blog34.fc2.com/

こういったブログはもちろんですが、金文学氏の「○○に告ぐ!」シリーズなどを見ても「何があってもまず同胞を優先する」にはほど遠い民族だと認識せざるを得ません。

呉善花女史も、処女作「スカートの風」の頃には日韓の誤解をなんとか解こうと懸命に取り組んでおられたのに、それから十数年を経て完全にさじを投げ、日本に帰化してしまわれたくらいです。彼女の一族は済州島に生活しているらしいですが、今度の「親日派断罪法?」でいかなる処分をされているのか、ご本人ならずとも気になるところです。



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>>のらくろさん (ろろ)
2007-05-16 23:43:55
>ただ単に人件費が安いという理由だけで、
>特定アジアの巣窟である大陸に出向く、
>あるいは大陸の意向に諂うとは。

  「満蒙は日本の生命線」の頃から何も変わっていませんね。平和な時代が続くと、頭にウジのわいた連中が上に立つようになるんでしょう。あの頃も、日清戦争以降勝ちっ放しでした。負けた悔しさを知らない個人・組織は合目的性を失い、茶坊主・ゴマスリ・派閥抗争に長けた人間が上に上がるようになっていきます。
  三方が原の戦いの後、苦虫をかみつぶした自画像を描かせた徳川家康に敵う戦後の指導者など結局だれもいなかったということです。ただ一人、昭和天皇以外にはね。
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私立理系の学費は高い・・・ (黄昏)
2007-05-17 18:32:17
初書き込みです。

うちは兄弟二人で大学に通っていますが一人一年で120万。二人で240万飛んで行きます。父親が「もうお金が無い・・・」と言っていたのが心に残っています。

うちの場合は成績があまりよくないから奨学金を貰うのは無理にしても外国人を優遇するのはごめんですよ。
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>黄昏さん (ろろ)
2007-05-17 23:29:54
>うちは兄弟二人で大学に通っていますが
>一人一年で120万。
>二人で240万飛んで行きます。

  痛いですよね。私も、4年の7月に中退したにも関わらず、いまだに奨学金を返し続けているので、そういう辛さは頭でなく身体でわかっているつもりです。
  お父さんも、本当はお子さんの前で言いたくないことなのでしょうが、辛さに堪えかねたのかもしれませんね。どうぞ、そのお気持ちを感じて(こうやって書き込まれているのだから何かお感じなのでしょうね)、勉学に励んでいただければと切に願います。

>外国人を優遇するのはごめんですよ。

  本当ですね。こんな真似を国民の見えないところでコソコソやっている(のをやめさせない・知らない)人間が、「愛国心」だの「日本への誇り」などと口にすると思うと反吐が出ます。そういう点ではおまえらよりは遙かにましだわ、とね。
  国を愛する態度を要求するなら、国の側がもっと国民を愛してほしいですね。
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人を育てる (kiitos)
2007-05-19 02:10:19
自分の部下や子供、あるいは孫たちの世代を育てるのが先でしょう。そこに生きたカネをつぎ込むのが先であり、「少子化の時代」とはいっても、そうやって心と労力をかけて育てていくべき子供たちは、まだ日本にたくさんいるのです。
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