日々是勉強

教育、国際関係、我々の社会生活・・・少し上から眺めてみよう。

新学期に行くならこんな塾(その1)

2005年03月31日 23時46分26秒 | 塾・仕事関係
私はただいま春期講習の真っただ中です。
これから子供を塾に入れようとお考えの御父母の方や、
塾で勉強しようかなと思っている生徒のみなさんもたくさん
いらっしゃると思います。そこで、今日はこの4月から
塾を選ぶときのポイントを、私なりにいくつか取り上げて
みたいと思います。



まず、「合格実績」というものを過信するのは危険です。

私の塾は特定の学校を目指すことを謳い文句にしているわけ
ではないのですが、塾の中には国立や早稲田・慶應系列の学校に
合格した人数が多いことや、それらの学校に特化した教材を
用意していることを売りにしているところもあります。
しかし、そういった学校の「合格実績」というのは、
ある程度出来る子を強力に誘導した結果ということが多いのが
実情です。その学校に行きたい生徒が多く集まっている結果だから
いいのでは?と思うかも知れませんが、「強力誘導」の結果ですから
合格率はかなり低い可能性があります。
(業界では、上のような受験のさせ方を「無駄弾を撃つ」などといいます)

それに、どの学校でも出題する科目やその範囲は共通するところが
多いのですから、「特定の学校に強い教材」というのは、単に形式
を真似ているだけという可能性が高いです。それに、出題者が例年と
傾向を変えてきた場合、どうやって対処するのでしょうね?
「○○中学に強い」というのは、要するに、
「うちは○○中学に向けて強引に誘導しますよ」という姿勢の
現れにすぎないのです。

合格実績そのものよりも、子供とどのように接していくかを具体的に
話してくれる塾の方が信用できると思います。



また、「広告に出ていることは当てにならない」と思っていただいた
方がいいでしょう。
塾のウェブサイトや折込広告を見ると、保護者の方を
くすぐるような文句がいろいろと並んでいます。
「納得が行くまでつきっきりで指導」というような抽象的な
ものから、「休んだ日の分もきちんとフォロー」というものや
はては「成績アップ保証制度」などというものまで謳い上げて
いる塾さえあります。

しかし、実際に塾の内部で働いている人間として、上に挙げた
ようなことは不可能だと言わざるを得ません。
「つきっきり指導」をするのであれば、個別指導に行くべきです。
塾はある程度の人数を集めて一度に教えることに存在意義がある
わけですし、それでこそ経営が成り立つわけです。
本当につきっきりで指導をしている塾は、おそらく、何らかの
「うしろめたさ」を抱えている可能性が高いです。
具体的に言えば、授業の質がかなり低いので、それを誤魔化すために
個別の指導をしているとか、生徒にわかるまで指導するために
極端に遅い時間まで残しているとかいったことです。
親御さんとしては「熱心に教えてくれて嬉しい」となってしまう
心理はよくわかります。
しかし、個別の指導を塾が熱心にやるというのは、ラーメン屋が
デザートを売りにしているようなものです。みなさんは、
「うちはラーメンはおいしくないよ。だけど・・・」などと言う
ラーメン屋に足を運びますかね?

休んだ日の分も「きちんと」フォローしていたら、個別でやったり
することが多い以上、休んだ方が生徒にとって得だという
おかしな事態になってしまいます。
生徒側にしても、授業がある以上は出席すべきであり、欠席フォロー
などを売りにするのは間違っているのです。

「成績保証」というのも、中身は相当怪しいですね。
成績が上がらない場合は無料で補講をやる塾もあるようですが、
正直なところ、本末転倒だと言わざるを得ません。
塾で定期的にテストをするのは、成績が上がったことをプラス材料に
するとともに、試験に出た範囲で理解不足や抜けがあるかどうかを確認
するためのものです。(その確認も、わざわざ無料補講を設ける必要は
ありません)。偏差値を上げることが主たる目的ではありません。
御父母の方の心理につけ込んだやり方と言えますが、上のような
補講にしても、講師側にとって過重勤務になっている可能性があります。
そういった塾は講師の定着率が悪く、指導の質が低いことが往々にして
あります。

広告よりも、(これは次回に述べることと重なりますが)実際に
教室を見学に行かれて、責任者等に話をきいていただくのがベストでしょう。



次回は、塾を見学するときによい塾かそうでないかを見抜くコツを
お教えします。


楽しい叱り方

2005年03月27日 01時02分37秒 | 子供の教育
一昨年私と一緒に仕事をしていた人が、今度の2月で
この仕事をやめることになりました。
その彼と、退職の直前、退職祝だと勝手に名目を付けて
酒を飲んでいたときのことです。
「叱る」ことについて話題が及んだとき、彼が、こんなことを
言いました。

「こんなこと言ったら悪いかな、とか思って叱ると
 だめですねー。やるときは思い切って行かないと」

私は、この言葉が彼の口から出てきたとき、本当に嬉しかったです。
この業界では私が先輩なので、少々偉そうなことを言いますが、
彼は教える立場の人間にとってとても大切なものをつかんだのだと
私は思ったのです。

100%完璧な人間はいません。大人と子供とでは、程度の差こそ
あれ、どちらも欠けたところはたくさんある人間であることは
間違いないと私は思います。
しかし、それでも、これだけは許せない、と思ったことは譲っては
いけない。そういう思いが形になるのが、叱るという行為です。
だから、私は「叱る」ことが嫌いではありません。
むしろ、好きです(笑)。

もっとも、自分がそうなったのもここ1,2年だと思います。
私は、小学生だろうと中学生だろうと怒鳴るときは怒鳴りますし、
かなりきつい言葉をぶつけることもあります。
それでも、父母からクレームがついたことは一度もありません。
それは、おそらく、以下のような原則を守っているからだと思います。

まず、基本は、叱るとき「私の言っていることは100%正しい」と
自分に活を入れることです。
迷いがあると、子供に悟られます。子供は、理屈を追いかけて正しいか
正しくないかを判断する力はあまりありませんが、足元を見るのは
かなり上手です。
そのためには、自分で自分に正当であると胸を張れないような理由で
子供を叱るのは難しいでしょう。その場合は、自分に向けても
説明できるようにして臨んでください。

それに、叱りっぱなし、怒りっぱなしにしないのも大切です。
怒ったらすぐ切り替えるのです。叱ると心拍数が上がったり、
やっている方も楽ではありませんが、顔を普通にしたり、普段と同じ
口調に戻したりということはできます。完全に戻ることではなく、
戻ろうとしているという姿勢を、相手や周りの子供に見せるつもりで
やるのがコツです。

次に、叱るときは、「人」ではなくて、「行い」を叱ってください。
こんなひどい事をしている→悪い奴だ、と結びつけるのはとても簡単
ですよね。でも、それはやめてください。
「人」を変えるということは、死んで生まれ変われということです。
みなさんも、「本当におまえってダメな奴だな」と言われたら
いい気持ちがするはずはないですよね。

また、叱るときは、それが「なぜいけないのか」を必ず説明する
ことです。
大人から見れば当たり前のことは、子供にとってはそうではないことが
ほとんどである、と、私はこの仕事を始めて発見しました。
自分の今していることが、他の場所に行ったときにこんなに損な
ことなんだと、わからせることが大切です。

ちなみに、私はうるさい生徒を叩きのめしたり、よそ見ばかりしている
生徒をつるし上げるときに、他の生徒に、
「あなたが会社の社長だったら、朝礼の時社長の話をさえぎったり、
 窓の外ばかり見ている社員を雇いたいと思うか?」
と、よくきいてみます。もちろん、誰も雇いたいわけがありません。
こうすると、大抵子供は自分のやっていることの意味がわかります。
(中学生になるともう少し違った言い方をしないといけませんが)
実は、この言葉は、私が子供の時だったら言ってほしかっただろうな
という言葉です。やはり、ここでも「自分だったらこう言ってほしい」
というのは大切だと思います。

そして、一番大切なことは、一度で言うことを聞くはずはないと
大人が腹を括ることです。
「またやってる!どうして○○ちゃんはそうなの」という発言は、
はっきり言って全く意味がありません。子供はまたやってしまった
というばつの悪い思いは(こちらが一度ちゃんと叱ったなら)
必ず持っています。それを、顔に出すか出さないかは別ですよ。
2回で自覚したら奇跡です。3回でも少ないほうでしょう。
とりあえず10回言ってみよう、というのでいいと思います。
根気というより、開き直りが大切なのです。

でもどうやって叱ったらいいかわからない、という親御さんも
いらっしゃるかもしれませんね。
ぜひお勧めしたいのが、叱る練習です。
鏡の前で、怖い顔を作ってみる練習や、つっかえずに決めゼリフを
言えるか、これは実は即興では難しいです。
腹にたまりかねたものがあるときは、とりあえず2回くらいは
飲み込んでおいて、トイレの中とか風呂の中といった
一人になったときに「こういう風にぶちのめしてやろう」と
練習をしておくといいです。
うまく気持ちを伝えるには、多少の演技は必要ですからね・・・。

最後に、上で話に出てきた彼は、今度教員採用試験を受けたいと
言っていました。入ってきたばかりの頃は、「この人、ホントに
この商売やってけるのかな」と思っていましたが、きっと
教える仕事の良さに気づいたのでしょうね。
自分のことのように嬉しかったのを覚えています。

ただいま講習中ですが、出来る限りがんばって更新いたします。
それでは、みなさんなさい。

「勉強なんて嫌いだー」

2005年03月24日 23時41分51秒 | 子供の教育
タイトルのような言葉を聞いて、保護者の方や塾講師の皆さんは
どういう反応をしますかね?

昨日、授業中にふっとこの言葉をもらした生徒(中3女子)が
いたのです。
こういう言葉にどう言って返すか、というのは、
結構先生の腕の見せ所かもしれませんね。

私は、その子の言葉を受けて、クラス全体にこんな風に言いました。

「そりゃそうだ。好きだったらみんながみんなやっちゃうじゃ
 ないか。ほとんどの人が嫌いだから、やった人間が評価されるんじゃ
 ないの?」

私は何回かこの返しを使ってきましたが、これで納得しない子は
ほとんどいませんでした。
今回も、なるほど、という顔を(言った張本人も)していました。
お父さんお母さんがたも、困ったときは開き直って、
上の言葉を自分流にアレンジして使ってみてください (^o^)

ここで私が口ごもったり、「将来のためだから」などと言っても、
おそらくしらけられておしまいだったと思います。
そうならなかったのは、おそらくそれが私が今まで生きてきた中で
納得することが出来た数少ない言葉だったからでしょう。

知識や理解を授けるときもそうですが、私はいつも心がけていることが
あります。それは、

「自分が同じ立場にいた時にかけてほしかった言葉を口にしよう」

ということです。
子供は変わったなーという大人の方も多いですね。私もそう思います。
しかし、変わらない部分というのも実は多いのです。
なんで勉強するかわからない、勉強が嫌いだ、というのは、誰でも
通る道だと思います。
私は、実は中学時代ほとんど受験のための勉強をしませんでした。
しかし、自分が塾に通っていて、こんなことを言ってくれたら
もしかしたら難しい学校にチャレンジできたかも知れない・・・
という思いは常に抱えています。

「勉強なんて嫌いだ」という反応、教える立場の人間から見たら
嬉しいことじゃないですか。彼、彼女なりに勉強というものについて
なにか価値判断を下しているんですから。それなのに、
「そんなこといいから勉強を(以下略)」などと言うのは、
もったいないと思います。

子供を叱ったりなだめすかしたいときは、
自分が子供だったときこんなことを言ってほしかった、という
ことを考えながらやるときっとうまく行きますよ!!

初めまして

2005年03月24日 00時25分07秒 | その他
みなさん、こんにちわ。塾講師をしております「ろろ」と言います。
この業界にアルバイトとして入って以来、今年で11年目になります。
私が塾で働き始めた1995年というと、
ちょうど世間では地下鉄サリン事件や阪神大震災といった大事件があり、
かたや野球のイチロー選手が1シーズン200安打を記録してスターの座に
駆け上がった、そんな年でした。
当時と今とでは、教育の世界を取り巻く状況は大きく変化しています。
それは、とりもなおさず社会のあり方が大きく変貌を遂げたからです。
仕事としての塾業界も、その変化に対応すべく、過渡期にあります。

しかし、そんな時代にあっても、塾に求められる本質は変わっていません。
それは、「教育」という側面です。
塾なんて学校に受かるために行くんじゃないの?とお思いの方も多いと思います。
私も、そのような目的は否定しませんし、むしろ受からせることは
楽しみでもあります。
しかし、まさにその目的のために、教育という回り道をしなければならないことも
これまた事実なのです。
このブログで、私の経験から得た教育についての考え、子供と接する際の
心がけなどをみなさんに知っていただき、少しでも人生にプラスになるものを
得て頂けたら・・・と思います。

それと同時に、受験教育の担い手である塾講師という仕事についても、
いろいろ書いてゆきたいと思います。
おそらく、塾講師でない人たち(特に、サラリーマン家庭の御父母の方々)にとって、
塾講師というのは正体不明の連中・・・という風に映るかも知れません。
もちろん勤め先や同僚について詳細なことを書くことはできませんんが、我々が
日々何を考え、何を目指しているのか、誤解なきよう知っていただけたら幸いです。

それでは、みなさん、よろしくお願いいたします。